ネパール・スタディ・プログラム ー 報告書「第2部 第3章 第14節 国際連合児童基金(UNICEF)」

2016年11月25日

執筆担当者:後藤正太郎

概要

1946年12月11日に設立され、本部はアメリカのニューヨークにある。子どもの権利の保護および子どもの基本的ニーズの充足、子どもの潜在的能力を十分に引き出すための機会の拡大を推進すべく、国際連合総会により委任されている。主な活動分野は、保健、HIV、水と衛生、栄養、教育、子どもの保護、社会的保護(Social Protection)、共生社会の実現、緊急支援・人道支援、ジェンダーの平等である。150以上の国と地域で活動している。

(出典:公益財団法人 日本ユニセフ協会 HP)

主要な論点

  1. ネパール全般について
    • 後発開発途上国(LDC)の1つで、雇用を創出するような主要な工業がない。出稼ぎ労働者として海外で働く人々からの送金が、GDPの3割を占めている。
    • 1996年から2011年まで、11年間内戦が続き、2008年に内戦終結後初の選挙があったが、未だに政権が安定していない。憲法制定の過程の中で、一部民族の反対でインドとの国境が数か月に渡って封鎖になった。
    • 123の言語が存在し、126のカーストに分かれているなど多様性の国家である。併せて、動植物も多様である。
    • 気候変動や地震などに対して、世界的に脆弱な国の1つである。
  2. 子どもについて
    • 出生1000人当たりの子どもの死亡率は1990年の327人から2015年の36まで大きく減少した。しかし、現在のレベルでも死亡数は高く、栄養不良のため心身の成育状況も悪い。
    • 児童婚によって、途中で学校を辞めてしまう児童がいる。
    • 児童(5-17歳)労働が多い。
  3. ネパールにおけるUNICEFの活動について
    • ネパールにおける現在のユニセフの各種活動については、2015年の震災への対応の他、、栄養、保健、教育、水と衛生などのプログラムの予算額が多い。資金の集め方は、使途を限定されていない ‘Regular Resources’(加盟国及びユニセフ国内委員会などからの拠出による)から来るものが約3割、その他特定のプログラム・プロジェクトに限定しての拠出(’Other Resources’)が約7割である。現在は、震災の影響で予算及び職員数が増加している。
    • ネパールには国全体で75の郡(district)がある。ユニセフの活動は、国全体をカバーするもの(政策、法制、プログラム開発)と、特に貧しい地域への支援の2つがある。現在後者に関しては、通常の国プログラム(Country Programme)に関連して15郡、また、震災で特に深刻な被害を受けた14郡において活動している。
  4. 2015年度の震災について
    • 被害額は、2014年のGDPの36%にも及んだ。
    • 震災後の緊急支援では、UNICEFは水と衛生、栄養、教育、保護の分野で調整役を務めた。
    • 国としてのネパールのおかれた状況(ユーラシア・プレートとインド亜大陸・プレートがぶつかる真上に位置する)からして、今後も大規模な地震の起こる可能性は大きい。

印象的なことば

UNICEFは、子どもというターゲット・グループへの支援をミッションとする唯一の国連機関

所感

  • UNICEFという組織の特徴や活動内容について幅広く学ぶことができたいへん勉強になった。特に「UNICEFは、子どもというターゲット・グループへの支援をミッションとする唯一の国連機関」という言葉がたいへん印象に残っており、今まで水・衛生の観点から子どもの下痢症について考えてきたが、お話を伺った後からは、その他の指標からも子どもについて考えるようになった。特に、後日いただいたネパールにおけるMICS(Multiple Indicator Cluster Survey)の資料、およびMICSのホームページから各国の状況について学んでいる。水・衛生と他の指標の関連性についても考えていきたい。
  • 緊急支援について、理解を深めることができた。どうしてクラスターアプローチが必要か、実際に活動されている現地事務所代表の穂積様から詳しく伺うことができてよかった。
  • 震災後の国際会議で流されたビデオや、震災直後に穂積様が見た風景などを詳細に伺うことができ、改めて震災の被害について考えることができた。