第14回ネットワーキングカンファレンス(2014年7月26日)
2014年7月26日 国連フォーラム・ワシントンDC開発フォーラム合同 夏のオフ会in東京 ご報告
国連フォーラム―ワシントンDC開発フォーラム、は、海外からの一時帰国者が多い年末・年始と夏休みの時期に合わせ、1年に2回程度のペースで、東京でのオフ会を開催してきました。
今年度のオフ会は、2014年7月26日(土)13時より、東京大学(本郷キャンパス)で開催されました。第14回目となった今オフ会は、1日を通じて総勢168名が参加する、大イベントとなりました。
第一部では、前半に「ミャンマー・セッション」を行い、2010年以来毎年開催している国連フォーラム主催、スタディープログラムの本年度渡航先であるミャンマーに関して、現地で活躍されている国連職員や専門家、メディアの方々が登壇なさりました。
後半では「グローバル人材と国連職員セッション」を行い、多方面よりグローバル・イシュー解決に取り組む方々をパネリストとしてお呼びし、国連が求めている人材との比較や参加者が新たな世代に期待する役割などについてパネル討議を行いました。
その後、場所を東京大学本郷キャンパス山上会館に移して第二部の懇親会を行い、今回のオフ会に参加してくださった方々同士が交流を深めました。
《第一部》パネルディスカッション(13時~17時)
(1) ミャンマー・セッション
2011年以降、急速に経済発展と民主化を経験し、変化を遂げているミャンマーについて、専門家の方々からお話を伺っていきました。
【前半】敬称略、順不同
- 司会:田瀬和夫(デロイトトーマツコンサルティング・元国際連合事務局人道調整部・国連フォーラム共同代表)
- パネリスト:モン・ミャット(東京大学人間の安全保障博士課程)、工藤年博(JETEOアジア研究所研究企画部部長)、新谷大輔(三井物産戦略研究所)、西口祐子(Save the Children Japan 海外事業部ミャンマー担当)、伊藤里奈(東京外国語大学四年、MySP参加者)
ミャンマー・セッションは、司会からそれぞれのパネリストにご自身の経験を踏まえたミャンマーに冠するお話をしていただきました。主なポイントは以下の通りでした。
- 経済発展の影響で留学生が増加したり、ミャンマー国内ではネット産業が発展したり、自由に動画サイトが閲覧できるように近年なってきた。
- 日本企業はミャンマーに対する関心が高まってきてはいるものの、調査だけで具体的な事業を起こす企業がまだまだ少ない。とくに、インフラが整っていないミャンマーが一番必要としている製造業において顕著である。
- 日本だけでなく、世界各国が開放後のミャンマーに注目しているが、まだ民主化は過渡期であり、来年の大統領選挙の結果まで様子見をしている。
- ミャンマーは都市部と遠隔地の経済格差が著しく大きく、少数民族居住地域がとくに遅れている。
- 生活への影響はどうか。こうした地域では子供が暴力を受けたり教育の機会を奪われることが多く、深刻な人権問題となっている。
その後、司会からミャンマーの変わらないでいてほしい良いところをみなさんに質問しました。モンミャットさんは伝統的民族衣装である「ロンジー」を、工藤さんは「人の優しさ」を、新谷さんは「敬虔な仏教国であること」を、西谷さんは「家族を大切にするところ」を、伊藤さんは「空気」をそれぞれあげられ、経済発展により著しく変化していくミャンマーのなかでそれぞれ思い入れのある点をあげていただきました。
次に会場からの質疑応答に移ったあと、後半の司会、パネリストの方々へ交代となりました。
【後半】敬称略、順不同
- 司会:森田晃世(JICA東南アジア・大洋州部東南アジア第二課)
- パネリスト:小島岳晴(JICA東南アジア大洋州部東南アジア第四課)、玉懸光枝(国際開発ジャーナル編集次長)、伊藤和子(ヒューマン・ライツ・ナウ事務局長)、チュウ・ソウソー(ミャンマーレストランRuby経営者)、丸山沙希(慶應義塾大学卒業、MySP参加者)
後半も前半と同様に司会者からの質問という形でパネリストの方々がご自身の経験を交えてミャンマーについて語っていただきました。セッションの概要は下記のとおりです。
- 民主化後、ミャンマーにおける開発課題は、緊急支援からインフラ、投資環境整備、中央銀行資源支援など多岐にわたるようになり、中長期的なプランニングも増え、ミャンマー人の開発に対するイメージも徐々に積極的なものに変わってきている。
- 2007年頃を前後に、典型的な軍事政権による政治犯や言論抑圧の問題が解消されていき、スーチーさん解放の影響が大きい。
- 民主化後、新たな問題として宗教対立や土地問題、法整備などが浮上してきていて、総選挙や憲法改正の動向に中止しなければならない。
その後、また前半と同様の変わらないでいてほしいミャンマーの良いところはみなさんにお尋ねしました。小島さんは「気高さと謙虚さ」を、玉懸さんは「ひたむきさ」を、 伊藤さんは「決意」を、チョウソウソーさんは「森と川」を、丸山さんは「距離感」をあげてらっしゃいました。
最後の質疑応答では、ミャンマーならではの特徴として、ミャンマー人の方々はなんでも自分でやる以上、理解しなければ実行しない気高さを持った国民性があることや、日本から近く、開放がすすんだばかりでこれから地域を結ぶ拠点として発展する可能性があげられていました。
(2) グローバル人材と国連職員セッション
第一部後半では、グローバル人材とは何か、なんのために必要でどうやって育つのかというテーマを司会の久木田さんを中心に五名のパネリストの方々に話し合っていただきました。
- 司会:久木田純(国連フォーラム共同代表/ユニセフカザフスタン事務所長)
- パネリスト:田瀬和夫(デロイトトーマツコンサルティング・元国際連合事務局人道調整部・国連フォーラム共同代表)、相良祥之(IOMスーダン事務所・元DeNA、JICA、HPCUNV)、大室直子(WFP日本事務所)、永井陽右(日本ソマリア青年機構・早稲田大学4年・第28回人間力大賞外務大臣奨励賞)、山内ゆりか(MySP参加者・横浜市立大学3年)※敬称略、順不同
まず最初にグローバル人材の定義や必要な能力を確認しました。
- 文部科学省の定める要件 ⇒語学力、使命感、幅広い教養、専門性など
- 国連職員が求められる基本的な価値観 ⇒Integrity, Professionalism, Respect for Diversity, commitment to studyなど
その後、これらに関してパネリストの方々からコメントを頂きました。出てきたご意見としては、
- 違いを認めた中で共通点を定義し言葉にして伝えること
- 自分だけでなく、周囲をいかに飛び込ませていく力
- 自分がどこにいても先のことを見通せる力
- 異文化や自分の範疇外のことにも感受性を持つ大切さ
などがあがり、国際協力に関心ある若者の受け入れ先の少なさが重要な問題点として挙げられました。
《第二部》懇親立食会(17時~20時)
第一部の工学部3号館から山上会館に移り、立食形式で懇親会を行いました。
海外から一時帰国中の方々も含め、オフ会に参加した者同士が第一部のパネルディスカッションで印象に残ったことを共有したり、ひさしぶりに再開した国際協力のプロフェッショナルが目を輝かせながら近況を報告し合ったりする姿が印象的でした。また、第一部には参加できなかった方々も多数おり、非常に刺激的なネットワーキングだったと思えます。
第二部では、立食懇親会の前に、今年の10月に開催予定の国連フォーラム10周年イベント開催告知や、あらためてミャンマー・スタディー・プログラムのご紹介があり、国際協力に関心がある専門家や学生たちが一緒に一つの目標に向かって動いてく国連フォーラムの益々の発展を参加者同士で誓いあいました。
国連フォーラムの担当:永井陽右 ウェブ掲載:藤田綾
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【参考】主催者について
国連フォーラムは、国連のことをもっと知りたい、国連の活動に貢献したいと考えている実務者、研究者、学生、メディア関係者など幅広い人々を対象として、国連についての 知識を得、議論に参加し、さらには活動に参画する場を提供することを目標としています。さらに、 議論の深化と発信を通じて、参加者にとって有意義な変化を引き出すことを目標としています。
http://www.unforum.org
ワシントンDC開発フォーラムは、グローバルな開発戦略と日本の関わりについて考え、行動に移すための関係者の情報交換・意見交換の場です。フォーラムを通じての交流は、日本や途上国、国際機関所在地など世界各地に広がっています。様々な開発関係者が、組織や場所の制約を超えて情報と知見、更には情熱と気概を共有し深化させることが出来れば、大変嬉しく思います。
http://www.devforum.jp