モンゴル・スタディ・プログラム - 活動報告書(本編)2.2. 現地活動

2.2.1. UN-Habitat

ゲル地区視察:Community-led Ger Area Upgrading in Ulaanbaatar City Project

遊牧民が都市に流入し、移動式住居である「ゲル」を建てて定住している地域を「ゲル地区」といいます。ウランバートルの人口の約6割が住み、日々拡大していると言われているゲル地区では、水道や電気といった基礎インフラが整っておらず、約半分が貧困層です。スラムと化しているゲル地区の改善とコミュニティ形成を通した住民のエンパワーメントを目指すUN-Habitatの「ゲル・アップグレードプロジェクト」を訪れ、給水所、整備された道路、コミュニティセンター、町役場などを見学しました。

見学の途中、私たちが来ることを知って正装で来てくださったお年寄りの方に、このプロジェクトと、その支援をしている日本に対し、心からの感謝の言葉を頂きました。「勤勉な日本の人々にならい、モンゴルも頑張らなければならないと子どもたちに伝えている」とその方はおっしゃいました。

役場ではSub district Officerの女性にお会いし、このプロジェクトがインフラ建設だけのプロジェクトではなく、地元コミュニティと政府を巻き込んだものであるという説明を受けました。コミュニティセンターを利用した保育施設では、たくさんの子ども達と、折り紙や歌、踊りを通して交流しました。

最後に丘に登って、ウランバートル市を俯瞰しました。高いビルが立ち並ぶ周囲に、ひと目で分かるゲルの集団。驚異的な経済成長を続けるモンゴルの、影の部分にあたるゲル地区の改善には、継続的な住民の意識改革と、行政改革の両方が必要であると強く感じました。

<文責:吉村美紀>

2.2.2. FAO

フスタイ国立公園(Khustai National Park)

国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)の自然環境保全の活動を視察するため、ウランバートルから4WD4台に分乗し、草原を横切っただけの道なき道を100km進むと、3時間後にフスタイ国立公園に到着した。この国立公園内には、モンゴル固有のモウコノウマの生態を観察できる。一時期、この馬は農地の拡大や捕食により絶滅してしまっていたが、1992年頃オランダの援助により、オランダの動物園で繁殖していたモウコノウマ16頭がフスタイ国立公園に送られた。さらに、2002年までに世界各地の動物園から84頭ものモウコノウマが送られ、野生化と繁殖に成功した。

地平線の先まで草原が続く視界の中、青空の下で望遠鏡を覗き、遠くに群れているモウコノウマを眺めると、手つかずの自然を守っていく自然環境保護の重要性を理屈ではなく、ありのままの自然から感じられた気がした。草原に参加者全員で寝っころがり、空を見上げると、今まで見たことのない地平線の広がりと空の広さに心が洗われる。ウランバートルのほこりっぽい道路や、開発に沸く建設現場を見た後にこの国立公園を訪れると、資源バブルに沸く経済成長に目を奪われがちなモンゴルにおいて、ありのままの自然こそこの国の一番の魅力であることに気付かされる。

<文責:宮崎潤>

南南協力プロジェクト

途上国間で行われる援助を南南協力といい、これは南半球に途上国が多いことから言われる用語ですが、このプロジェクトでは、中国がバックになってモンゴルの開発を援助していました。構図としては、中国が資金供出を行い、FAOが技術面でサポートを行う中、地元のNGOが中心となって運営が行われていました。プロジェクトの目的は、技術支援によって野菜やカシミヤの生産性を上げて出荷までの期間を短縮し、出荷量を増やすことによる収益の向上でした。

説明をしてくださったNGOの方は、自分の仕事にとても誇りを持っており、モンゴルの農業・牧畜の生産性を上げる一助を担っていることをうれしく思っていると生き生きと語ってくださっていたのが印象的でした。地元の方々がプロジェクトの中心に携わることは、プロジェクト終了後もその取り組みが現地で存続していくために重要なことであると思います。しかし、その後、参加者同士でディスカッションを行う中で、現在の活動が本当に最適なものかどうかを知るためには、現地からの視点だけでなく、外部からのモニタリングも大切だという点に気付かされる事となりました。開発プロジェクトをマネジメントしていくためには、様々な視点に立って物事を考えることが要求されるのだと身をもって学ぶことができました。

<文責:金子郁代>

農業プロジェクト

ウランバートルで国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)の主導で行われている野菜の生産プロジェクトを見学しました。モンゴルは大草原のもとでの遊牧生活を古くから行っており、その性格上、一つの場所にとどまって農業をするという形態は行ってきませんでした。ゆえにモンゴルの食生活はヤギやヒツジ、それらからとれる乳のような動物性たんぱく質が中心ということでした。FAOはそのようなバランスの悪い食生活に危機感を示し、モンゴルでの野菜生産を広げるプロジェクトを開始したそうです。

私はこのプロジェクトの意義について深く考えました。というのもモンゴルに来る前から世界の食糧安全保障に深い関心を持っていたので、FAO主導で食糧安全保障の達成という文脈で行われているこのプロジェクトが果たして本当にモンゴルの人々のためになっているのだろうかと思ったのです。野菜不足によるビタミンB,Dの不足によって心臓病や、肝不全が増加しているとFAOの方は言っていました。しかし明らかにモンゴル人のライフスタイルに合わない農業が本当にモンゴルの人たちに受けいれられるのかが疑問でした。さらにこのプロジェクト自体が出資主のEUの意向に大きく影響を受けているということも知り、はじめはこのプロジェクト自体必要のないものではないかと考えていました。しかし、その後のMSPメンバーでのディスカッションで「もし遊牧ができなくなった時の代替産業として農業を覚えることにも意義があるのではないか」という意見を聞き、ある意味ではFAOの理念である「長期的飢餓の防止」にマッチするプロジェクトであると感じ、食糧安全保障のむずかしさを改めて感じさせられる経験となりました。

<文責:北室健人>

森林保全プロジェクト

今回のプログラムでは、首都だけでなくセレンゲ地方のTsagaannuur soumまで足を伸ばし、森林保全プロジェクトを見学しました。モンゴルでは森林破壊が深刻化していますが、これに歯止めをかけることで、環境保全と、地域住民の生活向上を目的としています。住民は伐採された木材から利益を得ることも可能で、農村の人々に新たな収入源を提供することも期待される効果の一つです。

このような開発支援は、一方的に上からなされるものというイメージを持っていましたが、プロジェクト参加者が環境に対する意識を持って、有志のコミュニティーを形成し、主体的に取り組んでいた点がとても印象的でした。まだ開始から間もないプロジェクトですが、当事者自身が中心となって運営されるかどうかが、今後の継続的な成功を占う鍵になると感じました。

プロジェクトに参加なさっているご家族からお話を伺い、畑なども見学させていただいたほか、手作りのチーズやジャムもごちそうになり、美味しさのあまりついついお代わりしてしまいました。

Darkhanから道なき道を数時間車に揺られての長旅でしたが、道中は見渡す限りなだらかな丘陵地帯で、美しい自然にも心揺さぶられました。

<文責:吉越文>

2.2.3. UNICEF

国立感染症センター

訪れた国立感染症センターでは、国際協力機構(JICA)の支援のもと行われた予防接種施策の現状についてお話を伺いました。このプロジェクトはワクチンの安定した供給を確保するという第一段階を終え、現状のモニタリングをはじめ、特に地方部での予防接種へのアクセスの確保、現地NGOや医療以外のセクターと連携して事業を行うなど、より地域に根ざした事業展開をしています。

通常、ワクチンは効果を保つために輸送や保管の際に最適な冷温を維持しなければなりませんが、ここでは凍結を防ぐための冷温管理が必要であるというモンゴルならでのお話が印象的でした。

ワクチンを保管する冷蔵庫には日本からの支援の証であるシールが貼られており、ここ20年で予防接種プロジェクトによりモンゴルの子供たちの健康状態改善に日本が大きく貢献したことを誇りに思うとともに、予防接種の普及によって防ぐことができる死や病が減ることを願わずにはいられない訪問となりました。

<文責:久銘次美奈江>

Family Health Center

モンゴルの医療機関は規模に応じて大きく3段階に分かれておりますが((1) PrimaryLevel:FamilyHealth Center,(2) Secondary Level:District Hospital, (3) Tertiary Level:Special Hospital)その中で、ウランバートル市内にある(1) Primary LevelのFamily Health Centerを訪問、関係者より現場の医療事情について伺いました。印象に残っていることは、以下二つ。

一つ目は、Family Health Centerの課題として、医師に対する看護師比率が低いことです

(説明頂いたところによると、2012年統計では、モンゴル全土で1:1.6だがFamily Health Centerは更に低く1:1(注1))。この看護師比率が低い原因としては、モンゴルには医学大学がいくつかあるが、看護師は、医師に比べ給料格差があるため、卒業生は皆医師になりたがるとのことでした。国として是正措置を取る必要性を感じました。

二つ目は、NGOのWorld Visionが一緒になり子供の栄養改善コンサルティング等を提供しているとのことで、リソースが不足しがちなPrimary Level組織をノウハウを持った国際NGOが支援する重要性を痛感しました。

個人的には医療業界は全く知らない世界ですが、モンゴルの医療現場の一端を見ることができ、大変参考になりました。

  • 注1):OECD Health Data 2013によると日本の医師看護師比率は1:4.5(2010年データ)、米国も1:4.5(2010年、2011年データ)
  • 参考資料)OECD Health Data 2013 - Frequently Requested Data
    • Physicians, Density per 1 000 population (head counts)
    • Nurses, Density per 1 000 population (head counts)
  • URL)http://www.oecd.org/els/health-systems/oecdhealthdata2013-frequentlyrequesteddata.htm

<文責:山田哲司>