コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:UNODC」
要約
国連薬物犯罪事務所(以下、UNODC)は、麻薬取引や環境犯罪(1)への対応を中心に持続可能な発展を促進する国連機関であり、コロンビア事務所では代替開発プログラムとSIMCIプロジェクトを通じて地域社会と環境保全の両立を目指している。代替開発プログラムでは、違法作物から合法作物への転換を支援し、経済的自立を促進している。SIMCIプロジェクトでは衛星画像を活用して違法作物の分布や環境変化を分析し、政策提言や犯罪取締に寄与している。現地訪問では、持続可能な開発モデルの重要性や先住民の知識を活かした取り組みが印象的であった。特にコーヒーやカカオの栽培を通じた市場価値の向上が注目された。環境犯罪対策の実効性を高めるためには、地方行政や国際機関とのさらなる連携が課題である。
1.機関の組織概要
UNODCは、麻薬取引、犯罪、テロ対策、環境犯罪への取り組みを通じて法の支配、平和、安全、持続可能な発展を促進する国連機関である。コロンビア事務所では、環境犯罪や麻薬取引への対応を中心にプロジェクトを実施している。特に代替開発(Alternative Development)プログラムとSIMCIプロジェクト(違法栽培・森林伐採などの統合モニタリングシステム)(2)は、地域社会への支援と環境保全を結びつけている。コロンビア事務所は国や地方など17の行政機関と連携し、3,500人以上の行政職員を対象に訓練を提供し、環境犯罪(Environmental Crime)対策のキャパシティビルディングを支援している。
2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題
コロンビアでは、麻薬関連の犯罪と環境破壊が深刻な課題となっている。特に違法なコカ栽培、森林伐採、違法採掘、野生動物の密輸といった環境犯罪が、地域の生態系や住民の生活を脅かしている。コロンビアは、世界有数のコカの生産国であり、違法なコカ栽培が広範囲にわたっている。2011年のデータによれば、32県中23県でコカの栽培が確認されており、63,660世帯が違法なコカの栽培に関与していると推定されている (3)。また、違法採掘は水質汚染や土地劣化を招き、コミュニティ間の社会的紛争を助長しているとされている。これらの課題は、環境犯罪を取り締まりつつ地域住民の生計を支援することで解決が目指されている。さらに、UNODCは地方政府や先住民コミュニティと協働し、持続可能な開発モデルの構築を進めている (4)。
3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容
代替開発プログラム
代替開発プログラムでは、違法作物に依存していた農村コミュニティに合法的な農業技術を導入する取り組みが行われている。例えば、持続可能な作物栽培や市場アクセスの支援を通じて、コミュニティの経済的自立を促進している。重要な要素として、フェアトレードおよび有機製品の認証を行う国際機関、および商業的に実現可能な代替製品およびサービスの促進を行う民間部門とのパートナーシップの強化が挙げられる (5)。
現地訪問においては、シエラネバダ・デ・サンタマルタ山脈のアルワコ族の集落(カトゥンサマ先住区)を訪れた (5)。コロンビアのカリブ海沿岸北部と、その周辺のシエラネバダ・デ・サンタマルタ山脈は、何千年もの間、この地域に居住してきた先住民にとって神聖な土地であり、集落の中央に位置する大木には精霊が宿り、環境保護や生物多様性の考えを尊重してきた経緯を持つ。現地では、伝統的な文化や知識を活かしながら、違法作物の栽培から脱却する、コーヒーやカカオなど合法作物の栽培のための田畑や作業所が紹介された。
SIMCIプロジェクト
SIMCIプロジェクトは、衛星画像を使用してコロンビア国内の違法作物栽培をモニタリングし、環境への影響を評価するものである。モニタリングでは、違法作物の分布を特定し、それに基づき、政策提言や犯罪取締のためのデータを政府に提供している (6)。特に、違法なコカ栽培による森林伐採や環境破壊を抑えるため、リモートセンシングや地理情報システムを活用し、地域の環境変化を詳細に分析している。また、地方政府や環境当局との協力を通じて、違法採掘や土地収奪の問題にも対応しているという。
印象に残った質疑応答
現地訪問及びオフィスでのブリーフィング時の質疑応答では、環境犯罪の取り締まりと地域住民への影響をどのようにバランスさせるかが議論された。UNODCは法執行と地域支援の双方を重視し、持続可能なソリューションを提案しているとの回答を得た。また、違法採掘への代替策やコミュニティのエンパワーメントの必要性についての質問に対し、具体的な成功事例が口頭にて共有された。
4.参加者所感
現地訪問及びオフィスブリーフィングを通じて、コロンビアが直面する麻薬犯罪や環境破壊・問題の現実とその解決策に向けた努力を学ぶことができた。特に、代替開発プログラムにおける転換後のコーヒーをブランド化することで、市場価値を上げている点に興味関心を持った。また、SIMCIプロジェクトでの衛星データの活用は高度なものであり、高い関心を持った一方で、これらのデータやモニタリングシステムが行政機関の中でどの程度活用されているのか気になった。また、UNICEFなどにおいても同様の森林伐採に対するマッピングがされており、その他の国連機関との連携や構造にも関心が高まった。
注釈・引用文献
- (1)環境犯罪:自然環境や生態系に損害を与える違法行為のこと
- (2)SIMCIプロジェクト:Sistema Integrado de Monitoreo de Cultivos Ilícitosの略でUNODCがコロンビアで実施している違法作物のモニタリングシステムのこと
- (3) United Nations Office on Drugs and Crime. (n.d.). Alternative development: Colombia. Retrieved December 23, 2024, from https://www.unodc.org/unodc/en/alternative-development/colombia.html
- (4) UNODC提供資料より
- (5) Restrepo Ortega, L. (2014). Kutunsama & Don Diego, Guajira. Retrieved from https://restrepoortega.com/2014/07/02/kutunsama-don-diego/. Accessed on 23.12.2024.
- (6) United Nations Office on Drugs and Crime. (n.d.). Integrated monitoring system for illicit crops (SIMCI). Retrieved December 26, 2024, from https://www.unodc.org/colombia/en/simci2013/simci.html
