ミャンマー・スタディ・プログラム - 報告書「3.1.ヤンゴン」

3.1.1. 現地学生交流会

  • 日時:11月23日(水)2時半~4時半
  • 場所:Agga Youth Hotel 8階 食堂
  • テーマ:ミャンマーの若年層の実情

目的

ミャンマー人が何を感じているのかを知ること。
ミャンマー人学生たちが感じているミャンマーの実情について質問し、話し合うことによって、事前勉強で入れた知識以外に、現地の人が考えていること、感じているものを知ること。
地方を訪問する前に、大都市ヤンゴン在住のミャンマー人の若者と交流することで、地方とは違う都市部の視点からミャンマーの将来についての意見を聞くこと

交流会の進め方

  • アイスブレーク
    • 折り紙「鶴」折りレース
  • ディスカッション
    • 1部と2部でグループ編成を変更し、ディスカッション
  • 発表
    • 話された内容について自分たちでまとめて5分間のプレゼン

内容

アイスブレーク

折り紙をしたことがない人が多かったため、会話が生まれ、コミュニケーションをする土壌が生まれたように思われる。
チームごとに折るスピードを競い合ったことにより、連帯感が生まれた。

写真①

ディスカッション

  • 第一部: ディスカッショントピックは「ミャンマーの今までに関して(過去に関して)」と、かなり幅の広いテーマとなっていたため、話の内容がいろいろなところに飛び火した。さらに「過去」を話すには「未来」との比較で違いを説明するため、第一部と第二部の違いが無くなってしまっていた。第一部であらかた知りたかったことを話しきっていたような気もする。
  • 第二部: ディスカッショントピックは「ミャンマーの今とこれから(現在と未来に関して)」。翌年(2015年)の大統領選挙以降、どのような形でミャンマーが変化していくのかや、ミャンマーが将来、日本のような国になっていってほしいと思うかどうかを意見交流した。民主化以降の急激な社会変化を肯定的に捉える意見が多かったため、今後に期待する声は多かったが、不安を覗かせる一面もあった。
  • 総括:過去も未来も繋がっているため、テーマとしてはもう少し具体的なトークテーマについて話したほうがよかった。よりトークテーマを絞って他チームに対して共有しやすいようにする、もしくは明確にファシリテーターを置き、議論を潤滑に進めるなどの工夫が必要だった。

3.1.2. ブリーフィング

3.1.2.1. UN-Habitat

  • 日時:11月24日 (月)
  • 場所:Urban Research and Development Institute (URDI)
  • 担当者名、所属:大島美喜、Finance & Administrative Officer、UN-HABITAT Myanmar office

ブリーフィング内容

UN-HABITATが設立を助けたURDIのオフィスにて、前半はUN-HABITATがミャンマーで行っている活動について、後半はMySPで訪問する2つのプロジェクト概要についてのブリーフィングを受けた。

インプット内容

2008年にミャンマーを襲ったサイクロンナルギスは10万人以上の死者及び行方不明者を出し住民の基本的生活インフラを著しく破壊した。その際は居住支援に加えて、特に安全な水へのアクセスが失われていることに着目し衛生面での環境整備や意識向上を図った。こうしたプロジェクトを行う際は企業を呼び込みインフラ整備だけするものも見受けられるが、UN-HABITATは”People’s Process”と呼ばれる、住民自らが開発の主体となり自身の生活の改善に努める過程を重要視し、開発へのアプローチとして採用している。 実際のアプローチとしては、まず地方のリーダーたちを集めCDC (Community Development Council)という協議会を結成させ、彼ら自身が地域の脆弱な部分はどこか話し合い、その解決のための計画であるCAP(Community Action Planning)を作る。その計画を元にUN-HABITATが資金を援助し、実際のインフラ建設等に必要な技術員を派遣する。この際の資金の管理や建設に携わる人々も住民自身であり、それによってコミュニティの能力を高め持続的に地域が発展できる基礎を形成する。

3.1.2.2. UNDP

  • 日時:11月24日 (月)
  • 場所:UNDPオフィス、ヤンゴン
  • ブリーフィング担当者名/ ポジション:IGOR BOSC /Senior Program Advisor(担当者略歴:フランスで学位→UNDP→タジキスタンでのNGO→IOM→UNDP)

ブリーフィング内容

UNDPのミャンマーにおける活動は、2013年を境に大きく変化する。2013年以前は、UNDPの活動としては例外的に、受益者に直接支援を行う草の根支援を展開しており、政府との活動ではなかった。2013年に外国政府による制裁が停止された潮流の中で、ミャンマー政府はガバナンスや人権分野の課題に対して集中的に取り組み始めるようになった。

現在、UNDPが優先課題として掲げているのは、1. 地方政府によるガバナンス、2. 環境に対するレジリエンス(災害に対する対応力強化)、3. 民主的なガバナンスの3つである。

これらの課題に取り組むための、ある種普遍的な方法の一つは、1) 協働するパートナーとそのパートナーが持つ目的を理解し、2) 関係機関の能力を強化し、3)政府内であるいは市民と建設的な対話をし、4) 地域において正義や法の支配を確立することである。

インプット内容

  • 地方政府によるガバナンス
    • UNDPは地方に6つの事務所を配置し、地方政府との連携を図っている。これらの地方事務所が取り組んでいることは、ア、タウンシップの能力強化、イ、コミュニティ型の市民社会構築、ウ、包括的な金融政策(銀行の整備など)、エ、インフラ整備・維持などである。
  • 環境に対するレジリエンス
    • この分野におけるUNDPの取り組みは、ア、環境問題に対する政策策定支援、イ、自然災害への防災(災害に対するレジリエンス政策、DRR)、ウ、森林破壊(マングローブ保全など)である。
  • 民主的なガバナンス
    • この分野におけるUNDPの取り組みは、ア、包括的なシステムの能力強化、イ、議会改革(議題管理やコミュニケーション能力強化)、ウ、司法(最高裁判所における事例管理など)、エ、行政(委員会に向けた研修など)である。

質疑応答

  • Q. 真の民主化に向けて、ミャンマー政府と連携する上で難しい点は?
    • A. 問題は、「民主主義とはなにか」という点になってくる。近年まで政治的なダイナミクスが存在せず、未だマイノリティが取り残されている状況の中で、民主化プロセスは徐々に進展しており、今後議論の余地も増えていくのではないか。常に異なるアクターとの対話や相談を繰り返していくことで少数民族を包括的に巻き込むことが大切である。
  • Q. 短期的にUNDPが主に取り組む、次なる目標は?
    • A. 持続可能な形で国を維持していくことである。今までは必ずしも「持続可能性」が確保されていなかった。度々国際機関に求められることは、「政府がアクセスのない遠隔地域のケアをすること」であるが、これにばかり取り組んでいると政府の「満足」が得られないという側面もある。よって今後草の根レベルでいかに物事を進めるか、が課題となると思う。
  • Q. 環境問題におけるガバナンスはいかに進めるか?
    • A.環境に大きな影響をおよぼすのは、法律である。だが、ミャンマーに法的なフレームワークが導入されるのは、今しばらく時間がかかると思われる。今後はミャンマーで実現可能な選択肢を模索することになる。
  • Q. 開発とは何のためのものだと思うか?
    • A. 開発は、将来の世代のためのものであると思う。民主的なガバナンスというのも、人々の利益になるから実現すべきものであるはずである。チェック&バランスを怠らずに、国/政府の機能をコントロールしていくことが重要である。
  • Q. UNDPにとっての一番のチャレンジは?
    • A. 翌年(2015年)の選挙である。選挙とは、国の意思決定の過程であり、市民が政府をコントロールする手段でもあり、重要性は高い。2015年の選挙に向けたマンデートは現在未定で、コミットメントの有無も未定である。
  • Q. 軍事政権が国を開放するまで、開発は待つべきだろうか?
    • A. 政府/国をあまりに迅速に開け放ってしまうと、民族浄化が起きる可能性がある。まずすべきことは、課題をパッケージ化することである。信頼性のある政策アプローチを用意して待つことで、いつか政府が国際機関を信じてくれるように準備しておくことが重要だ。
  • Q. 多国籍企業一般についてどう思うか?多国籍企業は、時に開発機関の開発努力との繋がりを絶ってしまうことがある。多様な機関や企業が共に協力できるようにすることについては、どう思うか?
    • A. 近年民間企業におけるCSR(Cooporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)への注目が高まっている。特に多国籍企業においては、2000年に発足した「グローバルコンパクト」とCSRをリンクさせることが、今後進むべき道と言えるだろう。いかに地域におけるアクターをグローバル・コンパクトに包括的に巻き込めるか、が今後の課題である。
  • Q. どうやったらUNDPで働けるか?
    • A. スピーカー自身にとっては、言語力が一番の自信になっている。七カ国語を操る力が認められ、自分自身は採用されたのではないかと思う。

3.1.2.3. WFP

  • 日時:11月24日 (月)
  • 場所:WFP(World Food Program、国連世界食糧機関)Yangon Office
  • 担当者名、所属:舛岡真理、UNV Logistics Officer, WFP Myanmar Office

ブリーフィング内容

  • ミャンマーでの食料配布概要
    • ミャンマーは温暖多湿で豊かな土壌であり、もともと食糧自給率は高い。しかし、運搬や配給インフラの問題、周縁部地域での独立紛争などにより大きな貧富の格差が生じている。米や穀物を中心にシャン州やラカイン州などで配布プロジェクトを実行中。各地の拠点地域にWFPから運搬され、各家庭が定期的に食料を受け取りに行くようにしている。日本はWFPミャンマーの有数のドナー国の一つである。昨今、配布穀物を地元の市場取引にWFPが参入することによって確保する動きが進みつつある。
  • 学校給食プロジェクト
    • シャン州組が訪問予定の学校給食プロジェクトについて解説していただいた。ミャンマーの農村では半分以上の子供たちが満足な初等教育を受けていない。WFPミャンマーオフィスは就学率の向上と栄養状態改善を目的として高栄養価ビスケットの配布と家族人数分の食料米供給を行っている。子供たちは学校に行くことで最低限の栄養が補われ、親たちは子供を学校に行かせることで家族の食料を手に入れることができるため、積極的に通学を促すようになる。
  • 災害時の緊急対応
    • サイクロンナルギスがミャンマーを襲った際は、大規模に食糧援助を展開した。次回の災害に備えた食料の備蓄体制の構築なども進められている。

質疑応答

  • Q. 学校給食プロジェクトで配布した家庭用の配給米が転売されることはないのか?
    • A. まだ今回のプロジェクトは始まったばかりである。偽って配給米がいきわたっていないかや、配布米が各家庭の食糧事情改善化につながっているかどうかを監視する体制構築が課題である。
  • Q. WFPが穀物市場に参入することで悪影響は出ないのか?
    • A. 価格高騰や地元の食料不足などが引き起こしかねないので十分に注意が必要である。ただ、地元の穀物をWFPが購入して使用することによって地域経済の発展と補給の安定化が見込めるので全世界で地元市場からの調達が徐々に進んでいる。

参加者の声

  • ブリーフィング前のその機関・プロジェクトへの印象
    • WFPはロジスティックのプロフェッショナルで、非常に地元の人々の身近で活躍している印象が強かった。
  • ブリーフィングで学んだこと/発見したこと/面白いと思ったこと/疑問に思ったこと/もっと知りたいこと
    • 食料配布を継続し続けていくと地元の人々が自立することの妨げになるかもしれないという課題をどう解決していくかが大変難しいと感じた。限られた予算の中で優先順位をつけ、食料という人々の日々の生活に密着し、緊急性の高い物資をいかに効率的に配分していくのかをより多くの職員の話を聞いて知りたくなった。
  • これから自分のキャリア(仕事でも勉強でも)に活かせそうだと思ったこと、どう活かせると思ったこと
    • サイクロンや地震など、大災害が起きた際は世界中から多くのファンドが集まるが、常に資金不足に悩ませながら食料配分に心を配るお話が印象的だった。ファンドマネージメントを学び、将来や現場で役立てるかという専門性を身に付けたいと思った。

3.1.2.4. World Bank

  • 日時:11月24日(月)
  • 場所:Agga Youth Hotel
  • ブリーフィング内容:ブリーフィングなし(食事会という形式で、質疑応答が中心であったため)。

質疑応答

  • Q. 参加型開発は、農村での意思決定を多様化させることで農村におけるインフラ問題を改善ししていくことであり、世銀は同時に女性の意思決定を推進しているが、実際農村によっては男社会な場所もある。そういった農村で女性の意思決定への参加を促進しながらインフラ整備を行うために世銀が特別行っていることは何かあるのか?
    • A. 実際にそれは今世銀が直面している問題であるが、実際に現地でカネをもっている人間が権力を握ってしまう問題をこれからも考えないとならない。世銀としては基本的に資金援助と知識共有という観点でしか対応できない。そういった場合は、現地のNGOとの協力を密にして取り組まないといけない。
  • Q. 患者に対する医療従事者の不足、特に地方での医師不足がミャンマーでは今問題になっていると思う。ミャンマーの安定した電気供給と医療サービスへのアクセスに20億ドルを融資するという新しい政策の元では、地方における医師数の増加のためにお金が使われることはあるのか。もしくは、なにか他の方法で医師不足の問題解決に動いているのか?
    • A. 地方では電気のインフラがあまり整っておらず、それが高度な医療ができない一因である。電気のインフラを進めるとともに、最貧困層が医療サービスへアクセスできる割合が著しく低いのでそこを改善する必要がある。ミャンマーでは治療は無料だが医薬品は自己負担しなくてはならない。そこに対する経済的負担を減らすことを優先している。

参加者の声

  • ブリーフィング前のその機関・プロジェクトへの印象:
    • 世銀は資金援助しかできない。参加型開発とは言っても意思決定に携われるのは少数の権力をもった人々ではないのかという疑問。
  • ブリーフィングで学んだこと/発見したこと/面白いと思ったこと/疑問に思ったこと/もっと知りたいこと
    • 世銀が資金援助ではなくて、これまで途上国支援を行ってきた経験をもとに積み重ねてきた「知識」の共有を現地政府であったり、NGOに対して行っていることを知ることができた。
    • ボトムアップを通じた開発というのは確かに大事だけれども、それはそのコミュニティの構成員が平等の立場に近い状況にあった場合に効果を発揮するわけで、そうでない場合には効果を発揮せず、一人の権力者が台頭してしまうこともある。つまり、必ずしもボトムアップが善というわけでなく、それは状況によって変わるのだということを世銀所長の言葉を通じて考えることができた。
    • 世銀とNGOがどのような関わり合いを持っているのかもう少し知りたかった。
  • これから自分のキャリア(仕事でも勉強でも)に活かせそうだと思ったこと、どう活かせると思ったか
    • 開発の現場で働きたいという思いがあるなら、場合によっては国際機関よりも現地のNGOなどの実際に現場に入って動いている団体の方がやりがいを感じられるのではないかと思った。