第17回 林 英恵(はやし はなえ)さん
第17回 林 英恵(はやし はなえ)さん
ボストン大学教育大学院教育工学科卒業(2006年)
Master of Education in Educational Media and Technology
インターン先:UNICEFインド事務所
現在、プログラムコミュニケーションという部署で、HIV/AIDSに関する活動を行っています。2回に渡って、インターンまでの道のり、活動内容、また、このインターンを通して学んだことなどをお伝えします。この記録が、今後インターンを目指す方、国際機関で働きたいという志を同じくする方に、何らかの形でお役に立てれば光栄です。
■1■ インターン獲得までの経緯
日本ユニセフ協会が主催しているインターン制度に応募し、書類審査とジュネーブでの面接を経て、合格することができました。この経緯で自分が重点をおいたことは、「なぜ(他の組織ではなく)UNICEFでのインターンを希望するか」ということです。私の場合、HIV/AIDSを含めた公衆衛生の分野において、メディアを使って行動変容を促しているUNICEFのいくつかのプロジェクト(アフリカで行われているSara Communication Initiativeや南アジアで行われているMeena Project)の活動にとても興味を持っていたので、その内容を詳しく調べました。その上で、こういったプロジェクトに対して、自分がメディアと教育に関する経歴を生かしていかに貢献できるかということ、そして将来オフィサーとして働くために今後何が必要かを学びたいと真摯に考えていることの二つを伝えることを目標に、面接に望みました。
合格後は、日本ユニセフ協会の方と、希望時期や派遣希望国について話し合いを持ちました。私は南アジアで、HIV/AIDS予防教育とメディアに関するプロジェクトに関わることが第一希望でした。インドと言う世界最大のHIV感染者を抱える国で、インターンをさせて頂けることになり、本当に感謝しています。
■2■ 活動内容
主に、以下にあげる二つの活動を行っています。
①HIV/AIDSのためのIEC(Information, Education and Communication)教材のリサーチ
UNICEFのインド事務所のプログラムコミュニケーションセクションでは、BCC(Behavior Change Communication)プロジェクトの対象として、4つの行動変容のテーマを決めています。母乳、手洗いの励行、女子の初等教育、そして、青少年へのHIV/AIDS予防です。その中で、HIV/AIDSに関しては、HIV/AIDSのセクションのオフィサーと共に、教材開発・メディアプロモーションなどを請け負っています。
この中で、私は、ユニセフがプロジェクトで使用している、もしくはユニセフが開発したIEC教材のリサーチを担当しています。インドにある、9つのフィールド事務所のHIV/AIDSオフィサーから、各事務所から使用している教材の収集を行っています。また、彼らとのインタビューを通して、インド全体のHIV/AIDSに関する教材の位置関係をつかみ、来年以降の教材開発において、どの分野に焦点をあてる必要があるかを明らかにすることを目標にしています。
一口に行動変容と言っても、その中には、「HIV/AIDSに関する情報を伝えて人々に問題を意識させる」といった人々の関心をあげるためのものから「継続的なコンドームの使用を促す」というような新しい行動を確実に実行してもらうというものまで、いくつかのカテゴリーが存在します。ユニセフのインド事務所が使用している行動変容のモデルに沿って、現状を分析し、来年以降の提言のための研究を行っています。
②2007年初頭に放映されるHIV/AIDS予防のためのコマーシャル作りにおけるサポート
現在、HIV/AIDSのセクションと共同で、プログラムコミュニケーションでは、来年初頭に放映される3種類のコマーシャルを作成しています。
その中で、より良いものを作るために、放映されるコマーシャルの原型を実際の対象になる人(青少年)に見せて事前調査を行ったり、政府との会議で発表するための資料(HIV/AIDS問題において、テレビにおけるキャンペーンがどの程度効果をあげるものなのかを国別に調査したもの)を作成したりしています。
今回のコマーシャルの対象は、15歳から19歳の、性的に行動が活発になる青少年(男女)です。彼らのHIV/AIDSに関する危機認識レベルをあげることを目標としています。具体的には、「(パートナーの数に関わらず)性交渉の際には継続的にコンドームを使用すること」ということを、メインのメッセージとしてコマーシャルを製作しています。
UNICEFなどの国際機関の活動により、性に関する話に対して少しずつオープンになってきているインドですが、実際は「女性が一人でコンドームを買いに行くことは躊躇する」と現地の人が言うように、一方でまだ性の話がタブーであるという現状があるのも事実です。
そのような状況の中で、UNICEFの活動を政府にも理解してもらうため、今回のコマーシャル作りがHIV/AIDSの観点においてどのくらいプラスの影響を与えるものかというのを説明する必要があります。実際のコマーシャルの製作と同時進行で、このような政策的な合意に向けた話し合いに向けての調査を担当しています。
【フィールド経験】
上記のリサーチ、プロジェクトのサポートのために、16週間の間に4回(最終的に5回になる可能性もあります)のフィールドビジットを体験させてもらいました。
■3■ インターン中の感想
国際機関の現地事務所でのインターンシップは初めての経験でした。プログラムコミュニケーションの仕事の内容は、セクションにまたがって仕事をするので(今回の私の場合だとHIV/AIDSとプログラムコミュニケーションの二つのセクション)、両者がどのような位置関係で一つのメディアキャンペーンなどを行っているのかを理解するのにとても勉強になっています。プログラムコミュニケーションの仕事は、各事務所の方針によって仕事の仕方が異なるようですが、インド事務所では、コミュニケーション(広報)の仕事とプログラムコミュニケーションの住み分けがはっきりとなされており、各オフィサー及びコンサルタントがプログラムコミュニケーションを"専門性"として誇りをもって仕事をしているのが印象的です。インターン終了後、私もこの専門性を磨き、一日も早く、今度はオフィサーとしてプロジェクトを行うことを願うばかりです。
※ インターン中の活動記録がユニセフインド事務所のHPに掲載されています。http://www.unicef.org/india/hiv_aids_2533.htm
2007年1月3日掲載