第71回 小野 克幸(おの かつゆき)さん
第71回 小野 克幸(おの かつゆき)さん
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教育研究所(UCL IOE)教育学 修士課程修了
インターン先: 経済協力開発機構 (OECD) 東京センター
インターン期間: 2017年4月~5月(2ヶ月)
■インターンシップ応募から採用まで■
国連フォーラムのメーリングリストでOECD東京センターのインターン募集広告を見つけ、ホームページで詳細をすぐ確認したのをよく覚えています。学部生時代からOECDの報告書PISA(生徒の学習到達度調査)[1]についてのレポートを書き、OECD iLibrary (OECDが出版する報告書、定期刊行物、ワーキングペーパー、統計データベースをすべて収録したオンライン・ライブラリー) [2]のデータを論文などに使用し、OECDのことは以前からよく知っていました。募集広告のメールには、「将来、国際機関で働きたい方、国際機関の業務を体験してみたい方」とあり、国際機関で働くなら、どうしてもOECDで働きたいという強い希望を持っていた私は、応募を見つけたその日のうちに応募書類を作ってメールを送りました。
応募書類はCVとカバーレターで、提出してすぐに連絡があり、1次試験のスカイプ面接のスケジュールを決めました。スカイプ面接では、学歴や資格などの自分の専門性、これまでの職務経験と、OECDでインターンをしたいという熱意を伝えました。2次試験は電話面接で、そこではインターンとして働く気持ちで、事前に知っておくべきことや採用前からできる準備について質問しました。
その後、無事に合格をいただき、書類の記入などに進んだのですが、ここからが私にとっては難関でした。学籍を証明し、インターンとしての同意書に所属大学院から署名をもらう必要があるのですが、その時すでに帰国していたので、ロンドンにある大学院にメールで送ってもらうことにしました。このメールのやり取りが思いのほか時間のかかる作業で、インターンとしての登録に必要な書類がやっと揃ったのは、インターン開始予定日を大幅に過ぎた3月末でした。OECD本部と東京センターの理解と協力があり、4月から月曜から金曜までフルタイムでインターンを始めることができました。
OECD本部は、フランスのパリにありますが、世界4箇所にセンターも設置しています。その1つが東京センターです。OECD東京センターは、日本及びアジア地域における広報活動のコンタクト先として、OECDの取り組みや出版物、統計情報などのお問合せにお答えする他、メディア関係者向けに記者会見などを開催しています。大学などへの出前講座やOECD iLibraryの使い方講習会も行っています。また、OECDの報告書などの日本語版出版のためのアシスト業務も行っています。
■インターンシップの内容■
OECDの中でも広報部門を担う東京センターのインターン業務は、メディアレビューやメディアカバレッジレポートの作成の他、データベースのアップデートやSNSの運用などが主な業務になります。下記では各業務について説明したいと思います。
まず、メディアレビューですが、これは新聞、雑誌やテレビ、オンラインの記事も含め、各メディアでOECDのどのデータがどのように利用されているか、OECDに関連したイベントや報告書発表のニュースがどのようにどれくらい報道されているかを調べる作業です。メディアレビューは、各センターが代表する地域―東京の場合は日本及びアジア全域ーにおける優先伝達事項をOECDパリ本部に連絡し、職員の間で情報を共有するのに役立っています。そのため、インターンは、経済などについての話題のニュースを収集し、報告しています。
インターンは、時差の関係で、パリ本部が起きるまでにこれらの作業を終えなければならないので、出勤すると一番に行っています。連休明けなどで確認するメディアが多いときは、取り上げるニュースも多くなるので大変です。
メディアレビューの記事をパリ本部に報告した後、毎日行っているのが、データベースのアップデートのためのデータ入力作業です。東京センターでは引用された報告書や記事となったニュースなどOECDに関する情報をデータベースで管理しています。これは定期的(半期・年間)にどれだけの情報が記事となったかパリへ報告すること、データベースで管理することにより将来的に必要になった際にすぐに取り出せるようにするためです。東京センターでは、全体の数字を報告する際の利便性からデータ、そして実際に内容を確認するためのハードコピーの両方で管理しています。
データベースに入力する記事は基本的に二次利用されている記事・ニュースについては除外し、プライマリーソースのみをデータベースで記録します。入力する項目は記事タイトル、報道機関名、掲載日、報道形式など基本的な項目から、関連のOECD部署、引用されている報告書名、掲載されている職員名とその職位など多岐に渡ります。
私がインターンを開始してすぐに、OECDのトップ、グリア事務総長が『OECD対日経済審査報告書(OECD Economic Survey of Japan 2017)』[3]の発表や第1回アジア国際経済フォーラムへ出席するため訪日しました[4]。OECD東京センターにとって1年で最も忙しくなる期間の1つで、インターンの私も例外ではありませんでした。
事務総長訪日準備は1ヶ月以上前から行われます。まず、メディアチームとしてはグリア事務総長とOECD幹部の訪日にあたり、メディアレビューの作成を行います。これは日本国内の最新の情勢を事前に伝えることを目的としており、幹部らの関心事を考えながら、経済・政治・社会など様々な分野での重要なニュースをまとめます。
また、日本記者クラブでの『OECD対日経済審査報告書』発表に備えて、ホームページ・SNSで事前告知、記者用の資料準備もインターンの仕事です。この作業は、記者向けのブリーフィング、イベントなどでの公式発表、プレスリリースと続く発表の流れの一部であり、重要任務です。その他にも各種イベントでの会場設営、参加者名簿の作成、受付など事務総長訪日中の業務は多岐にわたりました。
『OECD対日経済審査報告書』発表翌日には、メディアカバレッジをまとめる作業を行います。これは、事務総長への取材やOECD関連イベントについての記事を調べて、報告書やフォーラムがどれだけニュースに取り上げられたかを確認し、事務総長をはじめパリ本部と共有することを目的としています。
写真: グリア事務総長 (右) 、ジョーンズOECD経済局日本・韓国課長 (左)
(日本記者クラブでの『OECD対日経済審査報告書』発表の様子)
メディアカバレッジをまとめる作業もインターンの重要な業務の一つです。メディアカバレッジレポートとは、特定の報告書やイベントがどの程度メディアに取り上げられたかを確認し、パリ本部の関係部署と情報を共有するために作成します。
東京センターでは事務総長訪日や注目の報告書の発表、東京センターが携わったイベントなどに関するメディアカバレッジレポートを作成します。
私のインターン期間中では、対日経済審査報告書の他に、『OECD生徒の学習到達度調査 (PISA2015) 生徒の幸福度 (Students’Well-Being) 』の発表翌日にメディアカバレッジレポートをまとめました。この報告書については、15歳の生徒の生活満足度における日本の順位、学校外でのネット使用時間やいじめられた経験についてのニュースを見た方も多いと思います。それら全てを調べて、50件以上の記事をまとめたメディアカバレッジレポートを提出しました。
写真:『OECD生徒の学習到達度調査 (PISA2015) 』を持つ執筆者
インターンは、TwitterとFacebookを通じてOECDのデータ、イベントや新報告書情報の発信のために、SNSの運用も行なっています。私は、毎日の投稿の他に、OECDのことやインターンの業務についてより広く知ってもらうために「インターンの日々@OECD」というシリーズの投稿を行いました。これは、企画書をパリ本部に提出し、交渉して始めることができた私主導の新企画でした[5]。
他にも、東京センターではOECD iLibraryの利用促進のため動画を作成することになり、その日本語音声吹き込みを私が務めました。私がナレーションを務めたのは、「OECD iLibrary の紹介」[6]と「OECD iLibrary 統計データの見つけ方」[7]という動画で、YouTubeよりご覧になれます。
■感想と将来の展望■
対日経済審査報告書発表に伴い訪日したグリア事務総長は、安倍総理や麻生副総理との会談、イベントへの参加の合間を縫って取材を受けていました。このインタビューを参観できOECDで働きたいというモチベーションが強くなりました。
インターン開始前より多くのOECDの活動内容を知り、報告書の発表に携わったことで、OECDが「各国政府が共通の問題について解決策を追求し、経験を共有するために協働することができる対話の場」を提供していることを実感しました。
今後は、より専門性を高め、経験を積み、世界中の人々の経済や社会福祉の向上と政策を推進するために活動を行い、環境的な変化をもたらす事について理解するため、各国政府と一緒に取り組んでいる国際機関、OECDで、インターンではなく、職員として将来働きたいと考えています。
写真: OECD本部 (フランス、パリ)
撮影: OECD/Christian Moutarde
■これからインターンを希望する方へのメッセージ■
OECDを含め国際機関に興味がある方には、是非、インターンを経験してほしいと思います。OECD東京センターのインターンは学部生も応募することができ、4期ほどに分けて1年中募集しています。学生期間を終えると、インターンの募集要件を満たすことが難しくなるので、できるときに挑戦することをお勧めしたいです[8]。
また、OECD東京センターでは、例年、OECDの活動を学内外でPRするプログラム“OECD Student Ambassador Programme”のメンバーを募集しています[9]。これは、フルタイムでインターンをすることが難しい学生にとっても、OECD職員や関係者と交流し、様々な大学から集うメンバーと切磋琢磨して企画運営能力を磨くチャンスです。
写真: OECD東京センター, エントランス及び閲覧室
- [1] http://www.oecd.org/pisa/
- [2] http://www.oecd-ilibrary.org/jp
- [3] http://www.oecd.org/economy/surveys/economic-survey-japan.htm
- [4] https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/mr-angel-gurria-secretary-general-of-the-oecd-scheduled-to-be-in-tokyo-on-13-14-april-2017-japanese-version.htm
- [5] https://www.facebook.com/OECD.TOKYO/photos/a.285220108217288.65749.283465495059416/1480073385398615/?type=3&theater
- [6] https://www.youtube.com/watch?v=qPpuqQGN3Oo
- [7] https://www.youtube.com/watch?v=gZglMi0VJfI
- [8] http://www.oecd.org/tokyo/about/oecdtokyocentreinternships2017.htm
- [9] http://www.oecd.org/tokyo/studentambassadorjapan/student-ambassador-2017-jp.htm
2017年7月23日掲載
ウェブ掲載:三浦舟樹