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CDM制度を通じた持続可能性への道のり
−インドネシアをケースとして−



 


リージョナルテクニカルスペシャリスト(気候変動担当)
国連開発計画・アジア太平洋地域事務所(バンコク)

宮口貴彰(みやぐちたかあき)さん

略歴:京都生まれ。ミシガン大学アナーバー校(理学士・自然資源環境)、オックスフォード大学(交換留学)、フライブルク大学(ドイツ・交換留学)、シカゴ大学(公共政策修士)を経て、国連大学に勤務。その後世界銀行・東京開発ラーニングセンター勤務を経て、2006年7月より UNDPインドネシア事務所にて気候変動担当のプログラムオフィサーとして勤務後、2008年1月より現職。


1.はじめに
2.背景
3.問題点
4.分析
5.提言
6.最後に


 

1.はじめに :

新しい職場に移ったばかりだが、現事務所で私はアジア太平洋地域を対象に気候変動の緩和(Mitigation)とカーボンファイナンスに関する業務を担当している。地球環境ファシリティ(GEF)、そしてクリーン開発メカニズム(CDM)のプロジェクト開発及び管理という内容である。アジアには中国とインドを含め、世界の中でも有数の経済成長を続けている地域であり、また私の担当する気候変動というトピックから見ても世界の中でも非常に重要な地域であるということは特に強調する必要もないと思う。今回は私が今までに勤務していたインドネシアを例にとり、CDMという制度を通して、いかにすれば持続可能な発展に向かっていけるのかという点を見ていきたいと思う。


2.背景 :

最近の気候変動に関する世界の関心の高まりはこの数年、そして特に2007年の始めごろから指数関数的に増え始めた感がある。まず今までにない頻度、そして規模の自然災害の発生から始まり、目に見える形での気候の変動というものが生々しい現実感をもって我々に迫ってきたことが挙げられる。2007年はこのような気象に関するニュースだけでなく、気候変動を取り囲む他の様々な出来事があった。簡単に2006年中盤から昨年末までの流れを見ていくと:

  ・ 2006年5月 アル・ゴアの「不都合な真実」の公開が始まる。
  ・2006年10月 “スターンレビュー”が発表される。ニコラス・スターン元世界銀行上級副総裁がまとめた、気 候変動が及ぼす経済影響に関しての包括的な報告書(日本語要約版(PDF))で、気候変動の被害は長期に及ぶものでその被害は甚大であり、今対策をとることが長期的な被害の規模を考えても経済的に有利になる、と結論付けたもの。
  ・2007年2月 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の6年ぶりの報告書が発表される。この第4次評価報告書では気候変動は人間の活動が原因であるという強い可能性を示唆し、京都議定書を通じた温室効果ガスの削減量では問題が解決しない、ということを裏付ける報告書となった。
  ・2007年同月 インドネシア政府が気候変動枠組条約、第13回締約国会議(COP13)の開催を正式決定する。
  ・2007年同月 アルゴアの映画がアカデミー賞を受賞
  ・2007年10月 アルゴアがIPCCと共にノーベル平和賞を受賞
  ・2007年12月 COP13開催。188ヵ国の締約国をはじめ、国際機関、NGO等を含め1万人以上が参加するという今までにない規模の開催となった。

私がインドネシアに赴任したのが2006年の6月であり、このように赴任中の1年半はまさに気候変動の世界的な動きを実感するまたとない機会となった。気候変動という大きな分野の末端にいる者として、実際のCOP13への参加も含めて、地球規模での意識の変革が起こっているということを実感できた気がする。

気候変動には二つの大きな分野がある。緩和(Mitigation)、そして適応(Adaptation)の二つである。今回の提言で取り上げるのはこの緩和に関するもので、これは温室効果ガス(Greenhouse Gas、GHG)の削減に関わり、直接的なGHGの削減や、また森林やそのほかの手段でGHGの吸収量を増加させるような手段も含め、温暖化の影響を最小限に留めようとする活動である。しかしこの緩和策の成果というのは数十年というものさしでやっと見えてくるものであり(たとえばGHGの大半を占める二酸化炭素は大気中に100年以上留まることが指摘されている)、今現在我々が目にし、体験している気候変動に対しての、今日明日の解決手段では残念ながらない。現在起こっている気候変動の影響に対して適応策を促す動きは特に発展途上国で活発である。この適応という分野は、緩和分野が世界全体を対象にしているのに対し、対象となる地域がそれぞれの国、そして地域に限定されるもので、世界中のGHG排出を下げれば解決(またはそれに向かえると)するという、もちろん非常に難解だが比較的統一された命題があるのに対し、適応分野というものはその土地土地、国々にあった対策を採らなくてはならないものである。

現在気候変動の名の下で行われている活動、そしてその資金規模は圧倒的に緩和分野に費やされている。これは京都議定書を批准し、法的拘束力を持つ数値目標の義務を負っている附属書T国(発展国のグループ)の、削減目標に向けた努力がそのまま緩和策となるからである。もう現在までに数十億ドルレベルでこの分野において資金が動いており、その動きは日に日に活発さを増している。また特に2008年は京都議定書で言う第一約束期間(2008−2012)が始まる年でもあり、さらに気候変動の、そして緩和分野に関する動きが活発になる年となるであろう。

この緩和対策であるが、法的拘束力を持つ数値目標の達成に当たり、附属書T国の自国内でのGHG削減努力では実現できずに限界がある、という現状を鑑み、京都議定書の中で柔軟的措置(Flexible Mechanism)として、他国での削減を自国の削減として扱うことのできる「京都メカニズム」が認められることとなった。この中のひとつであるのがCDMである。これは京都議定書を批准しているがGHGの削減目標を持たない発展途上国をホスト国とし、先進国が技術・資金の支援を通して他国で実現するGHG排出量の削減分を自国の削減に充てられるという仕組みである。このCDMの活動を通し、ホスト国における通常の産業生産活動のシナリオ下で排出される量と比較して削減された分をクレジットという形で認定する、というものである。

緩和分野のひとつの大きな取り組みとして発足したこのCDMという制度であるが、世界のCDMプロジェクトの全収入の2%が世界の適応分野の支援のために作られる「適応基金(Adaptation Fund)」への資金源として取り扱われることが決まっている。

このCDMであるが、民間企業の役割が非常に強い。CDMそのものは民間企業の参加を義務付けているわけではないが、企業の積極的な参加がしやすい、という点がある。この理由の一つに京都メカニズムが定める、排出権取引(Emission Trading)という制度がある。これは附属書T国の種々の活動を通して発生したクレジットに値段を付け、一種の金融商品のように取引できるようにする試であり、クレジットの売買値段は市場原理の元に決定され、規定の値段というものはなく、いかに安く多くのクレジットを手に入れ、高く売るのか、という基本的市場原理を取り入れている。

アメリカを除く世界の先進国のまさにほぼすべてが京都議定書を批准しており、これらの国々の政府の意向を汲んだクレジットの取得事業の存在は、同時にこのカーボンクレジットが十分な投資の対象にもなりうる、ということをさすわけで、このことが今までにない民間企業の参加が期待されている理由でもある。

ミレニアム開発目標、そして世界の貧困問題解決に向けた、民間企業の持つ、“追加的”な役割ではなく、“補完的な”パートナーとしての大きな潜在性は日頃より大きな注目が集められており、その中でも特にこのCDMという制度が民間企業に与える影響は非常に強いものがあると見られている。

アジア太平洋地域において、CDMのプロジェクト開発の現状はどのようになっているのであろうか。まず大きな特徴として、アジア、そして世界においても独走状態が顕著なのが中国とインドである。その状態は特筆に値し、二国の合計が、アジア全体のCDMのプロジェクト数で84%、そして予測されているクレジットの合計量でも85%と、その大半をしめる(図1、図2)。


図1:アジアにおけるCDMプロジェクトの数の比較


Source: UNEP/RISOE (2007年11月時点)

図2:CDMプロジェクトを通して予測されているGHG排出削減量のアジアにおける比較

Source: UNEP/RISOE (2007年11月時点)

これはCDMというメカニズムそのものが持つ特徴の一つに起因している所がある。それは近代化がすすんでいるがまだ産業・技術が「汚い」、つまりGHGを大量に排出する国々が得をするという構図になっている部分である。(CDMという制度が確立される以前に自国のイニシアティブで産業を「きれいに」にしていた発展途上国から反発の声が上がっているのはこれが原因である。)しかしもちろんこのようなCDM制度の特徴だけが要因ではなく、両国がこの制度を国の優先事項とし、国をあげてその開発、利用に邁進してきた、という自助努力の賜物であることはいうまでもない。

さてこのような中国・インドの独占状態の中、インドネシアではどのような状態なのであろうか。インドネシアは1994年に国連気候変動枠組条約を、また2004年度には京都議定書を批准した。同国はガスや石油をはじめとする自然資源、そして世界でも有数の熱帯雨林や生物多様性と共に、1万7千もの島々で形成される島嶼国でもある。このため、インドネシアはGHGの排出に伴っての気候変動の加害者側であると同時に、現在進行形で気候変動の影響が農林水産業、そして特に遠隔地にいる貧困層に見られているという被害者側でもあり、気候変動の動きに大きな影響を与える重要な国のひとつである。

2001年にインドネシア環境省が発表した試算によると、同国は全世界のCDM市場において2%、数字にして1.3〜3億トンのGHG排出削減の可能性があるとしている。しかしこの数字は所謂LULUCF(土地利用、土地利用の変化及び林業)と呼ばれる主に森林伐採や泥炭地からくる二酸化炭素の放出分は含まれておらず、これを含めればインドネシアは世界で第3位のGHG排出国となると試算されている(アメリカのWRI(世界資源研究所)の2000年次の計算による)。

ではインドネシアの現在のCDMのプロジェクトの開発状況はどのようになっているのであろうか。まず2007年末の時点において、すでに実施状態のプロジェクト、そしてインドネシア政府から認められているが開発途中、という2つのタイプをあわせると合計で52ある。この数はもちろんアジア全体で見れば多くないが、インドネシアの2007年の6月時点ではその半分に近い27プロジェクトであったことを考えれば2007年の後半での同国のプロジェクト開発の熱は非常に高まってきているといえる。

52あるプロジェクトの内訳は、主にパーム油の生産時の残留物を利用したプロジェクトが主なバイオマス関連のプロジェクト、そしてゴミ処理場から出るメタンガスの回収に関するプロジェクトがその多くを占める(図3)。

図3:インドネシアにおけるCDMプロジェクトの種類 (合計52プロジェクト)

Source: UNEP/RISOEのデータを下に筆者計算

ここでCDM制度をもう一度俯瞰してみる。そうするとこの制度の目的は二つの層が存在することがわかる。上層は先進国のGHG排出削減という目的、そして下層は発展途上国における(持続可能な)発展の実現という層である。CDMという制度はその開発、登録、必要とされる文書、査定工程、そして認定という非常に厳密で(そして煩雑な)プロセスを経て実施されていくのであるが、これらすべてはこの上層の目的の遂行のためのクオリティコントロールという役割をもっている。世界で取引されるクレジットを生むためにはこのような厳密なステップを通らないと認めませんよ、というものである。翻ってこの下層の目的で、クリーン開発メカニズムの“開発”の箇所であるが、これはホスト国の裁量に任されている。

CDMプロジェクトはそのすべてがホスト国政府にまず認定されなければいけない仕組みになっており、ここでそのホスト国の意向が反映されてプロジェクトが選択されることになる。インドネシア政府もこの取捨選択に使う基準として、“持続可能な開発基準および指標”(Sustainable Development Criteria and Indicators)というものを適用し、経済、社会、環境、そして技術移転という4つの観点からプロジェクトを査定するというシステムとっている。

 

3.問題点 :

しかしこのような基準や指標が実際の持続可能な開発に向けて効果が上がっているのかというと、どうもそうでもないように思われる。

まず経済的な側面のひとつの雇用の促進、という面を見てみる。昨年の年末時点でインドネシアにて動いている合計52のプロジェクトのうち、CDMのプロジェクトを通じた直接雇用では実に73%ものプロジェクトにおいて雇用がまったくないか、もしくは10人以下という規模にとどまっている(図4)。50人以下の雇用となると実に92%となり、プロジェクトが持つその地元コミュニティに及ぼす雇用の促進という面からすればほとんどその効果が見られていない、というのがわかる。

図4: インドネシアのCDMプロジェクトを通した直接雇用の状態 (単位:人数)

Source: PDDの情報を元に筆者計算

社会的な側面でいえば、ステークホルダーとの連携、という側面でみても、例えばステークホルダーとの会合を二回以上持った、というプロジェクトは11% にとどまり、社会的なコンセンサスが得られているのか、もしくは社会的なベネフィットが促進されているのか、という面で疑問符がつかざるを得ない。

環境の面でも、これは上記の政府が指定している基準および指標の作られ方に起因するところが大きいが、所謂コンプライアンス以上の活動がほぼみられない。中央・地方政府が定める規定以上の活動をしているCDMプロジェクトは0.4%1にとどまり、コンプライアンス以上の活動がほぼ皆無、という状況を示している。

最後にCDMの一番わかりやすい、そして果たしやすいと思われる要素である技術移転の側面であるが、最新の「技術」は使われているのであるが、これが果たして「移転」されているのかというとそうでもなく、地元の企業や自治体への積極的な技術の移転が行われていると見られるプロジェクトは41%(2007年6月時点。PDDの記述を元に筆者計算。)にとどまり、他の3つの基準に比べれば善戦してはいるものの、この側面でも「持続可能な開発」に向けた効果が現在のCDMプロジェクトを通してインドネシアにて実現しているとは言いにくいのが現実である。

これはまったくの筆者の推測となるが、このような状態がインドネシアだけものであるとはいいきれず、アジアのほかの国でもこのような状況ではないかと思う。データが伴った確証はないが、実際各ホスト国が設定する持続可能な開発を目的とした基準・指標に到達せずに拒否されたプロジェクトというのが稀有である、というのが自身が見聞きしているCDMを通しての印象である。

 

4.分析 :

ではCDM制度は持続可能な開発を促すことができないのであろうか。解決への道はあると思う。インドネシアでは持続可能な開発に向けて希望の持てる活動をしているCDMプロジェクトがあり、それらは上記の4つの定められた基準のすべてにおいてコンプライアンス以上の活動をしており、共通することは(1)参加企業のコアビジネスを積極的に利用している、そして(2)地元コミュニティとの連携の強さ、の二つの要件である。

これらのプロジェクトのうちの一つは国有企業で石油・ガス会社であるプルタミナを定年退職した社員が集まり作られたLPG(液化石油ガス)の会社のプロジェクトである。これは地方自治体との連携を実現し、地元コミュニティから率先して工場雇用し、その中の優秀者には奨学金を与え将来の生産工場のマネジャーとして育成し、12年後に自治体への工場の委譲を目指して、そのときにこの自治体が自分たちでLPGの生産管理ができるように積極的な能力育成に取り組んでいる例がある。もうひとつの例では自治体との強い連携体制のもと、地元コミュニティからの大規模な雇用を始めとして、ゴミ処理場の近代化、そして回収したメタンガスから作られた電力を売却することで自治体の収入源を増やし、またコンポスティングも取り入れゼロウェイスト(ごみゼロ)に向けて取り組んでいるプロジェクトもある。

そのほかにもプロジェクトでうまれるクレジットの数%を自治体に還元するパートナーシップを組んでいるプロジェクトもあるほか、津波の被災地において地元政府と共に地道に化石燃料の使用を減らす燃料変換へのプロジェクトを推進している起業家もいる。

そしてこれらのプロジェクトに共通するのが企業のコアビジネスの利用、そして地方自治体・コミュニティとの力強い連携である。これはよくみられるようなCSRなどの、時として企業の持つコアビジネスとは関係のないチャリティ活動ではなく、また海外企業が投資、技術を支援するのはいいが地元コミュニティをバイパスすることでより容易にクレジットを獲得しようとするようなものでもなく、CDM制度が積極的に持続可能な開発に向かって利用されているというケースであるといえる。

たとえば環境管理と非常に密接に関係しあっている防災の分野でいえばこの二つの要素を兼ね備えた企業活動が出てき始めている。中越大震災の被災を教訓にホームセンターの企業コメリが立ち上げたNPOの活動では、全国各地で有志の自治体そして企業を募り活動している。またフランス系の主にセメントを中心とする建設資材会社であるラファージュはアチェの津波の半年後に100億円近い投資を現地で行い、地元と連動し、自らのコアビジネスの通した長期的なパートナーシップを遂行している。またフィリピンではCNDR(災害対策企業ネットワーク)という協会が10年以上の活動を続けており、有志の企業が集まり積極的に地方自治体との連携をとり、災害リスク軽減に向けた積極的な活動を続けている。

もちろんCDMの活動がどこまで企業にとってこのような防災の分野でみられる活動に近づいていけるのかという問題はあるが、CDMという、カーボンクレジットを通して実際の資金収入が可能となる制度においては企業のコアビジネス、そして地方自治体との有機的な連携は今までの分野よりも可能性が高いのではないかと考えている。

 

5.提言 :

実際の取り組みとして、上げられることは:

(1)企業間での協会・団体をつくる
これはCDMを作るにあたり必要となる技術を有している企業が前もってあつまり、地元コミュニティ・自治体から出てくるニーズに答えるように自らのコアビジネスを利用した活動を目指すものである。これは例えば日本の経済を支える中小企業を対象に、その有志の企業の技術などのデーターベースを作成し、途上国が利用できるようになると非常に価値があるのではないかと思う。

(2)プロジェクト作成を地方自治体から始める
インドネシアで持続可能な開発に向けて順調に進んでいると見られるプロジェクトはそのすべてで地方自治体の力強いリーダーシップ、というのがある。CDMは民間企業や先進国のファンドを管理している国際組織が率先している、というイメージが強いが、持続可能なプロジェクトを考えると、直接まず地方自治体との対話を進めていき、それを基盤にしてプロジェクト作成にもちこむ、ということが得策かもしれない。これには世界の地方自治体のネットワークを形成している国際NGOなどが多数存在しているため、これらの組織との連携を強くとっていくことが可能と思われる。

(3)プロジェクト開発者側に立った視点を強化する
CDMを通した持続可能な開発、ということを最大限に考慮している取り組みのひとつにゴールドスタンダード、という制度がある。これはこの制度を通して開発され、そしてうまれたクレジットにはプレミアがつき、通常のクレジットの値段と比べて高い値段で取引される、という試みである。これはよりプロジェクト開発者側の立場にたったものである。またUNDPでも昨年にMDGカーボンファシリティという、よりミレニアム開発目標の実現に貢献するCDMプロジェクトを開発していこうという取り組みが始まっており、ホスト国での開発の効果があがるようなプロジェクトを率先して開発していこうとしている。

 

6.最後に :

以上、筆者が今までいたインドネシアを例にとってCDMという制度を利用し、どのような方法を通せば、よりCDMのもうひとつの目的である、ホスト国における持続可能な開発につなげていけるのか、ということを考察してみた。もちろんインドネシア一国での結果で、これがアジア全体、また世界全体に適用されたときにどのような状況なのか、という質問には残念ながら推測の域を出ないのが現在のところである。自身もCDMという非常に難解だがやりがいの分野に関わらせてもらってまだまだ間がない。文章を書くことは恥をかくことだ、とはよく言うが自身、そのような気分である。皆様の叱咤激励、なんらかの形でいただければ幸いである。


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2008年3月3日掲載
担当:中村、菅野、宮口、藤澤、迫田、奥村

 



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