第58回 福田 知彰(ふくだ ともあき)さん
国連防災世界会議会場にて
©Toshiya Nishigori/UNDP Tokyo
第58回 福田 知彰(ふくだ ともあき)さん
コンコーディア大学大学院 経済学部 修士課程
インターン先:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所
インターン期間:2015年1月~4月
■はじめに■
カナダのモントリオールにあるコンコーディア大学で経済学を専攻している福田知彰と申します。私は2015年1月から4月までの4か月間、国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所でインターンシップをしました。
■インターンシップまでのプロセス■
私は大学卒業後、大学院に進学をして開発経済学を専攻し、将来、開発系機関で働くことを志望しています。そのため、大学在学中に大学が企業と提携して学生にインターンの機会を提供する制度を通して、日本国内外問わずインターンの機会を探していました。インターン先を考える際に、自分自身の専門分野と機関の業務の専門性に関連性があることを軸におき、その中でUNDP駐日代表事務所のホームページで同事務所インターンの公募を見つけ応募をしました。
応募する前、国連機関でインターンシップをしていた友人に、国連機関のインターンシップの探し方や積極的にアプローチしていく姿勢といったアドバイスを受け、大学のサポートサービスを利用して、応募書類である履歴書やカバーレターの書き方を練習するなどしていました。
書類審査の後、UNDPの活動に関する記事の和訳試験と電話面接がありました。電話面接では志望動機や自分がどのようにこのインターンとして貢献できるのかといった質問があり、日本語の応答に加え英語での質問もありました。この電話面接後、今回のインターンシップへの採用が決まりました。自身の専門性と受け入れ機関の業務との関連性だけでなく、応募条件のひとつに日本語と英語の両方が堪能であることが求められていたため、その点が私の強みであったと思います。
■業務内容■
4か月のインターン期間を通して、主に3つの業務に携わりました。1つ目は広報業務の支援、2つ目は民間連携業務の支援、3つ目は今年3月に仙台で行われた国連防災世界会議のイベントやUNDPからの会議出席者の支援です。
1つ目の広報業務の支援として、毎朝、新聞やインターネットの記事などのメディア媒体からUNDPに関連する記事を選び、オフィス内で共有するという業務を行っていました。その他、UNDPで定期的に発刊されるニュースレターの校閲作業や駐日代表事務所および本部職員の日本でのメディア取材のスケジュール管理やインタビュー音声の取り込みなどの作業に携わりました。
また、外部向けの広報活動として、UNDP駐日代表事務所のFacebookやツイッターでの投稿数や同機関主催のイベントの来客者数、配布物などの集計作業も行っていました。この集計作業は、広報活動を通して国際機関が実際にどのような業務をしているのか世間の人に伝えることができているかどうか、その成果を見ることを目的としています。新聞やインターネットの記事など日本のメディアにUNDPの活動紹介をしてもらい、その効果を見ることで、どのようにして世間と身近な存在にしていくことができるか考えるひとつの指針になります。このような広報の仕事は初めてだったのですが、職員の皆さんにとても親切に指導して頂き、業務を遂行することができました。
ヘレン・クラークUNDP総裁と(2015年3月、国連防災世界会議)©Yukiko Abe/UNDP Tokyo
2つ目の民間連携業務の支援とは、具体的にはUNDPがモデル展開をしているビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)というプロジェクトの日本での実施支援です。このプロジェクトは、民間企業と連携し、ビジネスを通して開発分野への貢献を促すことを目的としています。日本企業からこのプロジェクトへ参加を促すために、各企業のニーズや分野に応じて、今のUNDPが行っているプロジェクトの目的や現在の状況を相手先企業に説明をする必要があります。そのための必要データの収集、並びにそのプロジェクトに参加した場合、その企業にどのようなメリットがあるのかという点を説明するためのスライドを作成しました。これらの作業を通してプレゼンテーションスキルの勉強だけでなく、自分自身も同機関の活動についてもさらに深く理解することができました。
私自身、今まで国連が企業と連携してプロジェクトを行っているというイメージがありませんでした。この業務に携わる中で、特にプロジェクト資金の確保という面において、民間企業との連携は大きな強みになりますし、資金調達及び運用の説明責任と透明性の確保というのは、民間企業と通じるものがあると感じました。また、国連機関が民間企業と連携して低所得者層向けの商品やサービスの提供といった開発に寄与することのできるビジネスモデルを展開していく新しい開発のかたちを勉強するいい機会になりました。
3つ目の業務は、3月に仙台で行われた国連防災世界会議のイベントや出席者のサポートです。この会議ではパン・ギムン事務総長やヘレン・クラークUNDP総裁も来日し、180か国以上が参加したとても大規模なイベントでした。当期間中、主にUNDPの主催するシンポジウムなどのイベントや、各国代表団やスタッフの取材時の対応やスケジュールの管理などのサポートをしました。会議が行われる前から沢山のスタッフが仙台でのイベント準備に追われ、私がインターンを始めた1月から3月にかけて、事務所全体が会議に向けて忙しくなってきているのを感じました。この世界会議の開催準備及び実施に携わる中で、開発と防災というひとつの分野で世界各国から関係者が集まり一丸となってその問題に取り込んでいくという国際機関ならではのダイナミックさというものを感じました。UNDPだけでなく防災に関する取り組みを行っている世界銀行や東北大学など、開発機関から学術機関といった様々な組織が一同に会し、その規模や関わる人の多様さにも非常に驚きました。インターンという立場でありながら、仙台にまで行かせてもらいこれほど大きな国際会議に関わることができたのは本当に貴重だったと感じています。
国連防災世界会議でのバン・キムン国連事務総長とヘレン・クラークUNDP総裁©Yukiko Abe/UNDP Tokyo
■インターンの感想■
ー仕事について
インターンとして働く中で感じたことは、日本人のきめ細やかさや、迅速に業務をする能力が求められるということです。業務のどんなに些細なところでも、それが全体の印象を大きく作用することがあります。社会人経験のない私はその点ですごく苦労しましたが、外部向けの文書は主に日本国内のメディアや企業を対象にしていたため、この意識はとても重要だと感じました。
ー駐日代表事務所について
今回の駐日代表事務所でのインターン経験から、事務所が東京にあるということは特に日本在住の学生にとってはインターンしやすい環境であると感じました。国連機関の多くのインターンシップは無給で、渡航費や生活費も全て自分でまかなわなければいけません。その点、UNDP駐日代表事務所は東京にあるため、関東圏に住んでいれば自宅から通うことが可能です。私の場合はインターンシップのためにカナダから一時帰国するというかたちになりましたが、インターンシップ中は都内の実家で暮らしていたため生活費がかかりませんでした。もし海外の事務所に行くとしたら渡航費と生活費がかさんでしまい、金銭的に厳しくなっていたと思います。また、同じような観点から、海外の大学院生だけでなく日本の大学院に通っている人もこのインターンシップはチャレンジしやすいものであると思います。国際機関といえども途上国での仕事が全てではありません。今回のインターンを通して国連における日本人としての役割や仕事があると実感しました。
また、駐日代表事務所でのインターンは日本語と英語が業務上必要とされるため、海外の国連事務所のインターンと比べて競争率が低く、選考の面でも日本人は有利だと思います。私の場合は学校を休学してインターンシップをしましたが、他のインターン生は学校に行きながらパートタイムでインターンシップをしていました。そのため、インターンの受け入れに対して、事務所側はインターンが学業と両立して働けるように柔軟に対応してくれている印象を受けました。
また、インターン全体を通して多くの職員の方と接する機会があり、業務上だけでなくキャリアの面でも助言をいただくことができました。多くの方が修士号を取得されており、今まで海外の大学院を卒業した後のキャリアについて相談できるような機会がなかったため、とても真摯に助言をいただき非常に参考になりました。
■終わりに■
日本のインターンシップの多くは短期間のものが多く、実際の業務に関わることができないことも多いのですが、今回のインターシップでは責任のある業務にも多く携わらせていただき非常に勉強になりました。社会人経験のない私に対して、職員の皆さんに色々なことを教えていただき、大学院を卒業して働く前の良い経験となりました。また、インターンシップ中は職員だけでなくほかの国連機関のインターンに話しかけ、一緒に昼食を取るなどをして交流を持つことができました。大学院修了後は経済関連のデータ分析ができるような仕事を希望しており、その分野で十分な経験を積んだうえで、また国際開発の分野に関わることができればと思っています。今回のインターンでの経験を生かすも殺すも自分次第だと感じているので、責任感を持ってこれからの自分のキャリアに邁進していこうと思っています。
2015年12月27日掲載
ウェブ掲載:三浦舟樹