ミャンマー・スタディ・プログラム - 報告書「3.3. エーヤワディ管区」
3.3.1.エーヤワディ管区地域概略
(なお、管区とは、州と異なりビルマ民族が多数居住する地域のこと)
地図
地理
その名前のとおり、エヤワルディ川の河口域にあたる。同地域は米の生産地帯であるだけでなく、一部には海水と淡水の混ざり合った「汽水」条件でしか生息できないといわれるマングローブの生息地域があり、この地域ならではの独特の生態系が存在する。また、そのため魚介類の養殖や漁獲が盛んである。
歴史
「エヤワルディ」という呼称は、もともとは「イラワジ」と呼ばれていたが、1989年に政府により、当時の国名「ビルマ」が「ミャンマー」と改称されたのと同時期に現在の「エヤワルディ(Ayeyarwaddy)」に変更された。
参加者の声(正久卓哉)
まだ地域自体は自給自足社会で、商品作物の栽培はまだ始まったばっかりのような印象を受けたが、訪問した家所々で32~40型の位の液晶のテレビがあったりビデオデッキがあったりして何か「変な違和感」を覚えた。
3.3.1. UN-Habitat
- 日時:11月26日
- 場所:Shae Thot UN-Habitatプロジェクトサイト
- 担当者、所属:UN-Habitatヤンゴン事務所 大島美喜さん
ブリーフィング内容
浄水設備の隣の場所でUN-Habitatの職員から地域の浄水設備を管理・運営している女性10名弱とともにブリーフィングを受けた。
地理的条件により、日常生活に使える水を手に入れにくい地域。浄水設備により鉄分を除去した生活用水、鉄分を除去し、塩素消毒、炭素に通した後に、赤外線消毒を施した飲料水の2種類を地域の人に販売。生活用水は村にタンクで運ばれ、飲料水は使用する人が浄水設備のある場所まで取りに来るとのこと。小学校には飲料水を無料で提供していて、小学生が水をタンクにもらいに来ている様子もあった。運営、管理をしている人は地元の男性と女性が1:1。1日2.5$の給料が支払われる。今回訪れた場所は、2つ目の浄水設備で、一つ目の浄水設備を管理、運営していた人が管理する技術を教えている。毎週一定額を貯金し、浄水設備の維持、管理費に充てている。
参加者の声
- 訪問前のその機関・プロジェクトへの印象
- 浄水場施設の見学と聞いて、自分は日本の浄水場のような大きなものを想像してため、市最初着いた時は、「小さくない?」と思ってしまった。
- 訪問先で学んだこと/発見したこと/面白いと思ったこと/疑問に思ったこと/もっと調べたいこと
- 自分たちが使う水、飲む水を綺麗にすることは生命維持のために大切だけど、下水処理の方にも力を入れないと、長い目で見て自分たちが将来使う水に悪影響を及ぼしかねないんじゃないかと疑問に思った。
- これから自分のキャリア(仕事でも勉強でも)に活かせそうだと思ったこと、どう活かせると思ったか
- 「貧困」と聞くと、どうしても都市の貧困としての「スラム街」を想起してしまいがちだが、「都市における貧困」と「農村における貧困」が抱える共通の問題点と相違点ってなんなのか興味をもったので調べてみたい。
3.3.2. FAO
- 日時:11月26日
- 場所:Pyin Boe Gyi village, Kant Malar Chaung village
ブリーフィング内容
- Pyin Boe Gyi village: この村では漁業が主産業となっている。乱獲を防ぎ持続可能な漁業を保てるように、魚を獲る際の網の目の穴の大きさをミャンマー政府が定めているのだが(小さな魚が逃げられるように)、それがきちんと守られているかどうかをcommunity memberと呼ばれる、現地の村にいるリーダー的グループの人たちが管理している。また、5月~7月はミャンマーの法律として漁業が禁止されているため、その間住民の生活をまかなうために、豚を家畜として飼ったり、他にも野菜、米を育てている。
- Kant Malar Chaung village: この村は、2008年に起こったサイクロン、ナルギスによって多大な被害を受けた村の1つで、当時は家はもちろん何もかも壊されてしまった。復興の際に、またサイクロンが来てもそれに耐えられる建物が欲しいという村人の要望から、UNDPが村にコンクリートでできたシェルターを建てた。現在、そこは学校として使われている。
質疑応答(At Kant Malar Chaung village)
- Q. 今一番困っていることは何ですか?
- A. お祭りやdonationができないこと。 ナルギスが来る前までは、毎年ダンサーを雇ってお祭りをしたり、仏教文化であるお供え物をしていたが、ナルギスの後は何もかも壊されてしまい、またダンサーも雇うことができなくなってしまったので、楽しい催し物ができなくなってしまった。
訪問プロジェクト内容
私達は2つの村で、日本文化紹介と交流を兼ねてソーラン節を踊った。どちらの村も漁業が盛んな村だったので、漁師を動きを表現しているソーラン節はとても盛り上がった。1つ目のPyin Boe Gyi villageでは、小学校の子供たちがわざわざ授業を中断して見に来てくれ、1度踊りを見せた後、子供たちも一緒に踊ってくれた。
2つめのKant Malar Chaung villageでは私達がソーラン節を見せた後、村人の人たちが彼らの伝統楽器と獅子舞のようなものを出してきてくれて、彼らの伝統ダンスを見せてくれた。村人の方が、サイクロンが来てから、色々な団体がこの村を訪問してくれたが、「あなた達との時間が今までで1番楽しかった。サイクロン後初めてのお祭りみたいだった!」と言ってくれた。
参加者の声
- 訪問前のその機関・プロジェクトへの印象
- マングローブと水産物のプロジェクトだと聞いていたからマングローブに関する話も聞けるのだとわくわくしていた。
- 訪問先で学んだこと/発見したこと/面白いと思ったこと/疑問に思ったこと/もっと調べたいこと
- 川で採れた魚を、ボートでやってくる仲買人に売って生計を立てている、あまりBogale(市場とかのある小さな街)にはいかない、といっていたが、村の人々は自分たちが採った魚の市場価格を知っているのか気になった(本人たちは自分たちが販売する価格は知っているといっていたが)。
- これから自分のキャリア(仕事でも勉強でも)に活かせそうだと思ったこと、どう活かせると思ったか
- プロジェクト自体に関してではないのだが、農村の方と話をする中で医療制度に大きな不満を抱えている様子がないことに驚きを感じた。少し行けば(何㎞も先だが)助産婦がいるし村を回ってくれると言っていた。単に地方に医師などの医療従事者の数を増やすだけでなく、既にあるネットワークの強化とそこに携わる人材の底上げでよりよい医療が提供できるのではないかと考えた。地方の医療に関してはそのようなアプローチ法もあるということを理解し、学びを深めたいと感じた。