コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:UNIDO」
要約
国連工業開発機関 (以下、UNIDO)は、1966年に国連の一部局として発足し、1985年に独立した専門機関。開発途上国や市場経済移行国の包摂的で持続可能な産業開発を通じて、国々の持続的な経済の発展を支援している。「包摂的な産業開発」とは、すべての人々に公平に恩恵をもたらし貧困を削減する産業開発を、「持続可能な産業開発」とは経済成長と環境保護の両立を意味している(1)。
コロンビアは国としての経済成長と環境保護の両立、違法作物からの生産物転換や女性、難民移民等の脆弱性の高い人への支援等の多岐にわたる課題がある。国全体として雇用創出や産業誘致を通じた経済活性化が急務であるが、他方で世界的な脱炭素の潮流や国として生物多様性の保全が必要であることも踏まえると、環境に配慮したビジネスの推進、持続可能な取り組み体制の構築が求められている。また、経済成長の観点では脆弱性の高い人々への支援が必要不可欠になっている。
UNIDOはこれらの課題に対応するため、コロンビア国内の経済特区におけるEco Industrial Park Project、女性や移民が多く従事している違法作物からの作物転換支援等の産業開発を軸にしたProductive Development Projectに取り組んでいる。
1.機関の組織概要
UNIDO は、開発途上国や市場経済移行国の持続可能な産業開発を促進する国連の専門機関である。 1966年に国連の一部局として発足し、1985年に独立した専門機関となった。 現在の加盟国は170カ国、本部はオーストリアのウィーン。 包摂的で持続可能な産業開発を通じて、貧困削減と環境保護の両立を目指している。 主な活動としては、①開発途上国の工業開発政策への助言と計画立案、②専門家による現地での技術指導及び投資・技術移転の促進、③環境・エネルギー分野および中小企業振興の支援等。
2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題
国としての経済成長と環境保護の課題
コロンビアでは国としての経済成長のために産業誘致を通じた経済の活性化や雇用創出が必要となっている。また、脱炭素や環境保護、持続可能な産業開発の機運が世界的に高まっていること、国としても、コロンビアは生物多様性に恵まれていることから、環境保護は国としての重要課題になっており、経済成長と環境保護の両立が必要となっている。
違法薬物の課題
違法薬物の取引及びそれにつながる違法作物の栽培はコロンビアの社会課題の一つである。違法作物の栽培や取引を防止すべく、国としてはカカオ等への作物転換を進めていくことが必要不可欠とされている。違法薬物から通常の農産物への作物転換をさらに進めるには、生産者が十分な収入を得られることが一つの鍵になっており、市場の確保、マーケットアクセスの強化及び生産物の付加価値向上が求められている。
脆弱性の高い人々に関する課題
女性や移民、先住民の人々はコロンビア社会の中でも弱い立場に置かれており、貧困といった経済的課題に直面しやすい現状がある。社会的に弱い立場に置かれている人の支援として、直接的に収入向上に繋がるプロジェクトや支援が求められている。
3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容
Eco Industrial Parks Project
UNIDOではZona Franca Bogota(以下ZFB)と呼ばれる経済特区を支援している。ZFBは経済特区であり、税制面や規制面での優遇措置が受けられるため、コロンビア及び世界中からの産業誘致及び産業誘致に伴う雇用創出が期待されている。産業誘致に加え、投資資金の増加による経済効果が期待されている。
ZFBの特徴の一つに、UNIDOがZFBをEco Industrial Parks Projectとして指定しGlobal Eco Industrials Parks Programに基づき支援している点がある。具体的には、ZFB内で独自の管理システムを保有しており、グローバルコンテクストに沿って対応すべく、Environmental Authority等の組織をZFB内に設置している。また、廃棄物マネジメントやZFB域外向けのサステナビリティ関連トレーニング、カーボンフットプリント削減のモニタリング、域内のエネルギーマネジメント等を推進することで、ZFBに入居する企業が環境に配慮した取り組みを実行できるような仕組みを作っている。
また、環境配慮にとどまらず、政府や他関係者と企業の連携促進や事業の維持拡大に向けたマーケティング支援等も実施しており、サステナビリティ、マーケティング、コーポレート関連支援とプロジェクト内容は多岐にわたる。
Productive Development Project
違法作物代替のための国家総合プログラム及び生産物の転換プログラムに関するサポートを実施している。特に組合を通じた家族間の連帯の強化やジェンダーギャップを埋めることを優先している。具体的な活動として、代替作物の商業化やマーケットアクセス強化の戦略策定、ビジネスモデルの策定、技術協力を通した生産力強化等を実施している。
UNIDOは4つの自治体を受益者として支援しており、一部地域では技術力、生産力強化のための組合が既に組織されている。また、ブリーフィングによれば、組合の女性比率は32%、移民比率は17%となっており、脆弱性の高い人々を支援することにもつながっているとされる。具体的な取組の内容としては、栽培、土壌、水管理、土地の権利取得に関するガイダンス、環境マネジメントプランの策定や2つのファーマーズマーケットへの参画を通じた市場へのアクセス支援等がある。
なお、Productive Development ProjectはUNDOC(国連薬物犯罪事務所)と連携して取組が推進されている。UNIDOが製品の標準化と付加価値創出の強化をサポートし、UNODCは公正価格での取引支援、コミュニティ内のアライアンス強化、行政や商業的な結びつきの強化等の支援を担うことで、生産者に包括的なサポートを適用できるようになっている。
4.参加者所感
説明を通してUNIDOが産業という切り口を軸に多様なアクターと連携し、様々な課題にアプローチしている点が印象的であった。特に、個人的な印象ではあるが、国連組織はそれぞれのマンデートに従い独自の資金を元に活動している印象があり、UNODCと連携してプロジェクトを推進しているという点は新鮮に感じた。渡航前の勉強会を通して、コロンビアが抱えている多様な課題は単独ではなく、複雑に絡み合っていることを認識しており、国際機関間の連携や民間、NGO等各アクターとの緊密な連携を取りながらプロジェクトを推進し、課題を解決していくことが重要かつ効果的であることを実感した。
引用文献
- (1)国際連合工業開発機関 東京投資・技術移転促進事務所. (不明).UNIDOの概要. 国際連合工業開発機関 東京投資・技術移転促進事務所.https://itpo-tokyo.unido.org/about_us/unido/.最終閲覧日:2024年12月27日
