パプアニューギニア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航前:リスク管理及びロジスティクス」
1.PSPのリスク管理体制について
各メンバーが必ず1つ以上所属して運営に携わる企画班、研究班、広報・交流班とは別に、希望者からなるリスク管理班を設けて、渡航にかかるリスク管理に努めた。さらに、リスク管理班を役割に応じて保健チームと危機管理チームの2つに分けた。
保健チームは、参加者のうち、医療従事者、関係者を中心に活動した。渡航前には現地で外国人がかかることのできる病院の情報や、罹患のおそれのある病気の情報を収集。また、予防接種や内服薬の情報を全体に周知し、現地で何かあった際に使う保健セットの整理確認や補充を行った。渡航中は参加者の健康管理に中心的な役割を担った。
危機管理チームは、PNGの治安に関する情報を収集し、想定されるリスクと対応策を記載したリスクシナリオを策定。それらの全体への周知を行った。また、海外旅行保険加入状況の管理や、その他現地渡航に係るリスクの管理と判断を行った。渡航直前には、治安関連を扱う勉強会の開催を検討した。
2.渡航中および緊急事態発生時の対応の要点
現地到着後、SIMカードを取得した参加者の電話番号を共有し、Wi-Fi環境がない場合に備えて、地方訪問中にも連絡がつながるようにした。また渡航前半はポートモレスビーとラバウルに分かれて行動したため、できるだけこまめに連絡を取り合った。複数班に別れるときは各班に連絡担当、保健チーム、危機管理チームのメンバーを配置して緊急時に備えた。
緊急事態発生時に起こりうるパニックを避けるため、緊急時には海外渡航の経験が豊富な数人に最終判断をゆだねるなど、冷静な対処ができる体制を整えた。事前に渡航するメンバーの緊急連絡先情報を収集し、万一の際に備えて日本に残留するメンバーにも協力を依頼した。
ラバウルに渡航したメンバーが、ポートモレスビーに戻るフライトの前に体調不良となったが、事前に病院情報を収集し、かつ、ポートモレスビーに残留したメンバーと緊密に連絡をとりあったことで、ポートモレスビー到着直後にスムースに病院に行くことができ、重症化を防げた。
また、軽いケガなどを負ったメンバーが何名かおり、持参した保健セットが活躍した。
3.渡航を終えての反省
まずは大きな事件、怪我無く帰国することができてよかった。今回はかなり入念にリスク管理を行ったことで、大きなトラブルもなくスムーズにプログラムを進めることができた。パプアニューギニアはこれまでのスタディプログラムに比べても、治安等の面からリスク管理をしっかり行う必要があったので、今回の経験はこれからのSPに役に立つと思われる。
ただリスク管理の観点から、自由行動が難しく、現地の住民の目線からパプアニューギニアという国を見る機会は少なかったといえる。そのため私たちが現地で実際に見たものは、その多くが国際機関や日本の目線といった外部から見えたことであった。私たちが得た情報が偏っているということは、パプアニューギニアについて議論するうえで、常に意識しておかなければならない。
4.訪問機関に対するロジスティクスの流れ
まず初めに、リスク管理班が外務省のHPや在留邦人の方から得た情報などを参考に、治安が特に懸念されるエリアの特定を行った。それらを考慮しながら、参加者へのアンケートを元に訪問機関や滞在宿泊先を選定し、移動手段、移動経路などのロジスティクスを決定した。リスク管理や移動時間の観点から、最小限の移動で効率的に訪問できるように工夫した。
また決定プロセスの中で、現地に住んでいる、もしくは住んでいた日本人の方に滞在施設や移動手段の助言をいただいたり、治安情報や現地の病院情報など訪問機関の方にもご協力いただいた。
ロジスティクスに使用したマップ