第13回 佐々木 佑(ささき ゆう)さん
第13回 佐々木 佑(ささき ゆう)さん
コロンビア大学Teachers College
インターン先:UNDP・日本WID基金
コロンビア大学Teachers College、International Educational Developmentプログラムにて教育セクターの開発援助を勉強している佐々木佑と申します。 4月末から8月末までの期間、UNDP・日本WID基金(UNDP・JWID基金)というところでインターンをしているので、そのご報告をしたいと思います。UNDP・日本WID基金というのは、NYのUNDP本部の中にあり、1995年に北京行動綱領のフォローアップの支援メカニズムとして、UNDPと日本政府が共同で設立しました。UNDP開発政策局・ジェンダーユニット内にあり、開発援助でのジェンダー主流化を促進するようなプロジェクトに対し出資をしています。
インターンシップの応募から獲得まで
私は、大学卒業後、一般企業(広報代理店)で広報の仕事に携わった後、国際NGOのオックスファム・ジャパンで1年ほど働きました。オックスファムの他にも、大学時代にジョイセフという家族計画や人口問題に取り組んでいる日本のNGOでインターンシップをした事があったので、大学院の夏休みには、NGO以外のドナー機関でインターンシップをしてみたいと希望していました。
日本WID基金でのインターン募集を知ったのは4月に入った頃だったと思います。同じ授業を履修していた亀井温子さんから、「ニューヨークのUNDPで日本語と英語ができるインターンシップを募集している」との話をいただき、早速応募しました。特にこのインターンシップに応募した理由は、大学院で教育セクターの勉強をしていて、ジェンダーは避けて通れない問題だと思ったことと、UNDPと日本政府のパートナーシップによる基金で働くことでバイとマルチ両方の援助を経験できるのではないかと思ったからです。
募集要項には、発展途上国での実務経験がある人が望ましいと書いてありましたが、私は企業での実務経験はあるもののフィールド経験はありません。さらに、ジェンダーを専門に学んでいるわけでもありません。では、なぜ採用されたのかというと、一つには、大学院で経済の授業(Resource Allocation in Education)や統計学など実用的な授業をとっていたからです。今回のインターンシップの主な仕事が「ジェンダーに配慮した予算」に関するシンポジウムの準備にあるので、Resource Allocationの知識が役に立つのではないか、また私にとっても、今回のインターンシップで学ぶものが大きいのではないかと考えてくださったようです。
さらに、インターンシップのTORに合わせたレジュメを送ったのも採用された一因でした。当たり前かもしれませんが、どの機関にも一律に同じレジュメを送るのではなく、応募する仕事に合わせて自身のスキルや経験の見せ方を少しずつ変えるという手間をかけることの大切さを改めて感じました。
インターンシップの内容
主な仕事は2つ。一つは、7月31日に東京UNハウスで開かれる、「ミレニアム開発目標(MDGs)達成のための戦略:ジェンダーの視点を取り入れたマクロ経済と予算のあり方」というシンポジウムとワークショップの準備です。日本の内閣府・外務省とUNDPが共催し、「ジェンダーに配慮した予算」についてマクロ経済学者のダイアン・エルソンや開発実務者が理論や経験をもとに議論をおこなうものです。また、アジア・アフリカ・ヨーロッパ/CIS諸国の3つの地域から1人ずつ代表者が来日し、それぞれの国での取り組みを発表します。
私の仕事は、GSB(ジェンダーに配慮した予算)に関するリサーチと、各国のGSBへの取り組みをまとめることから始まりました。シンポジウムに招へいする地域の代表者が決定した後は、それぞれの国と連絡をとって発表のアウトラインを集めたり、ビザ取得に必要な書類を日本語で作成して各国の事務所に送ったりしています。開催日時が近づくにつれて忙しくなっていますが、セネガル・フィリピン・グルジア・東京と、色々なところの人達と連絡を取り合うのは楽しく、国連の規模の大きさを感じることが出来ます。7月31日のシンポジウム開催のときは、私も東京に行きます。東京事務所で働く機会もあるので、NYで働いているときとはまた違った視点で国連の仕事が見られるのではないかと思っております。
主な仕事の2つ目は、日本WID基金のウェブページのリニューアルです。英語と日本語の両方で行っており、デザインからコンテンツの中身作成、実際にリニューアルされるまでのコーディネーションまでをしています。ウェブサイトのコンテンツを書くことによって、基金が支援してきた過去から現在までのプロジェクトを知ることが出来ましたし、また理念や戦略などもより詳しく理解することが出来ました。特に力を入れたページの一つが、英語サイトに登場する予定のツール集です。このツール集は、日本WID基金が今までにプロジェクト支援を通して蓄積してきた知識を広めることが目的です。このページを作成するために、今までのプロジェクト・ドキュメントをいくつも読んで、その中からシェアできそうなツール(例えば、ウガンダで作られたGSBマニュアルや、中国の現地経済学者によって作成されたWTO加盟が男女それぞれにどう影響するのかを分析したペーパー)を洗い出し、それらを集めることをしました。最終的には30を超えるツールが集まったので、これらすべてをウェブサイト上でシェアできるようにすれば、なかなか充実したツール集になるのではないかと自負しています。大学卒業後、広報の仕事をしていたこともあって、こうした広報業務に携われることは嬉しいことです。完成した後は眼で見えるアウトプットを一つ得ることが出来るので楽しみです。
最後に
これから国連機関でインターンシップを考えている方へ。国連フォーラムなどの場を積極的に活用してネットワークを大事にすることが、可能性を広げるために非常に重要だと思います。さらに、多くの人と会って話をすることは、ネットワークのためだけではなく、自分の将来を考える上で驚くほど参考になります。また、希望のインターンシップがあったときは、募集要項をまずじっくり読み、どういった人材が求められているのかを良く把握し、それに合わせて自分の経験等を表現することも大事だと思います。そのためには自分がなにをしたいのかと自分のスキルや経験を整理することが必要になってくるでしょう。
とりとめのない体験記になりましたが、少しでも参考になれば幸いです。
リニューアルされたUNDP/日本WID基金の日本語ページ
http://www.undp.or.jp/undpandjapan/widfund/
2006年8月16日掲載