第52回 江本 佳菜子(えもと かなこ)さん

(国連青少年問題特使のアハメッド・アレンダヴィ氏とインターン生と。
前列右から3番目が筆者)

第52回 江本 佳菜子(えもと かなこ)さん

ルーヴァン・カソリック大学大学院 欧州研究プログラム(ベルギー)修士終了
九州大学大学院法学府 修士修了
インターン先:国連薬物犯罪事務所本部/条約局/組織犯罪・不正取引部 人身取引・移民密入国課
(UNODC Human Trafficking and Migrant Smuggling Section)
インターン期間:2013年12月~2014年5月(6カ月間)

■はじめに■

UNODCは、不正薬物や越境組織犯罪を扱う国際機関です。私がインターンをしたのは、人身取引(人身売買)と密入国に対処する課です。この部署では、UNODC加盟国が国際組織犯罪防止条約、人身取引・移民密入国議定書の内容に沿った国内法を整えるための法整備支援や、被害者・犯罪者に適切な司法的対応がとられるよう各国の関連省庁・司法担当官への研修、リサーチなどを行っています。

■インターン採用決定まで■

出願時は、人身取引を題材に、EU及び国際諸機関の連携の在り方について修士論文を執筆していました。それ以前は日本で国内避難民や難民について勉強していました。そのため、人の移動に関わる国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際移住機関(IOM)、特に人身取引対策で中心的なマンデートを持つUNODCに関心を持ってインターン先を探していました。

関連部署での求人を見かけたことがなかったため、在ウィーン国際機関日本政府代表部に問い合わせたのがインターン実現のきっかけとなりました。代表部の方が様々なアドバイスをくださっただけでなく、私がインターンに関心をもっていることをUNODCの該当部署に伝えてくださいました。また、直接UNODC職員の方とお話ししたいことを相談すると、面談の機会も設けてくださいました。この面談は実質面接のような形になり、3人の職員の方々から勉強してきたこと、関心分野、事務能力、言語能力など色々なこと質問されました。その場で職員の方たちからとても肯定的な反応をいただき、現在募集はしてないがインターン機会創出のために今後動いていくこと、ポストを作り公募するまでにライティングサンプルとしてこれまで書いた英語の論文を提出するよう指示がありました。サンプルとしては日本で書いた国内避難民についての修士論文の英語版1本と、ベルギーで留学中に授業の課題などで書いたEUの人権政策などに関する短編を3本提出しました。その後実際にweb上で希望に沿った求人があり出願したところ、最初は3カ月の契約で採用していただき、最初の契約が終了する頃にさらに3カ月契約を延長していただくことができました。

採用の理由について、面談を担当した職員の一人からは「この分野に関心があることが非常にはっきりしていたため採用しやすかった」とインターン終了時にコメントをいただきました。また、「法学のバックグラウンドがしっかりあると同時に政治・政策も勉強してきていること」、「人身取引そのものだけでなく、移民政策、難民や国際人権法など人身取引に関連する問題や規範についても知識があること」、「UNODCが中心となっている国際フォーラムやグローバルプログラムなど、各種枠組みついての知識とその問題点が理解できていること」などが課の求めているものと一致すると、面談時に職員の方々から評価していただきました。他には、私の場合は既存のポストがなく、実際の公募から採用までにかかる時間がはっきりとしない状況だったこともあり、インターンの開始・終了時期に柔軟に対応できる状態であったこともありがたかったということでした。個人的には代表部の方が適宜的確なアドバイスを下さり、面談実現など色々と調整に動いてくださったことがポスト獲得に重要な機会につながっただけでなく、精神的にも非常に大きな支えとなり、余裕をもって自分をアピールできることにつながったと大変感謝しています。

■インターン中の仕事■

(資料を読み込み把握するスピードが求められるのは大学と変わらないかもしれません。
自分のデスクから見える景色がちょっとした息抜きになっていました。)

私がインターン期間を通してかかわった業務は大きくわけて以下の通りです。

1. 人材紹介会社及びそのリクルート手数料と人身取引の関係、この問題に対する司法的対応の在り方を検証するリサーチプロジェクト

このプロジェクトは私がインターンを始めてから動き出したもので、プロジェクトを立ち上げ、動かしていく過程を学ぶことができました。研究成果を出版物にするプロジェクトだったため、リサーチの手法やどのような内容を盛り込むかという構想の決定、実際のリサーチの着手など、プロジェクトの方向性をひとつずつ定めていく過程を任せてもらうことができました。また、プロジェクトドナー国への進捗報告の仕方や、他機関への協力の求め方、研究に必要な知識をもっている人材や組織を見つけ出す方法など実務に必要なスキルも学ぶことができました。

2. 臓器摘出のための人身取引に関するリサーチプロジェクト

このプロジェクトはインターン開始時には既に出版物のドラフトができあがっていたので、先行研究との整合性のチェックといったドラフト案の校正作業と、このプロジェクトに関する会合準備や専門家とのやり取りのまとめなどが主なタスクでした。

3. 特定の国の現状分析をし、その国に適したプロジェクト内容を提案すること

職員がミッションへ行く前には、その国の人身取引・密入国に関する現状や、これまでその国でUNODCを含む国際機関が行ってきたプロジェクト内容を分析しました。その分析をもとに、問題を解決するためにその国に最適かつ必要と思われるプロジェクトの内容をまとめ、提案することも一つのタスクでした。このタスクによってどの機関がどのようなプロジェクトを過去に行ってきたのか、また、プロジェクト立案の際に注意すべきことなどを学べました。

4. 人身取引に関するEUの動向の報告

私がEUの勉強をしていたため、関連するEUの政策や法の改正、新しい出版物や他機関との連携プロジェクトの動きを報告するようお願いされることもありました。

5. 各国政府との会議で話し合う議題の提案・準備

本部でのインターンであったため、様々な国とのミーティングに参加する機会に恵まれました。その際、その国のかかえる問題や進展などの分析と、UNODCがこれまでその国で行ってきた技術協力や今後の展望などをまとめ、会議で話し合うべき論点を職員にブリーフィングすることも仕事の一つでした。同じ人身取引対策でも、国によって抱える問題が違うことや、政府ごとに話し合いの進め方が違うこと、たとえ同じ内容であっても使う言葉や表現で説得力や与える印象が変わることなど、準備・実際の会議を通して色々なことが学べる非常にやりがいのあるタスクの一つでした。

6. 関連分野のプレスクリッピング

職員が最新の情報にすぐにアクセスできるよう、人身取引と密入国に関する世界中のニュースをピックアップし、要約して毎週職員に届けると同時にデータベースに格納していくこともしていました。これによって、各国の政策の違いや、人身取引の中でもメディアに注目されやすい部分とそうでない部分、職員が仕事をする上で必要としている情報の種類など様々な感覚が身につきました。

(会議からも色々なことを学び、色々な人と出逢いました。)

その他にも、専門家と意見交換し、今後の方針を定める会議(Expert Group Meetings)の運営サポートや、課と協力関係にあるNGOの情報収集やデータ管理、効果的なプロジェクト運営のために鍵となるフィールドオフィスや他機関への協力要請や連絡調整業務、加盟国政府からの質問などの対応も随時行っていました。また、欧州評議会(Council of Europe)や欧州安全保障協力機構(OSCE)などが主催する外部の会議に出席し、その内容を課の職員に伝えることもありました。そうした会議には通常は職員と2人で、時には課の代表として1人で参加していたこともあり、他機関からの参加者と深くかかわることができました。外部の会議やUNODC主催の会議で出逢う他機関の職員とよい関係を保ち続けることも普段のタスク達成のために大切なことでした。たとえば、他機関へいざ協力をお願いする際も、会議で同席した職員との普段からの交流があることによって、スムーズに話を進め仕事をすることができました。

■インターンを通して得たこと・学んだこと■

(同期のUNODCインターンと。インターン前は国連でインターンする人は雲の上の存在でした。実際優秀で努力家ですが、皆仕事を離れればどこにでもいる明るく気さくな学生でした。)

インターンを通して、国際機関で働くことはどういうことかを体験することができ、今後自分にとって具体的にどういったスキルや経験が必要かを実感として得られたことは有意義でした。さらに、国際機関へ出願する際の注意点も学ぶことができました。エントリーレベルで採用されるための進路の選び方や出願書類の書き方はUNODC人事部長から直接面談でアドバイスをいただきました。エントリーレベルに限らず出願書類提出の際に気を付けるべきこと、面接での受け答えの仕方、試験対策などは課長さんやスーパーバイザー、そして若手職員やコンサルタントの人たちなど多くの職員に実例や実体験を交えて教えていただきました。また、こんなふうになりたいと思える方たちと働けただけでなく、国際機関で働くことを目指している同世代の仲間と出逢えたことも、就職やステップアップに必要な情報の交換を含め、その後の大きな力となりました。どれもインターンができたからこそ得られたものだと感謝しています。

(お世話になった人身取引課の職員の方々と)

インターンという身分ではありましたが、日常ではチームの一員として、内容の濃い本質的なタスクを任せていただきました。そのおかげで、国際機関での仕事の仕方の基礎となる部分は学べたような気がしています。これまで「学生」という身分を離れて働いたことはもとより、海外で働いたことももちろんなく、インターン開始前は「毎日働くことができるのか」というとても基本的なことですら不安に思っていました。インターン中も常に「このやり方で大丈夫だろうか?チームに少しは貢献できているのか?」という気持ちがありました。そんな私に対して、直属のスーパーバイザーだけでなく課の職員全員が一丸となって私を見守り、心のこもった指導してくださいました。課の全職員と一緒に働く機会を与えていただけたことで、職員ごとに異なる視点やポリシーを学べたことはとても有益なことでした。何よりも私にとって大きな意味があったのは、私でも大丈夫、私らしくチームに貢献できる方法があるということを課の職員の方々が教えてくださったことです。また、UNODCではゴールに向けてチームとして協力する大切さや、どんなときであっても「人間らしさ」や「思いやる心」を忘れないことの大切さも教えていただきました。インターン先のチームとしての素晴らしさは「国際機関=熾烈な競争社会」と想像していた私にはちょっとした驚きでした。

■インターン終了後■

(色々なことを教えてくれたコンサルタントの1人と。
今は彼女のようにチームに必要とされるコンサルタントになることを目標に頑張っています。)

インターンを終えた後は修士課程を修了するためにベルギーへ戻り、欧州・日本の国際機関やNGOを中心に就職活動をしました。2014年9月からは、国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部でプロジェクトマネージメントコンサルタントとして勤務しています。UNODCでのインターンを通して、国際機関でプロジェクトの成果を上げるために「人権」などの知識だけでなく、加盟国政府との調整業務の仕方や、効果的な資金の活用方法をもっと学びたいという気持ちになったことが現在につながっています。私の夢は人身取引を含む、人の移動に伴う人権問題について加盟国・国際機関・地域機関・NGOや企業などが効果的に対策を講じられるよう国際機関で調整業務にあたることです。戦力として役立てる人材になれるよう、これから政府の視点、関連する様々な国際機関の視点など多くの視点を学び、経験を積んでいきたいと思っています。インターン先の職員の方々はインターンが終わった後も私のこれからを温かく応援してくださっていて、嬉しい励みになっています。

■これからインターンを希望する方へ■

(国連ウィーンと国連ニューヨーク本部①)
(国連ウィーンと国連ニューヨーク本部②)

もし国際機関の仕事に関心があるのであれば、国連でのインターンはとてもお勧めです。経済的にも難しいことはあるかもしれませんが、色々な可能性を模索してみると奨学金や支援プログラムなどに応募できる人もいるかもしれません。また、採用面での難しさについては諦めずに出願し続けること、そして求人がなくても自分に合った仕事のできそうな機関へ連絡をとってみることも採用の可能性を高めてくれると思います。私も大学が国際機関と協定を結んでいるわけでも知人がいるわけでもなく、インターン実現までには随分時間がかかりました。UNODCでのインターン以前は募集の出ている様々なポストへ出願し、良い結果を出せないでいました。そんな私でしたが、勇気を出して代表部の方に連絡を取り、実際にUNODC職員の方に会いに出かけてよかったと思います。

また、私はインターン開始前にこれまでインターンされた方たちの体験談を国連フォーラムで改めて読み直し、自分のインターンをよりいいものにするたくさんのヒントをいただきました。その中でも何人かの方の体験談からヒントを得て実行し、好評だったのは毎月の「報告書」でした。自分がひと月で取り組んだタスクを毎月1枚紙で課の職員全員と共有し、「今月はこのタスクでこういうことを学べたので、来月はそれを活かしてもっとこういうことをしてみたい」など自分の希望も合わせて提案しました。この報告書のおかげでスーパーバイザー以外の職員からもタスクをいただき、多くの方に指導をしていただくことができました。自分次第でもっともっと充実した楽しいインターンにできる可能性があると思っています。

私のUNODCでの半年はとても充実したものでした。このインターン実現のために、そしてインターン中にお世話になったたくさんの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

2015年2月8日掲載