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「高まる国際組織(改編)への期待〜ダボス会議報告〜」
藤澤 秀敏さん
日本放送協会(NHK)アメリカ総局 総局長

2007年2月16日開催
於:ニューヨーク日本政府国連代表部会議室
国連邦人職員会/国連日本政府代表部/国連フォーラム共催 合同勉強会


質疑応答

Q 参加者はどのように募るのか。招待ベースか。

A 企業は、主催団体に会費を払い参加する。その他は招待ベース。ヨーロッパ、北米、その他中東・アジア・アフリカ等からの参加者が、それぞれ3分の1ずつ。

Q グローバリゼーションの中で、これまでの経済中心・お金儲け中心から、国連憲章の精神でもある人権、平和などの価値観が重要になってきている。会議でも、このような価値観の移り変わりが反映されていくのでは。

A 利益追求、リッチになることだけが価値観ではなくなった。温暖化など地球規模の問題に地球船に乗っている皆が取り組む必要があるという意識が、底流に広がっている気がする。メディアは、そのような変化や地球規模の問題を伝えていく役割がある。

Q NHKをはじめ、日本のメディアはダボス会議についてどのように報道しているのか。

A ここ数年、段々と関心が高まってきている。NHKではニュースとしてブレア首相の発言を含めて数回放送した。BSでは、2月に100分間の特集番組を放送した。新聞でも、ニュースや特集の記事が出ている。但し、日本の首相レベルでは、森元首相が参加したのみだ。国会の開会中だということもあり、政治家の不在が会議のプレゼンスを日本で高めていなかったが、重要性は徐々に認識され始めている。緒方貞子さんはこのところ毎年のように参加している。日本人が国際社会の一員として積極的に発言していくことが重要だ。

Q 公式、非公式な場面で日本に対してどんなことが期待されているか。

A 日本経済について、関心が集中している。セッションとしても取り上げられる。90年代からのデフレの時期は関心が薄れたが、2,3年前から日本のプラス成長で期待も高まり、日本関係のセッションへの参加者も増えている。他の面での期待は、直接的には見えてこない。日本経済や日本の国際貢献の重要性は皆わかっている。

緒方さんは、ダボス会議でもよく知られ、尊敬されている。単に日本の立場をいうのではなく、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で世界的に活躍し、物事を現場レベルでよく理解している。参加者皆がご意見に納得し、拍手する存在感がある。

Q シビル・ソサエティの影響力、役割は。また、非西欧のシビル・ソサエティからの参加の程度は。

A 大多数を占める企業の経営者に、貧困、環境、人権等の問題について教える立場として、シビル・ソサエティの人々は参加している。世界の問題が企業活動に直接影響を与えている、という背景がある。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのほか、バングラデシュ・グラミン銀行のユヌス総裁も参加している。アフリカや中東からも、様々な市民団体が参加している。

Q ダボス会議の性質はどのように変わってきたのか。また、今年初めて、緒方さんの提案で援助のセッションが設けられたと聞いているが。

A 参加し始めて5年になる。2000年前後にはグローバル化に反対するデモがあり、その中で、ダボス会議は企業経営者が自分たちに都合がよいグローバル化を進めようとする組織じゃないか、という批判があった。それへの反省もあり、様々な立場の人に積極的に参加を呼びかけるようになった。この5年間だけでも、シビル・ソサエティ、宗教界などからの参加が増えているのを感じる。もうひとつ、2001年の同時多発テロは、世界的な問題に皆が積極的に対処していかなくてはならない、という機運を生み出した。翌02年は、ニューヨークで同会議が開催された。

援助のセッションは毎年ある。今年はアフリカの開発支援についてのセッションに、緒方さんや各国の首脳級が出席し、相当な注目を集めた。そこでは、現場のキャパシティーをどう作っていくかが話し合われた。例えば、ジンバブエの医者は南アに行き、南アの医者はイギリスに向かうなど、先進国が発展途上国の医療従事者を吸い上げている、という問題がある。また、支援企業同士での調整も問題になっている。

Q 企業がCSRの一貫としてではなく、本業として地球規模の課題に取り組むようになってきたとのお話だが、途上国の経営者にもそのような機運はシェアされているのか。

A 基本的には先進国の大企業の人たちが取り組み始めたということ。地球規模の問題が、自分たちの経済活動に影響を与え始めているという危機感が背景か。中国やインドなど発展途上国の企業家の意識は、まだそこまで至っていない。まずは自分たちの企業の拡大、組織作りが優先のようだ。

Q セッションの公開度合いは。また、永田町やワシントンDCでは、物事が決まるのは夜というイメージがあるが、ダボス会議のナイトライフの実態は。

A 計200以上のセッションを、コンベンションセンターと、周辺のいくつかのホテルを使って実施している。会員はどれにでも参加できるが、基本的にはオフレコで、ほとんどが非公開。芸術家、慈善団体、ウェブ関係者のみが集まるセッションもある。私は仕事の都合上、4日間で傍聴できたのは10程度。興味があるものすべて出席しても、恐らく20〜30程度が限界だろう。

これとは別に、企業同士で商売や合併の打ち合わせ、取引をやることもあるようだ。寒いので、ナイトライフはそこまで盛んではない。企業が主催したパーティーに出席し、早めに寝て朝8時半からスタートするセッションに備えるというのが通常。最終日にはコンサートがあり、パーティーで踊り明かす人もいるが。

Q 企業と国際機関との連携を高めるための具体的な方法は。

A それを皆さんに考えてもらいたい。企業や財団は、独自の方針で宣伝効果を考えながら支援をする。地球規模の問題に、様々な団体が連携し、効果的に資金やマンパワーを導入していくことが大事で、その促進が国際組織の仕事でもある。例えば、アナン前事務総長は、企業も招いてエイズ対策を話し合う国際会議を立ち上げた。そのような形で協調を促進させ、現場のキャパシティーを高めていくことが国際組織の役割。企業や財団でも地球規模の問題に取り組む意識が高まっているので、ネットワークを築き、共通の目標に向かって進むことが大事だ。

Q 会議の機能についてだが。会議で定められた方向性が、どのように実現・実行されていくのか。

A 具体的に目標や次の行動を決めるという会議ではなく、意識変化を生み起こす場所だ。政治問題では重要な出会いがあり、その後に影響することもあった。パレスチナとイスラエルの代表がこの会議を名目に来て、秘密裏に和平案をまとめたこともある。今年も、イスラエルのリブニ外相、ペレス元首相、そしてパレスチナのアッバス議長が参加し、いろいろな問題について話し合った。また、企業は一種のブレインウォッシュをされて帰っていくので、経営方針のなかに新しいものが芽生える、ということはあると思う。

Q 温暖化などの環境問題について。トップ企業だけではなく、ローカルの企業にも、どう取り組みをさせていくか、話し合いはあったか。

A ロイヤル・ダッチ・シェル、エクソン・モービルなどから、石油依存の体質をどう変えてバイオエネルギーの開発に取り組むか、という話があった。温暖化などグローバルな問題に大企業は関心を高めている。但し、ローカルにまで浸透するまでに時間がかかると思うし、ローカルとグローバル(企業)の利益衝突はあると思う。

トップで意識変化が起きているということは重要だ。どうやって経営の中に、次の活動にこの会議を生かしていくか。刺激を与えてくれる場所としての会議の役割が高まってきている。

以上

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議事録担当:山岸 写真:林


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