第11回ネットワーキングカンファレンス(2012年8月4日)

2012年8月4日 Club JPO・ワシントンDC開発フォーラム・国連フォーラム 国際協力3フォーラム合同・夏のオフ会in東京 with soket ご報告

ワシントンDC開発フォーラム、Club JPOと国連フォーラムは、海外からの一時帰国者が多い年末・年始と夏休みの時期に合わせ、1年に2回程度のペースで、東京でのオフ会を開催しています。

2012年夏のオフ会は、soketとの共催で、8月4日(土)に東京大学(本郷キャンパス)山上会館で開催されました。炎天下にもかかわらず、1日を通じて総勢197名が参加する、大イベントとなりました。

第11回目となった今オフ会では、恒例の懇親立食会に先立ち、午後に第一部として、「新しい開発アプローチ:技術と組織と人のイノベーション」と題した参加型・対話型ワークショップを行いました。

まず、21名の国際協力分野の“プロ”たちが“刺激を投げ込むホスト”として、それぞれがどのような斬新なアプローチを用いて、既存の枠組みを超え、誰とどのように協働しているのかについて、共有しました。スピーカーの年齢層は20~50代と実に幅広く、所属や分野もアカデミック(大学生・院生・研究者)、公的機関(国連・世銀等の国際機関およびJICA・JBICを初めとする国内援助機関の実務者)、企業・非営利組織(アントレプレナー、イントラプレナー(社内企業家)、経営者)と、多岐にわたりました。このワークショップの特徴は、その名の通り、参加者全員が参加し対話するという点。ただ話を聞くだけの受け身の立場ではなく、全員が“主役”として自らのアクションを考えようという趣旨だったため、会全体を通して、常識や前提を問い直す問いから、フィールド経験に基づく鋭い視点まで、様々な意見や質問が飛び交い、皆がそれぞれの考えや感想を共有しました。

参加型・対話型ワークショップ「新しい開発アプローチ:技術と組織と人のイノベーション」

■1■ オープニング&アイスブレーキング

まず、総合司会が企画の趣旨や進め方について簡単に説明した後、参加者全員で、被災者への黙とうを捧げました。そして、はじめて会った2-3人同士で小グループをつくり、自己紹介と今日への期待を話し合いました。その後、会場全体の中から1, 2名、グループで話した内容を全体に共有しました。

写真①

■2■ オープニング・スピーチ

「開発課題の現状、開発機関・企業・市民社会の開発貢献」

・モデレーター: 田瀬和夫(国連広報局)
・プレゼンター: 平野克己(ジェトロ・アジア経済研究所)

室谷龍太郎(JICA研究所)

金平直人(世界銀行機構改革・戦略局/NPO法人ソケット代表)

写真②

オープニングでは、上記の開発機関の関係者をプレゼンターに迎え、開発課題の現状とその広がり、また、開発機関・企業・市民社会がそこで果たすべき役割やパートナーシップの重要性について議論を行いました。主なポイントは以下の通りでした:

  • 現在の開発課題は、国境を越え、政府の役割だけでは対応しきれない状況になっている。
  • 今の世界の課題は、グローバル、かつローカル。
  • 新しい課題に取り組む、新しいアクターが登場している。新しい協働の取り組みが求められている。

そして参加者全員がパネルの内容を受けて、それぞれが「国際機関/企業/市民社会どの立場で、どんな課題に取り組みたいか」について小グループで共有し、再び会場全体の中から数名が、自分の立ち位置について全体にシェアしてもらいました。

写真③

■3■ ショートパネル・シリーズ

パネルディスカッションでは、下記の3つのテーマに関して、それぞれのパネリストが5分間のショートプレゼンテーションをした後、モデレーターと10分間のパネルディスカッションを行いました。

テーマ1 「課題に答える新たなパートナーシップ」

  • モデレーター: 野村舞衣(NPO法人ソケット/ノットワークカフェ主催)
  • パネリスト: 税所篤快(e-Education Project)、細野隆史(東京大学大学院理学系研究科特任研究員)、西口尚宏(株式会社 産業革新機構 執行役員 /防災プラットフォーム)、設楽恵美(地球サミット2012 Japan)

上記のパネリストたちは、それぞれ、「どのような課題に対して、誰を巻き込んで取り組んでいるのか」および「国・地域や分野等を跨いだパートナーシップの機会とチャレンジ、成功の秘訣」について、個別・具体的な取組みを紹介しました。共通して、「パートナーシップを成功させる秘訣は、ビジョンへの共感を得ること」「何よりも対話が重要。相手の文化を理解し、そのうえで、自分の強みをアピールする」「パートナーと共に、成功体験を積み重ねる。それがより強い絆を作る」といった声が聞かれました。

テーマ2 「ビジネスと社会の新たな関係」

  • モデレーター: 小沼大地(NPO法人クロスフィールズ代表理事)
  • パネリスト: 白木夏子(HASUNA)、御手洗珠子(初代ブータン首相フェロー)、矢萩章(株式会社エヌ・ウェーブ代表取締役)、山本一路(株式会社Seedtime代表)

このテーマでは、それぞれのパネリストの所属する組織が、ビジネスを通じてどんな社会課題の解決を目指しているのか、活動の事例を紹介しました。「先進国のビジネスの常識は必ずしも当てはまらない。現地の人と一緒に、ビジネスを一から作っていく。」「やるしかないからやる、その覚悟が重要。」「1社だけでは限界がある。業界全体を変える取り組みを目指す。」といったコメントが印象的でした。

テーマ3 「個人と組織の新たな働き方」

  • モデレーター: 新井元行(NPO法人ソケット/デジタルグリッドによる途上国エネルギービジネス)
  • パネリスト: 遠藤謙(Sony CSL, MIT Media Laboratory, 途上国向け義足)

三木貴穂(ベネッセホールディングス ソーシャルビジネス室)
小川徳和(タンザニア トラクターレンタルビジネス)
斉藤隆祐(AMP Music)

3つ目のテーマでは、それぞれのパネリストが個人として、複数組織の様々な肩書きを使い、どのような立ち位置で、社会課題の解決に取り組んでいるのか、活動事例を紹介しました。成功の秘訣として挙げられたのは、「本業の他に、もう一つ、夜の仕事を持つことで、多様性が生まれる。それを本業にフィードバックする。」「組織内での評価ではなく、社会に評価される仕事を意識する。」「イントラプレナーは急がず、長期的にキャリアを考える必要がある。焦らずに、少しずつ組織を動かす。」等でした。

写真④

■4■ジャム・セッション & ラップアップ

・プレゼンター: 大塚啓二郎(政策研究大学院大学教授)

岩崎卓也(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 編集長)

ジャムセッションでは、まず、登壇者全体が前のセッションの3つのテーマを俯瞰して、自分にとってのWHY(取り組みに至った理由・経緯や感想)を対話形式でシェアしました。次に会場を3つのグループに分け、参加者全員が、「登壇者の話をうけた自分にとってのwhyとwhat」についてディスカッションしました。その後更に全体対話を経て、上記2名のプレゼンターから、今日の学びや若者への期待についてまとめていただきました。

参加者からは以下のような感想が聞かれました。

  • パートナーシップは永遠のものではない。何のためにパートナーと連携するのか、目的をきちんと意識し、必要に応じてメンテナンスる必要があると気づいた。
  • 変化を起こすには、あれこれ考えてばかりいるのではなく、まずやってみる、という姿勢がとても重要だという事を改めて実感した。
  • 郷に入っては郷に従え、途上国でのビジネスは、現地のニーズを聞く事から始めないといけない。
  • 大企業は、社会を与える影響も大きい。大きなインパクトを見据えつつ、小さなアクションをコツコツ積み重ねて変えていきたい。まずは社内での勉強会から始めていきたい。

プロが枠を超えて協働し、素人が前提を問い直し、互いに実践し学び続けることの価値を見出す、濃密な4時間のワークショップでした。

写真⑤

また、ワークショップと並行して、国連フォーラムの元・現幹事が集い、フォーラムの過去8年の活動を見直して今後の展開について議論する、幹事総会も開かれました。

写真⑥

第二部の立食懇親会は、縁の下の力持ちとして会の運営を下支えしてくれたsoketインターンの惣名一貴くんの乾杯の挨拶で幕を開けました。緊張しながらも「第一部に参加していて、楽しかったです!」とエネルギッシュに話す20歳の青年の言葉に、会場の熱気が一層高まりました。その後、第二部から加わった参加者のために、第一部ワークショップの様子を説明する時間があり、第一部のディスカッションの続きができるようにと、会場に3か所の特別コーナーが設けられました。

写真⑦

後半には、恒例の3フォーラムの紹介があり、その中で、国連フォーラムの幹事総会の結果も発表されました。 その後、今回の企画を陰で支えてくださった東京大学の阿部力也教授から、「互いに刺激を受けあって、みんなでもっと頑張ろう!」というコメントをいただきました。

最後の閉会の挨拶は、本オフ会の生みの親であり、長年オフ会を主催者として支え続けてきたものの8月末から海外赴任で東京を離れるDC開発フォーラムの紀谷昌彦さんからいただきました。紀谷さんは、組織から個人へパワーがシフトし、一人ひとりが“主役”の時代になっていること、そして、物事や世界を変える原動力は、そんな心意気・やる気に溢れる個人たちの結び付きであることを感じた、と、オフ会の感想をお話しされました。

本オフ会はそもそも2007年に紀谷さんが、「まずは一回やってみよう」と、他の2フォーラムの幹事に声をかけて始まった取組みです。正に、紀谷さんの個人の発想や熱意が人びとを引き付けて、11回のオフ会に繋がってきたというわけです。

写真⑧

今回(の特に第一部)は、会全体が実験的で、設計や準備は完璧とは言えませんでしたが、心意気・やる気に満ち溢れた人たちが大勢集まり、新たな結びつきが生まれた分、ワクワク・ドキドキに満ち溢れる楽しい会になりました。今後は紀谷さん不在が続きますが、引き続き、参加者が既存の枠を超えて出会い、対話し、刺激し合い、自分の行動を発見し、互いに結び付きあい、新たなアイデアやアクションに繋がるきっかけとなれば幸いです。

写真⑨

国際協力3フォーラム合同・夏の東京オフ会with soket企画担当

金平直人・秋田智司・野村舞衣(soket)

春木由美、紀谷昌彦、真鍋希代嗣(ワシントンDC開発フォーラム)

二井矢洋一(Club JPO)
柴土真季・竹内克仁・毛利剛士・杉山章子・小谷瑠以(国連フォーラム)

(ウェブ掲載:田瀬和夫)

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【参考】主催者について

soket(ソケット)は、イノベーティブな開発アプローチを企業や非営利機関、開発機関のなかから志と情熱をもって仕掛ける「イントラプレナー」を発掘・支援し、対話と相互研鑽をつうじて個々人の行動に移すことを目的に設立された非営利法人です。

http://www.soket.me/

国連フォーラムは、国連のことをもっと知りたい、国連の活動に貢献したいと考えている実務者、研究者、学生、メディア関係者など幅広い人々を対象として、国連についての 知識を得、議論に参加し、さらには活動に参画する場を提供することを目標としています。さらに、 議論の深化と発信を通じて、参加者にとって有意義な変化を引き出すことを目標としています。
http://www.unforum.org

ワシントンDC開発フォーラムは、グローバルな開発戦略と日本の関わりについて考え、行動に移すための関係者の情報交換・意見交換の場です。フォーラムを通じての交流は、日本や途上国、国際機関所在地など世界各地に広がっています。様々な開発関係者が、組織や場所の制約を超えて情報と知見、更には情熱と気概を共有し深化させることが出来れば、大変嬉しく思います。
http://www.devforum.jp

Club JPOは、国際機関で働いている方などのインタビューや各国際機関の仕事の内容、人事制度などの情報を提供することで、国際機関や国際公務員についての理解を深めてもらい、国際公務員を目指す方のキャリア形成に役立ててもらうことを目的として設立されたウェブサイトとメーリングリストです。
http://homepage3.nifty.com/clubjpo/