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第19回
政務局における紛争予防
と平和構築の役割

梅津 伸 氏
国連政務局 政務官

第18回
紛争と開発
黒田 和秀 氏
世界銀行

第16回
日本外交における人権
鈴木 誉理子 氏
外務省
第15回
MDGsの現状と
UNDPの政策について

西本 昌二 氏
国連開発計画

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第21回 2006年4月27日開催
於・東京大学

東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障プログラム」/
平和構築研究会/国連フォーラム 合同勉強会


「スーダンの現状とスーダン国連事務総長特使の
スーダン和平への取組み」
小野 京子 氏
国連プロジェクト・サービス機関東京事務所
(United Nations Office for Project Services Tokyo Liaison Office)所長

 

質疑応答

 

■Q■ ジャンジャウィード、 SLA 、 JEM および政府の関係は?   

■A■  オペレーションについて言うと、空からの襲撃はスーダン政府。ジャンジャウィードのリーダーの一人も政府から支援を受けていると言われている。またバシル大統領から離脱したトゥラビが、 JEM を支援していると言われる。スーダン政府軍の40 %か50 %がダルフール出身と言われている。


■Q■ 資源、宗教、権力闘争などのうち、紛争の主要因は?また主要因はどう他の要因とからんでいるか?

■A■  図式化は難しい。マージナライゼーションが背景にあると思われる。南部に石油資源が出るが、利益の分配は行われていない。

 

■Q■  どのようにステークホルダーを交渉の場につかせるのか?交渉に至るまでの過程は?ミドルマン?

■A■  反政府軍の中でも交渉したい人たち、継続して戦いたいと思う人、色々。たとえば、Bejaに対してはエリトリア政府の影響力が大きい。Beja Congressとアポをとるとき、エリトリア政府に頼んだ。まず特使はエリトリアの説得を行った。 3 回ほどエリトリア大統領とも交渉した。その後大統領からBejaを交渉の場に付くよう説得してもらった。


■Q■ 南北和平を優先するため、ダルフールについてスーダン政府に圧力をかけにくかった。今後、どのようにダルフールについて対応していくか?見通しは?

■A■ 難しい。ダルフールの政治交渉、 AU がメディエーターというマンデートあり。国連はそのアシスタントを行なってきており、それを続けるしかない。人道支援については、国連が主導権を持っている。国連軍が展開された場合、援助関係者のセキュリティをどう確保するかが問題。

UNMIS は国際刑事裁判所( ICC )とは距離をおいている。そうでないとダルフールで働いている国連関係者がセキュリティ上危ない。

■Q■ AU 軍は限られた勢力で守りきれていない。国際社会がコミットメントしていくため、何ができるか?

■A■ スーダン政府が国連軍を拒否している。スーダンの世論として、国連軍と米軍とを同一視している。イラクと同じになるのではないか、という危惧。少なくともプロパガンダとしてそういう見方が流れている。

国連軍の展開(今でも南北の 1 万兵の展開が終っていない)やファンディングを国際社会ができるか。また AU 軍をすんなり地元民は受け入れたが、国連軍はどうか。懸案である。


■Q■ チャドの難民を受け入れないと言っているが、難民受け入れできないことが国連難民高等弁務官事務所( UNHCR )のオペレーションをどのように難しくしているか?

■A■ (会場参加者からの回答) 1991 年、クルド難民の危機を思い出した。トルコは受け入れ拒否した。オーソドックスにはトルコ説得、または第三国裁定。緒方さんはイラクでの受け入れを推した。

なぜ 1991 年にはそれができたか。1.安保理。人道と安全保障を分けて考えていたが、緒方さんは安全保障から議決をもらって解決した。2.多国籍軍のアメリカに治安維持を要請できた。3.主権国家イラクの許可を得た。

これら 3 点とも今のチャドでの難民にはない条件。緒方さんが言うように、人道問題は人道的にはできない。政治的解決を必要とする。 UNHCR だけで対処できない。


■Q■ 日本の PKO をアフリカに派遣するかどうかについて、将来の話になると思うが、何を期待するか?

■A■ 自衛隊のスーダン南部への派遣までは提案しない。 LRA の関与を考えると、不安定な地域であり、難しい。一般論として、中立性、宗主国関係のなさ、中国のような資源外交・利権がない、そういう点で日本に入ってきてほしいとスーダン政府関係者から聞かされた。スーダン側から懐疑心を持たれないのが長所。後方支援は強いと思うので、スーダンで活躍できるのではないか。ダルフールへの PKO 派遣はありえないと考える。


■Q■  日本への期待、国際社会への関心の喚起という話があったが、スーダンは日本の一般の人にはまだ認知度が低い。普通の人に関心を持ってもらうために、提案はあるか?

■A■  広く知ってもらうには、メディアが重要。アフリカから帰国するとアフリカ関連の記事が少ないことに気づく。アフリカ駐在記者が 1 、 2 名という現状。ことあるごとにメディアにアピールしていきたい。アフリカ・デイというようなイベントもよい。そういうところで工芸品を展示したり、スーダンのピラミッドを紹介したり、とっかかりにしやすいものから知らせていけばいいのではないか。


■Q■  アフリカと日本との距離を感じる。 JICA は復興支援として行政官養成などを行っている。日本の紛争に関する中立性などは理解されていると思うが、復興支援に際しての日本のシステムやよいところは理解されているか?復興支援に日本はどうかかわっていくべきか?

■A■  南南協力、構想としてはあるが、実態としてはまだ。日本の特徴はこつこつ、地道にやるシステム。アフリカにはそれが欠けていて、見かけがよければと思っているように感じる。日本のよさをアフリカに伝えることは必要と思うが、時間がかかると思う。



■Q■  独立を問う住民投票の見通しは?選挙後の治安は?国連ではどのようにネガティブシナリオに対処すべきか?

■A■  国連の立場からは、 2005 年 3 月の安保理決議にもあるように、を国連は「国家統合を支援する」ことが明記されている。南部政府の行政能力支援をするが、あくまで統一を前提とする。一方現状では南部は分離派が多いと思う。ただし国家として自立していけるか、姿が描けていない。選挙後、半年から 1 年、安定するまで国連がいるだろう。

ぎりぎりまで統一することを前提として国連は動く。分離が避けられない場合、直前にその場合の対処を計画するだろう。スーダン政府への配慮もある。


■Q■  仮に選挙で分離になった場合、南部の資源に対する北部政府からのアクセスはどうなるか?

■A■ 包括的和平合意( CPA )の文言を覚えていないが。今は 50 ・ 50 となっている。ただ現在でもどれだけ南部政府に石油の収入等が渡っているか公開されていない。しかし、米国は知っているといわれる。仮に選挙で南部が分離することになったとしても、包括的和平合意の文言は北の政府に不利になるようなものではないと思う。


■Q■ LRAは北部スーダンからの援助がなくなってしまい、さまよい、また拡大していると言われるが、この件についてスーダン政府にどのようにアプローチしているのか?

■A■  今でもスーダン政府が LRA を支援していると言われる。 LRA はいま 500 名と想定されている。 DRC にいる PKO は武力行使可能。スーダンの PKO にはそのマンデートがない。 UNMIS としては LRA に武力で対処するすべがないが LRA は国連や NGO の活動に security risk であり、ジレンマである。


■Q■ 現在までのダルフールでの被害はどうなっているか、また実際に被害を見たことはあるか?

■A■  昨年2005年11月以降、被害は拡大しているのではと思う。私が見たのは、ダルフールの町が焼かれたあと。特使と行った。釜も黒こげ。住民が戻ってこないように、徹底に攻撃していた。現在は国連職員が入っていけない区域が拡大していて、国際社会に報告されていない被害が拡大していると思う。国内避難民は165万人(2005年12月)。

【UNHCR駐日事務所による追加情報】
ダルフールにおけるUNHCRの援助対象者数、2006年1月現在

西ダルフールの国内避難民
657,000人
出身村落に戻った避難民
10,000人
帰還した元スーダン難民
10,000人
西ダルフールのチャド難民
5,000人
 
合計 682,000人

国境の治安状況が悪くなると同様に新たな避難民の動きも予想され、少なくとも10,000人のチャドからの難民、さらに80,000人のスーダン難民がダルフールに流入すると想定される。


■Q■ AU軍のセキュリティオペレーションはどのようなものか。

■A■  AU軍、6,000名の規模。役割の一つとして警察。キャンプ周辺のモニタリング、住民への安心感を与えること。第二に停戦合意のモニタリング。実際キャパシティは少ない。AU軍としてPKOを経験してこなかった。レポーティングラインの難しさもある(AU本部のエチオピア、ハルトゥームのAU特使の事務所、ダルフール北部のAU軍指令本部の3者間で)。最近はレポーティングラインはだいぶ改善された。


■Q■ 現場にいて、問題を解決できるのか、これでいいのか、などの葛藤があったか、またそれにどう対処したか。

■A■  補佐官の仕事は特使を通してスーダンを支援する仕事。食料を配るなどといった場合と違って現場で直に効果を感じることが少ない。役に立っているのか悩んだ。その中で自分にできることをやろうとした。特使が役割を最大限に果たせるように仕事をしようとした。その中で、安保理へのダルフールの月次報告書のドラフティングは一つの重要な仕事のひとつであった。スーダン政府、ダルフールの反政府軍へ政治的圧力をかける為に重要なものであり、どれだけ中立・公平にものごとを提示できるか、腐心した。それが自分なりの葛藤への対処であった。


■Q■ 2006年4月22日、アルジャジーラが放送したアルカイーダのビデオでスーダンにも言及があった。ビンラディンのスーダンに対する聖戦への呼びかけをどう思うか?

■A■  スーダン政府が反論のステートメントを出した。ビンラディンとスーダン政府とは関係ない。したがって、あまり影響がないのでは。スーダン政府は、テロ情報をアメリカに流しているなどアメリカと国家安全保障上、密な関係がある。


■Q■ スーダンの今後の展開を見ていく際のポイントは?

■A■  南北和平の合意の実施がスケジュールどおりに進むかどうかがキーになる。南北政府間の猜疑心が高まると、逆戻りがありうる。ダルフールに注目がいってしまうことが多いと思うが、南北の緊張も重要。


■Q■ スーダンへの国際社会の関与として、日本以外にどのようなアクターがいるか?

■A■  アメリカ、英国、ノルウェーがキープレーヤー。アメリカはジェノサイドと言った。アメリカ国内の人権NGOの力が強い。英国は宗主国。ノルウェーは南部への支援を内戦中から積極的に行なってきた。経済支援が大きい。ノルウェーがドナー会合をホストしたこともある。


■Q■ 国内避難民の支援には多くの国連アクターがかかわっていると思う。機関間調整はどう行われているか。事務総長特使の役割は?NGOとの連携は?NGOはフレキシブルだと思うが。

■A■  国連機関内調整は難しい問題がある。PKOが展開されると、特使がスーダンにおける国連活動を統括して、Agency間との方向性も打ち出すがPKOがいなくなると特使もいなくなる。その為、国連AgencyからのPKOに統括されることへの抵抗が強く、自分達で独自に活動出来てしまう機関は自立的に動いていた。普段のAgency間の調整はUNMISのDeputy SRSGであり、UNDPのResident Coordinatorを兼任している。

NGOと国連との連携はOCHAが行っている。NGOは国連、とくに国連軍と距離を置きたい。

安全確保については、特使が国連職員全員のセキュリティ確保のマンデートを持つ。どこで国連が活動可能かの最終判断を行う。


■Q■ アフリカの報道が少ないという点。わかりやすくないものは報道から敬遠される。将来のあるべきビジョンに対して、現状はこう、などざっくり乱暴なくらい単純化したほうが、メディアは取り扱いやすいのではないか?

■A■  アクターの仕分けについては、今日は限定して、ある程度簡素化してお話したつもり。これ以上単純化するのは難しかった。スーダンの件、そこまで報道しにくいか疑問に思う。人道問題とか大量虐殺とか、キャッチフレーズがあるような気がする。

大使館、大学研究者、国連職員、記者など、積極的に取り上げることができるのでは。

 

以上

担当:中村

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