第38回 入江 晴之(いりえ はるゆき)さん
第38回 入江 晴之(いりえ はるゆき)さん
シートンホール大学 外交・国際関係学修士プログラム
インターン先:日本政府国連代表部政務部及び国連政務局アフリカ2課(ニューヨーク)
期間:2009年2月20日 - 7月31日
■インターンシップの応募と獲得まで■
シートンホール大学で外交・国際関係学修士プログラムに所属しておりました、入江晴之と申します。大学院での専門は紛争解決と経済開発で、特にアフリカにおける平和構築に関心があります。
私は昨年(2009年)の2月末から日本政府国連代表部政務部にて3ヶ月間、また、その直後の6月から国連政務局アフリカ2課にて2ヶ月間、インターンシップをさせていただきました。場所は両方ともニューヨークで、最初の3ヶ月間は学業と両立しながらパートタイムで行いました。国連代表部は外務省の機関として日本の国連外交を担当しており、日々他の加盟国との政治、経済などの重要な案件に関する交渉を担っています。私は政務部に所属し、外交官の方々と共に安保理や平和構築委員会などの会合に同席する機会を頂きました。また、国連政務局では国連本部のビルに席を移し、アフリカ2課で北西アフリカ各国の政治情勢を担当しました。こちらは国連加盟国側からとは違った、国連本部職員側からの視点で業務を見ることができました。インターンシップを通じて何よりも良かったことは、これら2つの視点(加盟国側と事務局側)で国連の業務を見ることができたことです。それぞれが国連外交の中で重要な役割を果たしていることを実際にこの目で見ることができたことは、私にとって大きな財産となりました。
国連代表部への応募はウェブサイト上に記載されている必要応募書類を確認し、大学側から推薦状、成績表の取り寄せなどを行い送付しました。また、以前同代表部でインターンシップをしていた先輩が同じ大学にいたので、その方にお願いして個人的に推薦して頂くようにしました。応募から2週間ほどで面接に呼ばれ、その後採用が決まりました。
国連政務局でのインターンにつきましては、1月頃に国連のウェブサイトより応募しました。同時にインターンオフィスの方々と直接コンタクトを取るように心掛け、私の大学が企画していた1日国連ツアーというものを利用し、人事担当者に直接ご挨拶に行きました。その後も御礼のメールを送り、できる限り自分をアピールしたことが功を奏したのか、3月の中ごろに採用の通知を頂くことができました。
インターンシップ獲得については、経験者等の知己を得ることができれば、大いに助けになるものだと思います。もし現時点で知っている方がいなかったとしても、応募書類を何度も添削したり、レジュメを見直したりすることなどができると思います。応募に向けて、多くの人に見てもらい、最高のものを提出するようにしてみて下さい。特に国連本部でのインターンに応募する際は、自分が何をこれまで専門としてやってきて、どのような仕事をしたいのかなどを具体的に書くことが重要だと思います。
■インターンシップの内容■
<国連代表部>
代表部での仕事の内容としましては、主に平和構築委員会、安保理を含む国連での会合のメモ取りや、その後の報告書の作成を担当しました。代表部の重要な仕事の一つは、外務省との連携にあると思いますので、その部分に携われたのは非常に貴重な体験でした。私にとって国際関係理論や外交政策は、教室で学んでいるだけでは実態をなかなか理解し難いものでしたが、この機会を通して外交政策を構築するアクターの方々と知り合うことができ、理解をより深いものに出来たと思います。特に、国際関係は外交官の方々一人ひとりの繋がりから成り立っているものだということを印象深く感じました。
また、インターンシップ中は国際法や国連文書に関連するリサーチや書類の翻訳などにも携わらせていただきました。最初は外務省独特の日本語の表現や、国連の会合中に飛び交う専門用語に戸惑いましたが、多くの上司の方々に助けていただき、文章を書く力を向上できた機会であったと思います。インターンシップの最後に、高須大使のスピーチの英語版作成に携わらせていただいたときは非常に達成感がありました。
インターンシップ中の空いた時間は、代表部内の方々と個人的にお会いし、今後の進路のことなどを中心に様々なアドバイスをいただけるように心がけました。特に外交官・専門調査員の方々や、JICAの出向でいらっしゃっている方々とお話をする中で、自分自身の将来についての方向性がだんだん明確になってきたと思います。また、代表部を通じて国連より発行されるグラウンド・パスは、国連内の多くの会合施設にアクセスでき、興味のある分野における国連の活動を学ぶ最高の機会を与えてくれました。
これらの代表部での経験を通して私が一番感じたことは、国連内における国家主権の重要性でした。当たり前のことかもしれませんが、国連における多国間の外交政策も、加盟国各国の協力なしには成り立ちません。特に世界第2位の分担金を提供している日本からの視点で国連を見たとき、安全保障や経済協力等の問題に関する国家としての政治的な許容範囲というものがどこまでなのか、しっかりと他国、また国連組織に伝えることが重要なのだと学びました。
<政務局アフリカ2課>
代表部でのインターン終了後、国連政務局のアフリカ2課でさらにインターンシップを行い、主にモロッコやギニアビサウなど北西アフリカ諸国に関する業務に多く携わりました。最初は政務局内でよく書かれるカントリーレポートの作成方法を習い、モロッコとチュニジアについてレポートを書きました。このレポートは国の簡単なバックグラウンドと政治状況をまとめるもので、これを書くに当たっては大学院でレポートを書いた経験が活きました。インターン中は西サハラ担当の特使がニューヨーク本部にいらっしゃり、その方と私の上司がアフリカに出張する事前準備資料として、このカントリーレポートを元にバックグラウンドペーパーを作成しました。インターネットや国連文書に載っている情報から書類を書き上げる地道な作業でしたが、あらゆる情報源を使って書類をまとめる良い訓練になったと思います。
また、インターンシップ中にギニアビサウでの大統領選に出馬予定だった候補者が暗殺され、それに対する国連の対応の検討などにも携わりました。国連は、過去にパキスタンや東チモールでの暗殺(未遂)に対し事実確認をするための代表団を派遣するなど、様々な措置をとってきました。このギニアビサウの案件では主にパキスタンのケースをモデルとして、どう国連として介入していくか(もしくは介入すべきなのか)ということを検討する内容のものでした。私も他のケースとの比較や意見をまとめた報告書を上司に提出しましたが、最終的には上司の方々のスピーディーな対応と、国連に関する深い見識に圧倒されっぱなしでした。しかし、インターン生をチームの一員として考え、「君はどう思うの?」と真剣に意見を聞いてくれる上司の態度には非常に感銘を受けました。インターンとはいえ、このような重要な案件にも深く携われることが、国連インターンシッププログラムの魅力であると思います。
その他にも、国連で行われた“West African Coast Initiative”という西アフリカのドラッグと組織的な犯罪に関するコンファレンスの準備や、イギリスの大学院生と国連職員の交換会のサポートなど、様々な行事のロジスティックも担当しました。少々余談かもしれませんが、事務局でのインターンシップは他の世界各国から集ったインターン生と交流する機会も多く用意されており、パーティーを開催したり、各国の代表部を訪問するなど、各種イベントを企画することもできます。これらの活動を通して培った友情は、何事にも変えがたいものだと思います。私自身、日本代表部への訪問を有志と共に企画し、参加者を募ったところ、インターン生40名ほどが参加してくれました。当日は代表部の角大使が懇談のお時間をとってくださり、非常に有意義な語らいの時間とすることができました。
■これからの将来の展望と今後インターンを希望する方へのメッセージ ■
上記の2つのインターンシップを通し、私は今後アフリカの平和構築に関連する仕事をしていきたいという思いをさらに強めました。また、国際社会における日本の役割を考えたときに、海外援助や国際協力にもより深い関心を持つようになり、大学院卒業後はその様な分野を含めた広い分野で就職をしていきたいと思っております。
将来国連関連でインターンを目指す方々には、応募前から是非積極的に様々な経験を積むように心がけ、同時にネットワーキングにも力を入れていってもらいたいと思います。私自身も大学院に入学以来、大学の正式なジャーナル(学術誌)の編集者として経験を積み、書く力を磨きました。また、できるだけ国連フォーラムの会合に参加したり、大学の講義を通じて国連の方から直接話を聞くなど、多くの人と知り合う努力をしました。私にとって遠くに見えたインターン獲得という目標も、絶対に達成すると心に決め、日々具体的な努力を重ねたことで道が開けたように思います。皆さんも目標を明確に持ち、ぜひ挑戦してみて下さい。
2010年7月11日掲載
担当:岩崎
ウェブ掲載:秋山