国連開発計画(UNDP)エネルギー・環境グループ 地球環境ファシリティー
Technical Specialist/Asia Portfolio Manager
2007年3月5日開催
於:ニューヨークUNDP FFビル
国連フォーラム勉強会
(Q) GEFの活動の柱、例えば気候変動と砂漠化は、お互いに関連しあっているが、何故独立しているのか。
(A) 資金の流れとして、そのように分けているが、プロジェクトの作成や実施段階でお互い連携している。
(Q)UNDPが行っているMitigationは、温室効果ガスの排出量が多い先進国も対象としているのか。もしくは途上国への技術協力なのか。
(A)UNDPでのMitigation分野に関する活動は、 途上国の取り組みに対しての政策上の支援である。
(Q)UNDPと米国の関係はどうなっているか。
(A)UNDP-GEFチームには米国人スタッフも多くいる。またGEFは多くの拠出金をアメリカからえている。これからの米国政府の気候変動に対する取り組みに多いに期待したい。
(Q)GEFが多くの拠出を米国から得ているというのは意外(これまで気候変動問題には決して積極的でなかった) 。GEFはどのような法的枠組みでできているのか。
(A)米国は京都議定書には批准していないが、UNFCCC自体については批准している。京都議定書の未批准をめぐっては、米国が気候変動問題に後ろ向きであるとする評価があるのはご存知の通りである。一方、GEFは1992年に開催された地球環境サミット(国連環境開発会議)におけるリオ宣言によって設立され、気候変動枠組み条約のみならず、生物多様性に関する条約(UNCBD),
砂漠化防止条約(UNCCD) のための活動を指示しており気候変動に限らない機関である。GEFは意思決定の組織として独自のカウンシルを持っており、カウンシルメンバーはアメリカだけではなく各国メンバーによって構成されている。
(Q)現地コミュニティのサポートを行う際、地元の人たちとの軋轢等はないのか?例えば文化、社会的な問題など、現場ではいろいろ出てくると思う。
例えば、温暖化対策として焼き畑を禁止しても、それがそのコミュニティに長く続く風習であった場合には結局元に戻ってしまっているケース等があると聞いている。また、他の組織との連携における問題点は。
(A)コミュニティの文化や特性によって地元との問題が起きるという可能性は常にある。しかし、プロジェクト作成は基本的に当該国が行い、UNDPはそれを支援する役割。よって、文化的・社会的視点を反映させた実行可能性の高い枠組みを用いているものと考えている。他機関との連携に関しては、実際のところ、非常に限られている。そのような状況を打開するために、各国各組織は様々な活動を実施している。例えば、以前担当したベトナムの森林保護ではベトナム政府の指導のもと、
ドナーが連携を強めるための合意書を締結。整合性をとる努力を行っているが、課題はまだ多い。最近では、国連改革の流れの中で、UNは、これらの問題を解決すべく、ベトナム、パキスタンなどを含む国々でOne
UNのテストケースを行っている。
(Q)国境をまたぐ取り組みはどうなっているのか。
(A)国境をまたぐ問題は少なくはない。 必要に応じて、国別ではなくリージョナルプロジェクトを作ることもある。特に、UNEPはリージョナルプロジェクトに力を入れている。ただ、国境を超えることによるオペレーション上の管理の難しさもあるのも事実。
UNDPの多くのプロジェクトは国単位である。
(Q)UNDPの取り組み中のAdaptationに対してお金を出している基金というのはGEFの他に何があるのか。
(A)Adaptationについては SCCF(The Special Climate Change Fund:特別気候変動基金)、LDCF(Least
Developed Countries Fund:後発開発途上国基金)がある。今後、Adaptation Fund(CDMの利益の2%が当てられ、CDMが上手く動いた場合は、このファンドが一番大きくなると言われている)が動き出す予定である。GEFは利点もあるが、問題点も多い。例えば(1)
実際に資金が供給されるまでに時間がかかること、(2) プロジェクトデザインが複雑であること、などがあげられる。
(Q)1996年の京都議定書後の10数年の変化をどのように感じるか。
(A)気候変動問題は、地球環境サミットが開催された1992年には盛り上がっていたが、その後、数年で壁にぶち当たった。気候変動問題は先進国が引き起こした問題だと主張する途上国対先進国という政治的な問題が主たる原因である。また、米国が議定書への署名を拒否するという政治的な要素による停滞期もあった。しかし、その後IPCC第4次報告書を含む様々な研究によってエビデンスが示されるようになり、またスターン報告書によって経済と環境の共生といった問題意識が明確にされた。こうした一連の努力やアピールによって政策担当者の理解も進み、現在また気候変動問題の議論が盛り上がって来ていることを感じている。ただ、開発の世界にはトレンドがあるのも事実で、現在のモメンタムを維持し、今後の具体的な取り組みにつなげていく必要がある。
(Q)ブータンの話があったが、今後ブータン自体は国としてどうしていくのか。ずっとUNの取り組みを続けていく訳にはいかないと思うが。
(A)難しいのは気候変動という問題の特殊性である。途上国は、気候変動は先進国が作りだした問題であり、GEFの資金で先進国が支援・対策をするのが筋、との認識を持っている。ただし、自国の能力で対応ができるようになってきた中堅国に対しては、Exit Strategy、つまりUNがどのタイミングでその国から引き上げるべきかを考慮しながらプロジェクトを進めていくことは重要である。
(Q)UNDPでは、気候変動問題に関して、個人レベルの意識改革にどのように取り組んでいくのか。
(A)気候変動問題とそれが引き起こすさらなる貧困問題については、個人のアウェアネスを高める努力は常に必要である。GEFの多くのプロジェクトには、意識向上の活動が入っている。個人、特に決定権を持つ政治家の意識向上は重要である。
以上
議事録担当:堤/吉田 写真:田瀬