コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航後:中間報告会・振り返り会」

中間報告会

1.はじめに

本報告書は、先日開催されたスタディ・プログラム中間報告会における勉強会の内容を整理したものである。報告書の渡航後パートにおける課題別テーマセクションの中間報告及び渡航後に一同に集う場所をつくることであった。報告では「経済」「社会」「環境」の三つの課題別テーマに分けて、それぞれの問題提起、仮説、現地での学び、そして考察と問いの再評価が行われた。

2. 経済

2-1.問題提起

問い:「コロンビアにおいて、持続可能な経済成長を実現するには?」

この問いに対して、参加者はコロンビア経済の基本的な構造(主要産業、輸出入の状況、GDP等)に加え、社会構造(元戦闘員、国内避難民、ベネズエラからの移民、先住民、女性など)を理解する必要性を確認した。経済成長がもたらす社会的側面への影響にも配慮しながら、従来の経済成長の負の側面を克服する形での成長の在り方が問われた。

2-2.仮説設定

主な課題として、「産業構造の転換」(例:脱炭素化)および「経済格差の是正」が挙げられた。鉱物資源への依存から再生可能エネルギーへの転換を図るとともに、産業の多角化を目的とした観光業やIT産業の育成が進められているのではないか。また、脆弱性の高い人々(元戦闘員、IDP、移民など)への包摂や教育の重要性が指摘された。

2-3.現地での学び

参加者は、持続可能な経済成長に向けたコロンビアの努力として、負の歴史からの脱却、脆弱な人々への心理的ケアや自立支援、違法薬物経済からの転換を目指す支援策を目の当たりにした。また、観光業における記憶の継承、市民社会の成長、包摂的ビジネスの振興といった多様なアプローチが紹介された。

2-4.考察と問いの再評価

脆弱性が高い人々の存在は、経済成長の観点では「負債」と捉えられがちであるが、ローカルコミュニティにおける教育やインフラ投資の取組を官民一体で進めることが重要である。経済成長を実現する上で、セクター間の協働が不可欠であると再確認され、政府機能の強化や緊急支援に留まらない長期的視点での政策が求められている。

3.社会

3-1.問題提起

コロンビアは内戦終結後、「完全な平和(Paz total)」を目指しているが、社会的不平等や麻薬産業、和解の遅れなど複数の課題を抱えている。特に元戦闘員の再統合政策の進捗状況は不透明であり、何がその実現を阻んでいるのかが問われた。

3-2.仮説設定

和解には「賠償、謝罪、許し」が不可欠な要素とされる。反政府武装組織や組織犯罪グループとの交渉は、利害調整やインセンティブ維持の難しさから和平合意が難航しているのではないか。さらに、元戦闘員への地域での差別も障壁となっている可能性がある。

3-3.現地での学び

先住民地域は武装勢力からの標的となり、麻薬栽培の強制などが行われていた過去がある。現在は、壁画や記念館で、紛争の記憶の保存・共有が進められている。和平合意から約8年が経過し、一定の進展は見られるものの、元戦闘員の再統合においては支援の充実が求められている。

3-4.考察と問いの再評価

再統合におけるボトルネックとして、政府の関与不足が挙げられる。現地では「真実の告白」と「対話」に基づく和解プロセスの支援が行われており、最低限の収入保障に加えて、就労支援を含む包括的な自立支援が必要とされている。政府・市民・国際機関の三者協力によるPaz Totalの実現が望まれる。

4.環境

4-1.問題提起

リオ条約(1992)以降、生物多様性と気候変動に対する統合的な取り組みが進められている。問いは、気候変動と生物多様性の問題がコロンビアにどのような影響を及ぼしており、どのような取り組みが行われているのかというものである。焦点は、災害リスク低減、食糧安全保障、持続可能な農業支援の3分野に置かれた。

4-2.仮説設定

【災害リスク低減】地方政府や地域住民においては気候変動対策の財政的・人的リソースが不足

【食糧安全保障】気候変動が食糧安全保障の脅威となっている

【持続可能な農業支援】農民が違法作物栽培に戻る主な原因は、経済的持続可能性の欠如、代替作物の市場アクセスの制約、地域の安定性と安全保障の欠如にある

4-3.現地での学び

非公式居住区では災害リスクが高く、市当局、UN Habitat、地域リーダーの連携による都市開発が進められていた。自然災害に起因する飢餓に対しては、国際機関による支援が実施されていた。代替開発では、農民のコカ栽培からカカオやコーヒーといった合法作物への転換を通じて、持続可能な生計を目指している

4-4.考察と問いの再評価

災害リスクの低減においては、ボトムアップ型の都市開発が包摂性を担保する一方、全体の開発進度とのギャップが課題として残る。食糧安全保障に関しては、飢餓と肥満の両方に対する対策が必要であり、気候変動の影響を考慮した政策が求められる。農業支援では、合法作物の収益向上や市場へのアクセス向上、地域の治安維持の必要性が確認されたが、依然として格差や不安定性が課題として残されている。

5.おわりに

本中間報告会では、参加者が現地での体験をもとに問いを再評価し、それぞれの課題に対して深い洞察を得る機会となった。コロンビアの社会的・経済的・環境的文脈の複雑さと、それに対する多面的なアプローチの重要性が共有され、今後の学びと行動の指針となる報告となった。

写真①

振り返り会レポート

1.はじめに

本振り返り会は、コロンビア・スタディ・プログラムの締めくくりとして開催されたものである。主な目的は、参加者一人ひとりがプログラムを通じて得た気づきや学びを振り返り、スライドを用いた発表を通じて個人の学びを総括することであった。

当日は、参加者が3〜4名ずつの小グループに分かれ、それぞれがスライドを用いて自身の経験や考えたことを共有し、グループ内でフィードバックを行う形式で進行した。発表では、現地での経験に基づく知見や印象に残った出来事、スタディ・プログラムへの関わり方、さらにはプログラムを経て生じた疑問や葛藤(いわゆる「モヤモヤ」)についても率直な言葉で語られた。

2.内容(抜粋)

振り返り会で共有された内容は多岐にわたったが、以下のようなテーマが中心であった。

2-1.コロンビア・スタディ・プログラムを通じて得た知見や感想

・コロンビアに実際に滞在したことによる気づき(コロンビアの人柄や風土・国際機関の仕事など)

・プログラムへの関わり方(事前学習・現地での取り組み・報告会での発表など)への反省

2-2.プログラムを経て生じた疑問や葛藤

・今後の進路やキャリア形成にどのように今回の経験を活かしていくか

・中には大学院進学や国際留学への挑戦を掲げる参加者も

それぞれの発表からは、現地での学びや出会いが個々の価値観や問題意識に大きな影響を与えていたことがうかがえた。また、モヤモヤを共有しあうことで、自分一人では言語化できなかった想いが整理されたり、新たな視点が生まれたりする場面も見られた。

3.おわりに

和やかながらも真剣な雰囲気の中で実施された本会は、まさに「振り返り」の名にふさわしい、実りある時間となった。そして、本会をもってコロンビア・スタディ・プログラムは正式に終了となった。プログラムを通じて得られた学びやつながりが、今後のそれぞれの活動に活かされていくことを期待している。

写真②