第35回 仲上 睦美(なかがみ むつみ)さん
第35回 仲上 睦美(なかがみ むつみ)さん
ニューヨーク大学大学院 ロバートF.ワグナー校(米国) 国際行政専攻
インターン先:国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部 アフリカ局(RBA)アフリカ開発会議(TICAD)部
■はじめに■
2009年5月初旬から約2ヶ月間、UNDP、TICAD/RBAでインターンをさせて頂きました。私の経験が、今後、国連でインターンを希望される方のご参考に少しでもなれば幸いです。
■インターン応募の経緯・アドバイス■
国連フォーラム・メーリングリストの活用
大学院卒業後の就職先を決めるにあたり、国連でインターンをして、働く環境や文化などが自分に合うかどうか確かめたい、という気持ちがありました。今回のインターンシップは、以前から登録していた国連フォーラムのメーリングリストに投稿されたインターンシップ募集の告知を見て応募しました。UNDP TICAD/RBAでのインターンシップは、2009年6月中旬にウガンダで開催された第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(Africa-Asia Business Forum V: AABF V)の準備・実行に関する業務でした。アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF)はTICADIVのフォローアップの一環として“経済成長を通じた貧困削減”を目的として実施されたイニシアティブなのですが、以前から“経済成長を通じた貧困削減”の長所、限界、挑戦などを様々な角度から深く知る事に興味がありましたので応募を決めました。国連フォーラムのメーリングリストは、就職情報だけでなくインターンシップ募集の投稿もあるので、登録しておく事をお勧めいたします。
国連内部の情報入手
「国連でインターン」シリーズ第31回の記事を書かれた近藤篤志さん同様、私も知人の紹介等でインターンを獲得したわけではありません。しかし、近藤さんも書いていらっしゃったように、国連ではどなたかの紹介といったコネクションの活用は、インターン採用に関して大変重要になってくるようです。というのも、国連内部に知人がいる事によって、どの部署がどのようなバックグランドをもったインターンを探しているか、又自分が希望している部署にインターンの空席はあるのか等の情報を入手しやすく、インターン応募の際の提出資料や面接で、採用側が求めているインターンの資質にあった自分の資質や経験事例を示す事ができ、採用につながる可能性が高くなるからです。ネットワークに重きを置いた就職活動は必要ないと思いますが、自分の希望する部署でどのようなインターンがいたか、どのような資質をインターンに求めているか等を、相手の負担にならない程度に、内部の人、又はインターンを経験した人に聞いておく事も必要だと思います。 実際、私はUNDPでインターンが決まる前に二度(夏季と春季)国連事務局でのインターンシップにオンラインで応募し、二度ともインターンシップ・ロスターにショートリストされましたが、希望先の部署にインターンの需要がなく、結局インターンシップ獲得につながる事はありませんでした。なかなかうまくいかない現状にイライラしていましたが、国連事務局でインターン中のクラスメートと話をしたとき、採用側は極めて具体的で特定のバックグラウンドや資質をインターンに求めている場合が多い事、またいくら良い経験と資質を持っていても希望部署に需要が無ければポジションを得られない場合もあるという事を聞きました。(*UNDPのインターンの場合、どのようなインターンを求めているかといった詳細が応募要項に記載されている場合が多いのですが、事務局での通常のインターンシップは、どの部署がどういったインターンを何名探しているか等の詳細はオンライン上では分かりません。)
■インターンシップの内容■
今回インターンシップをさせて頂いた、UNDPアフリカ局TICAD(Tokyo International Conference on African Development:アフリカ開発会議)部は、1993年以降日本政府が中心となり、国連開発計画,国連アフリカ担当事務総長特別顧問室、世界銀行と共催で5年毎に共同実施しているアフリカ開発をテーマにした首脳級の政策フォーラムの調整、実施ならびに同フォローアップに関する事業を総括する部署です。TICAD/RBAが主担となった、アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF)は、TICADプロセスの一環として、主に日本政府がUNDPへの拠出を通じて実施しているアフリカ開発支援の一つです。今回のインターン主要業務はAABFの関連実務中心で、ウガンダ・カンパラにおいて2009年6月に開催された第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム(AABF V)のロジスティクサポートや、ローカルコンサルタントと協力し合い、会議がスムーズに運ぶよう、当日出席者のロジスティクなどを担当させて頂きました。又、AABFに技術的な協力を行ったUNIDO(国連工業開発機関)の担当者と連携し、TICADのオンラインマーケットサイトであるTICAD Exchangeのコンテンツの調整、ビジネスマッチング検討の補佐、オンライン公開資料の収集・照合、会場配布資料等関連資料・出版物の作成なども共同で担当しました。
第5回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムはアフリカ及びアジアの35カ国の政府、民間企業、市民組織、メディア、国際機関より約350人が参加しました。持続可能な観光開発におけるアフリカ・アジア間での連携強化につながる投資活性化、技術移転の促進、アジアや日本の観光客の積極的誘致を図る戦略の方向性等について官民の政策対話が行われ、TICADIV 横浜行動計画をさらに具体化するための政策提言が発表されました。
■インターンシップ経験の感想■
今回のインターンシップを通して、各政府代表者、アフリカ・アジアの民間企業の方々、NGO、外務省、UNIDO、UN-OSSAをはじめとする各機関の方々など、実に多様なセクターの参加者とコミュニケーションをとる事ができ、大変有意義なインターンシップを経験する事ができました。私が携わったのはあくまで国連の仕事の一部であり、全体を見通したわけではないため、国連で働く事に対して100%明確なイメージを持てたとは言いきれません。とはいえ、国連での一業務を担当する事により、国連の文化や環境が自分の求めているものと合うのかについての確認、という本来の目標を達成する事ができました。又、アフリカ開発や経済成長による貧困削減の長所やチャレンジを垣間見る事ができた事も貴重な経験でした。二ヶ月という短い間でしたが、学校では学べなかった事を体験を通じて学ぶ事ができて大変幸運だったと感じています。
南アフリカで開催される2010年のFIFAワールドカップなど、日本をはじめアジア諸国でもアフリカへの注目は日々増しています。アフリカに対する情報や知識の不足により、不安定な政治・経済事情や伝染病の蔓延といった、ネガティブなイメージがいまだに残っている事もありますが、アフリカには美しく広大な自然や素晴らしい伝統文化、現地の人々のホスピタリティーなど、世界に誇れる財産が多くあります。アフリカとアジアのビジネスリンクによる観光開発を軸に、貧困層にやさしい持続可能な開発、貧困削減につながる可能性をより高めるためのフォーラムを開催し、官民パートナーシップを提案した事は大変有意義だったと感じています。今回のフォーラムで、官民共にアフリカとアジアの参加者が集まり、アフリカの多様性のある魅力や観光資源を活かした取り組み例を共有できた事、またメディア報道やアジア諸国代表がこれらの情報を自国に持ち帰って周知した事も、各国での観光産業での持続可能な開発、貧困削減を目指す更なる官民パートナーシップに繋がる大きな収穫だったと言えます。
■今後と将来の展望■
今回のインターンシップを通じて、自分の将来のやりたい事が明確になりました。インターン終了後に戻る大学院では、今年秋の卒業を予定しております。最終学期は比較的時間に余裕ができますので、引き続き就職活動と平行して、将来に繋がる、自分を高める経験ができるインターンシップやボランティア活動をしていこうと考えています。そして卒業後は、フィールドに入り、そのエリアでの援助の需要やどの分野に資金を注入するべきかを十分に把握し、限られた資金で効率よく最大限の開発インパクトを与える事が出来る、企業やNGOなどの民間を巻き込んだ持続可能な貧困削減の団体/プロジェクトに関わるつもりです。
■ これからインターンを希望する方へのメッセージ ■
国連を将来の就職先の一つとして考えている方は多いと思います。ただ漠然と国連を目指すのではなく、国連の内部に入りインターンをする事で、外からは見えなかった事が見えてきて将来のキャリア設定に役に立つと思います。国連の文化、働く環境が自分に合うかどうか、短期間のインターンシップで100%は見えない、と思うかもしれません。しかし自分の方向性をどのようにしようかはおぼろげでも分かってくると思いますので、是非挑戦して頂きたいと思います。また、採用期間はどこも数ヶ月と短いので、インターンを始める前にどのような経験をしたいか目的をはっきりさせる事をお勧めします。加えて、インターン中は柔軟に対応する事が必要だと思います。国連でインターンを希望する方の中には、既に十分な職務経験があり、責任のある業務をしたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、優れた組織やチームであれば、日々の行い・実績をちゃんと評価してくれる方が必ずいますので、どんなタスクでも柔軟受け入れ、また真摯な態度で取り組み、確実にこなしていく事が大切だと思います。
私自身、三度目の応募でやっとインターンを獲得する事ができました。一度や二度採用にならなくても、“三度目で採用された人もいたな、”と私のようなケースを思い出し、あきらめずに応募して、是非国連でのインターンを経験し、将来の方向性を決める過程でその経験を役立てて頂きたいと思います。国連でのインターンは、必ずご自身にとって良い経験になると思います。
■最後に■
今回のインターン受け入れ先の皆様ならびに、多くの方々より的確なアドバイスをして頂き、また、心の温まるサポートをして頂きました。お力添え頂いた全ての皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
ご参考:
- TICAD ウェブサイト: http://www.undp.or.jp/ticad/index.html (日本文) http://www.ticad.net/ (英文)
- AABF ウェブサイト: http://www.ticadexchange.org/index.php?id=75 (英文のみ)
2010年1月5日掲載
担当:高田
ウェブ掲載:柴土