パプアニューギニア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航前:PSP概要」

PSPは、国連フォーラムのスタディ・プログラム幹事と、過去スタディ・プログラム参加者によるタスク・フォースが訪問国、渡航滞在時期、訪問テーマを決定し、参加者の募集と選考を実施した。今年度は『島嶼国パプアニューギニアから考える「国際協力」の意義・役割とは?~自然と人間の「分断」と「共生」』をテーマとし、2018年5月から2019年3月までの期間において、選考を通過したメンバーと合わせて37名で渡航の準備や研究活動を行った。

プログラムでは、1年間を通して渡航前、渡航中、渡航後の3段階に分かれており、メンバーはそれぞれタスクに基づいた班に所属しながら、プログラムの企画や研究、広報活動などに取り組んだ。

1.訪問国決定の経緯

2018年1月にタスクフォースが結成された後、渡航国選定のプロセスに入った。例年と同様、タスクフォース・メンバーが各自渡航候補国を提案し、全体で議論を行った。その際には、(1)国連をはじめとする国際協力のプロジェクトが活発に行われているか、(2)外務省が発表する海外安全情報において、レベル1「十分注意してください」以下であるか、(3)渡航費を一定程度安価におさえることができるか、(4)「2018年」に渡航する意義のある国であるか、などを基準とした。

中東、アフリカ、ラテンアメリカなど世界各国が候補として挙がったものの、上述の基準や言語の問題(国連のウェブページや報告書が英語で記載されているか)などを踏まえて検討し、最終的には、パプアニューギニアおよび南アフリカが最終候補として残った。この2カ国を議論をした結果、(1)パプアニューギニアと比較して南アフリカは治安状況が懸念されたこと、(2)パプアニューギニアはスタディ・プログラム初の島嶼国およびオセアニア地域への渡航となること、(3)自然が豊富なパプアニューギニアとしての特徴からこれまでスタディ・プログラムが直接に対象としてこなかった環境問題へアプローチができること、(4)2018年11月にアジア太平洋経済協力会議(通称、APEC)が開催される予定であったこと、(5)直行便の存在、などからパプアニューギニアへの渡航を決定した。

なお候補国選定時には、治安状況のリサーチが十分でなく、結果的にPSPは渡航費が例年と比較して高額になってしまった。この点は反省点である。

2.参加メンバーについて

PSPを構成するメンバーは、大学生等の学生や元世銀職員、医療従事者、研究者、会社員など多岐に渡る。参加者の属性は以下の通りである。

<PSP参加者属性>

(1)性別 : 男性10名、女性23名 

男女比率

(2)職種 

属性分布

(3)人数・居住地 

合計33名がPSPに参加した。居住地域は関東が多かったものの、関西・北海道・海外と様々な地域からの参加者が存在した。なお、渡航者はそのうち31名だった。

関東関西北海道海外合計
参加者数20名7名4名2名33名
居住地割合

※アドバイザー4名は含まない。

3.研究活動・関心事項

PSPでは、メンバーそれぞれの専門性や興味関心に基づいて、いくつかテーマを設定し研究活動や訪問機関選定などの渡航準備を行った。参加メンバーの関心事項の集計結果は以下の通りである。

<関心事項>

関心事項の割合

この関心事項を参考に、以下の4つの軸を設けて学びを深めた。

環境と持続可能な開発

パプアニューギニア(以下、PNG)は、液化天然ガスなどの天然資源が豊富で、世界で6番目に生物多様性に富んだ国と言われるほど動植物等の固有種も数多く生息している、非常に自然豊かな国である。一方で、これらの豊かな自然や環境保全の問題は深刻であり、企業や政府による環境負荷の大きな開発や、現地住民による環境が考慮されない生活などの現状から、環境へ配慮した持続可能な開発の可能性について学んだ。

Basic Human Needs

Basic Human Needsとは、1970年代にILO(国際労働機関)によって提唱された、人間が生きる上で必要不可欠な物質的サービスや財についての概念である。PNGは、道路などのインフラの整備や、水や保健など公衆衛生へのアクセスに関して非常に深刻な課題を抱えており、これらの課題は、地理的要因や政府のガバナンス、財政の脆弱さに起因していると考えられている。勉強会ではPNGの人々にとってのBHNは何かについて学びを深めた。

教育とジェンダー

PNGでは、女性や子どもに対する暴力の問題が最も大きな問題の一つとなっており、国内の女性の7割が性的または身体的な暴力を受けた経験を持つと推測されるほど、女性蔑視の価値観が未だ根深く残っている。また、教育に関しても女児の教育アクセスの課題や退学率の高さ、教育の質の欠如など問題は山積しており、PSPでは国の発展や女性への価値観の変革としての教育の役割について深く議論した。

民族・文化・言語

PNGの最大の特徴は、800以上の部族が共に生活し、それぞれの部族が持つ独特の文化や言語の多くが残っている点であると言える。しかし、これらの多様な部族の文化的背景によって起こる課題も多く、部族間による土地紛争や伝統社会に基づく開発課題は、PNGの治安や人々の生活に大きく影響している。研究では、社会の変化の中で人々の生活を改善しつつ、伝統や文化の多様性を尊重した開発のあり方とは何か考察を行った。

4.その他の特記事項

PSPでは、PNGの課題や国際協力の意義についてより多くの方と学ぶべくスタディ・プログラム初の試みとして、クラウドファンディングを実施した。実施理由は以下の2点が挙げられる。

PNGにおける開発課題や国際協力についての学びをPSP参加者のみの共有に留まらず、より多くの方と共有することで、より学び合いより深い議論を行うため。

首都をはじめとして全国的に非常に治安が悪く、リスク管理の観点から治安や移動、滞在に関する費用が高額であり、安全で充実したプログラムを現地で遂行するため。

クラウドファンディングは、Readyforのサイトを通じて 8月23日から9月14日まで実施し、様々な方の協力により約104万円のご支援を寄付して頂くことができた。