ネパール・スタディ・プログラム ー 報告書「第2部 第3章 第7節 世界銀行(World Bank)」

訪問日:2016年11月24日

執筆担当者:中原隆伸

概要

世界銀行は、国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)の2つの機関で構成されており、「極度の貧困撲滅」及び「繁栄の共有促進」という二つのゴールを2030年までに実施することを目標に掲げて活動を行っている。具体的には、被援助国の経済状況に応じて無利子融資や低利での貸付、贈与などを行い、被援助国が教育、保健、行政、インフラなど分野に投資するのを支援している。

主要な論点

地方訪問の拠点都市、Nuwakotからさらに車で数時間かけて、プロジェクトサイトの一つMahakali村を訪問。震災前よりも耐震性の高い建物を建てられるよう、石工(Mason)の訓練をしているところを見学した。被災した14の県にある500以上の村で、このような訓練が無料で行われているとのこと。

なお、同地域では石が現在も主な建築資源として使われているため、職人を大工ではなく石工と呼んでいる。訓練では建築スキルの確認や、より安全に家を建てるために必要な知識を教えていく。また、今までヘルメットや手袋を使わないで仕事をしていた人も多いため、安全性の重要さも説明する。訪問時には、今までの石とコンクリートのみではなく、写真のように鉄筋を入れて補強することを教えていた。

写真①

鉄筋補強したコンクリートがどれだけ強いかを石工にわかりやすく見せている。下の写真は、一度重みに耐えかねて割れたコンクリートの下に鉄筋を二本敷いて石を載せたところ、強度が約7倍になった(7倍の数の石を載せても割れない)という実験をしているところであり、我々素人目から見ても非常にわかりやすかった。

写真②

なお、世界銀行自体は実際には訓練を行わず、現地での事情に詳しいNGOに実際の訓練は行ってもらっているとのこと。

質疑応答

Q.今の夢は何ですか?

A.自分の家は地震で壊れてしまって、仮設住宅に住んでいるので、子供たちにはこんな苦労をしてほしくない。だからこのトレーニングを受けてもっと安全な家を建てて、皆に安心して住んでもらうこと。

Q.子供たちに、ご自身の職業(石工)を継いでもらいたいですか?

A.子ども達には、好きなことを学んで好きな仕事についてもらいたい。

印象的な言葉

上記質疑応答の中にもあったが、自分たちの職業を継いでもらいたいという希望を持っているかと思ったが、子ども達には好きなことをやってほしいという意見が大半で、「いい意味で予想が裏切られた」という感想を参加者の一人が寄せていた。

所感

個人的に今回の訪問で一番印象に残った。その一番の所以は、プロジェクトサイトまでの山道。四輪駆動でなければ絶対に登れないであろう、一部は道路が川に使っているとてつもない山道を数時間かけて登り切った先でのトレーニングは、上述の通り素人の我々でも非常にわかりやすいものだった。村人たちにも受け入れられているように感じた。

被援助国の「オーナーシップ」を重視するのは、半ば開発支援に携わる人間として基本中の基本と見做されている重要概念だが、そこから一歩さらに踏み出す形で、自らは資金提供を行うのみで実施主体にはならないところまで徹底している世界銀行の支援の在り方に共感を受けた。実施主体とならないリスクとして、資金が効率的に使われているかの監視メカニズムがしっかりしていることが重要となってくるが、今回の訪問ではしっかりとなされているように感じられた。