ネパール・スタディ・プログラム ー 報告書「第2部 第3章 第8節 国際協力機構(JICA)」

2016年11月22日

議事録担当者:今井美穂、大淵和憲

概要

JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っている。ネパールにおいては、過去40年以上にわたり、農業、教育、保健医療、道路、電力、空港、さらには上記の和平と民主化の促進支援等、様々な協力を行っている。2015年の震災以降は、これまでの協力に加え、「より良い復興(Build Back Better)」を合言葉に、より災害に強い社会を築くための協力を展開している。

主要な論点

  • JICAの震災における支援内容と金額(320億円の配分)は以下の通り
    • 140億円:被災学校の再建(有償資金協力)
    • 120億円:一世帯20万ルピーの補助金の支援とmasonsへのトレーニング等の技術支援(有償資金協力)
    • 40億円:病院、橋梁、水道等のインフラ再建(無償資金協力)
    • 20億円:コンサルタントチームを通じた技術協力や都市計画の支援(技術協力)

質疑応答

Q. 脆弱性の高い人々に支援は届いているのか。

A. JICAは組織の性質上、先方政府を通じた協力が中心のため、NGOのようにVulnerableな人だけを区分して支援することはできず、全体の政府システムを支援する中でVulnerableな人たちにも支援が行き渡るよう意識して支援は行っているが、実際末端で本当に脆弱な人々に支援が行き届いているのかの把握は容易ではない。

Q. 「日本をモデルに発展させる」ということは本当に正しいことなのか。

A. 日本をモデルにすることが良いというわけではなく、やはり自分たちの国(ネパール)における生活環境を少しでも良くするための選択肢として日本のやり方という一種の指針を示すことは必要なことだと思う。また日本人も、ネパールの人々から学ぶことがある。どちらかがどちらかから学ぶというより、お互い学びあうことが大切なのではないかと思う。

Q. 世銀と一緒に住宅支援を行うのはなぜなのか。

A. 過去の大災害では支援機関によって支援内容がバラバラになり被災者間で不公平な状況も生まれた。このため、当初から支援方法には統一性が必要という議論があり、世銀はじめドナー間で十分協調して住宅再建支援を行うことが意識されていた。また、今回JICAが直接的に住宅再建支援を行うのは初めてだが、世銀は前から行っているので、今回と同様の支援金配布方式での支援経験もある。他方、日本は耐震建築の技術的な知見があり、双方を補完しあって協力して行うことが良い支援になるとも考えられた。

Q. 支援のスピードが支援する側(援助機関)とされる側(ネパール政府)ではあわないことがあると聞いたが、どのように感じるか。

A. 日本での報道ではそのような声が聞こえてくるが、援助の現場にいるとその点について現地側ではどのように感じられているのか声が聞きづらい(特段の報道がない)ように感じる。ネパール人は干渉を好まない気質であることが関係しているかもしれないが、自分たちでやりたいという意思が強く、あまり外国の援助を入れたがらないように感じる。なお、本当に支援を根付かせるためには支援する側の感覚で進めようとするばかりではなく「待つ覚悟」も必要であると考える。短期的に上がる成果は往々にして持続しない。

Q. ネパールの受援力についてどう感じるか。

A. 個々の能力は高いが、institutional capacityが高くないように感じる。そのため人が変わると、物事がスムーズにいかなくなる。また案件の形成能力も高くない。即ち内容を詰め切れる能力に乏しく、案件リストが出てこない。他にも計画調整能力が低かったり、省庁間のコミュニケーションもなかったりする。もともと行政のキャパが少なく、職員が圧倒的に少ない。

Q. seamless、build back betterな支援について具体的にどのようなことをしているのか。

A. 過去の災害では、緊急援助実施から本格的な復興支援を開始するまでの間に時間的な空白ができがちだったが、今回の震災では応急対応期から復興期の間をシームレスにつなぐために国交省の専門家3名が現地入りし、各方面で調整いただいた。BBBについても、国内行政の知見をインプットし日本らしい実際の復興経験に基づく具体的な提言を行える体制を維持してきた。人道支援はもちろん重要であるが、過保護な支援は先方をスポイルさせてしまう。こちらが手を加えるというよりも、オーナシップを維持させつつ、でも継続的に協力していくことが大切。

印象的な言葉

「日本はやりすぎな面もある一方で、ネパールはやらなさすぎ、お互いが学びあうことが大切だと思う。」という言葉は、「発展」している日本が「発展途上」にあるネパールから学ぶことがあることを確認させられて、印象深い言葉だった。
「押し付けの援助はやりたくない、彼らが自分で計画を作ってコミットするべき」という言葉からは、欧米系のスタイルにありがちな「これが答えだ」と見せるのではない、住民と行政との信頼関係を地道に構築していくという日本的な丁寧な姿勢を垣間見ることができた。

所感

担当してくださった、永見様、田中様ともに私たちのすべての質問に丁寧に答えてくださった。和やかな雰囲気の下で行われ、多くの質問が出ていた。先進国の援助機関が、自国の経験をもとに支援を行うことで批判がなされることもあるが、そうした批判について自問自答しながら支援を行っている姿は印象的だった。