サイト内検索



第28回
人間の安全保障:概念の発展と実践
田瀬和夫さん
渡部真由美さん
OCHA人間の安全保障ユニット

第27回
国際開発研修
藤村 建夫さん
国際技術研究所(ITI)上級経済研究員 他
第26回
安全保障理事会の役割と課題
川端 清隆さん
国連政治局安全保障理事会部


第25回
平和構築の時代
星野 俊也さん
国連日本政府代表部

第24回
安保理における政治力学
松浦 博司さん
国連日本政府代表部

全タイトルを見る⇒
HOME勉強会第29回 > Q & A


「平和構築分野の人材育成構想」

坂田奈津子さん
外務省総合外交政策局国際平和協力室 首席事務官

2006年12月15日開催
於:国際交流基金ニューヨーク日米センター


質疑応答

■Q■「寺子屋」では、どういう人を受講生の対象として念頭に置いているのか。また、受講期間の長さは。

■A■
受講者の対象も期間の長さも現段階ではまだ未決定である。ただ、どういう形であれ、何らかの実地の経験がある人に来てもらいたいと考えている。政府としては本事業を実際の成果に結び付けたいので、結果が出せる人という意味で、経験がある人が、この分野に真剣に身をおこうとしていることの目安として、優先されるだろうと考えている。受講期間の長さについては、リソースとなる人間がどこまで集まるか、ということにもよる。現在実際に仕事を持っている人が参加するのに現実的な長さでなければならない。この点、海外の研修機関では、(文民の参加のしやすさという観点から)数週間としている例もある。将来的には、現職の社会人も一層受講しやすいように、短期と長期と分ける等工夫も考えられる。

■Q■「寺子屋」の対象層は、何らかの(フィールド)経験があることがより有利になりうるとのことだが、経験のない修士号取得したての学生も対象として欲しい。どうこの世界に入ればいいのかが分からない場合もある。また、インターンに応募しても、無給と言われると腰が引ける。

■A■
広く国民に周知して、いろいろな人に門戸を開きたいとは考えている。費用について詳細はまだ未定ではあるが、象徴的に徴収することも排除されない。政府としては、具体的成果につなげるため、ある程度実績や能力のある人、さらには自分が投資をしてでもやりたい、という意欲を持った人を後押ししたい。国際競争は厳しく、また厳しい職務環境での活動でもあり、そうした中でも残っていけるだけの能力と強い意志がある人が望まれる。

■参加者からのコメント■
■ JICAの国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)では導入研修から中級研修、座学から実習までかなりそろっていて、参考になると思う。医療分野では文科省や厚労省に育成の知見やリソースがあり、例えば文科省から大学に研究費を渡せば育成につながるし、地方自治体に所属する医療関係者をプールしこれを広げる余地がある。実践を重視するという点に関して言えば、日本が独自のミッションを作ってしまって、国連のミッションに送りながら人材を育成するという方法もあるのでは。JPOではなくてもインターンとしてでもいいので、1〜3ヶ月でもとにかく現場に派遣するといったように。

■ また、「平和構築に関する人材育成」というとやや広く、どのレベルを対象に、どこまで育成するのかが難しいような気がするが、保健医療に関しては、2泊3日の導入研修ではそこそこの知識と技術は身につくが、それだけではまったく足りないので、経験豊かな人と国際緊急援助隊医療チームで出動してもらい、場数を踏んでもらうことと、中級研修でさらに継続的に知識・技術を身につけてもらうということをしてもらっている。自然災害に比べて、人道支援はもっと複雑で難しいので、研修にはさらに時間をかける必要がある。すべてを面倒みることは不可能だが、「平和構築で必要な人材像」をつくり、そのキャリアパスのどの部分を人材育成として政府が面倒みるのか、手助けするのか、方向性をつけてあげるか、RoadMapやChartのようなものをつくるといいかもしれない。

■ また、入り口の部分でGeneralまたは横断的(Cross cutting)に知っておくべき知識・技術と、専門的・Professionalなものとを分けながらも、どのように組み合わせるかも重要だと思う。難民支援に関わっている医療者の中には、平和構築の概念、そのプロセスといった一般的なことを知らない人もたくさんいる。逆に、内戦後の選挙管理などに従事される人でも、熱帯地方の感染症、自分のメンタルヘルス管理方法などについては知っておかないといけない。

■ このように、専門性に関わらず平和構築として知っておくべき知識・技術と、関わる業務によって必要とされる専門知識・技術とを分けておく必要があると思う。また、人間性、人間関係、チーム意識といったPersonalな部分も重要。紛争後の劣悪な環境下で働く場合、個人の能力よりも人間性や協調性の方が重要なことがある。JMTDRの導入研修では、能力があっても人間性に問題がある場合、それをチェックして、派遣しない場合もある。これは、活動に問題を生じるだけでなく、他のチームのメンバーの精神衛生上の問題も起こすからである。治安その他でリスクがある場合、他人の命に関わることもある。

■ したがって、研修ではProfessionalのみならず、Personalな部分についても人道支援・平和構築に向いているか、協調性があるか、どうあるべきかなどについて考え、評価する機会もあったほうがいいかもしれない。UNICEFでは、P2Dという研修をしている、これはProfessiona X Personal Development、すなわち、その人間のPerformanceとはProfessionalの能力だけで決まるものではなく、Personalが重要。でもそれはProfessional+Personal ではなくて、Professional XPersonal。総合力は足し算でなく掛け算で決まってしまう、というもの。紛争直後の初期調査では、関係する重要セクターの専門家を含めた複合チームを派遣するのがよく、平和構築の様々な場面でも、チームワークが重要。この辺の要素も人材育成で配慮するとよいと思う。

■PKOはますます広がっていくので、何ができるかについて、中長期的に取り組む必要がある。邦人職員数の少なさについても相当前から問題視されているが、これまで大きな成果が見られていない。これは、どういうカリキュラムをつくるかにもよるが、「寺子屋」を共通の戦術を学ぶ場としていったらどうか。対象者については、共通要素もあれば、専門性を持つ人材をいわば玉石混淆に取り込むこともあり得よう。平和構築に関連する仕事は多様なため、受講生はさまざまな専門性を持っている人を受け入れて、この「寺子屋」を通じて受講者の同郷意識を涵養し、仕事のリレーができる関係を築ければよいのではないか。日本人だけでやる展開には限界があるので、本構想がまさに前提としているように、アジア共同体に根っこがあるような仕組みにするのはよい。

■実践の観点からは、例えばUSAIDは国連と組んで評価を行うことがあり、日本も独自にやるだけでなく他アクターと協調する経験を積むとよい。また、JPOのみならずインターンにより経験値を上げることができる。要はOJTの要素をどう組み込むかによる。強い意志をどうつくっていくかという点も重要であるが、意思や価値観は現場に行って実際の問題に接することでさらに強くなるという側面があると思う。その意味でも現場の経験は重要。

■国連職員の人々の大多数を見ると、キャリアパスは自分で見つけて入ってきている。国連職員のキャリア・パターンの分析をしてみたら有用ではないか。

以上

議事録へ

 

担当:石塚


HOME勉強会第29回 > Q & A