パプアニューギニア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:OISCA」

1.組織概要(事業目的、ゴール等)

オイスカ・インターナショナル(OISCA:The Organization for Industrial, Spiritual and Cultural Advancement-International)は日本に本部を置く、34の国と地域に組織を持つ国際NGOである。1961年に設立され、「全ての人々がさまざまな違いを乗り越えて共存し、地球上のあらゆる生命の基盤を守り育てようとする世界」を目指して活動している。主要事業活動として「ふるさとづくり」を活動の根幹に据える。オイスカの目指す「ふるさと」とは、地球上に生きる人間や他の生命がバランスを保ちながら共生する持続可能な世界を示す。この「ふるさと」を守り育てるための実践活動がオイスカの活動であり、これを「ふるさとづくり」と呼ぶ。海外開発協力、「子どもの森」計画、人材育成、啓発普及の4つの柱を軸として活動する。パプアニューギニア(PNG)におけるプロジェクトとしては「子どもの森」計画、環境保全計画が実施されている。

※公益財団法人オイスカ http://www.oisca.org/about/index.html , accessed on 14 October 2018

2.ブリーフィング、プロジェクト訪問において説明された内容・質疑応答の詳細

1987年にラバウルに研修センターが開設された。この研修センターでは有機農業の促進を活動の中心とする一方で、農業を通して地域の環境保全や発展に貢献する若者の育成も行う。持続可能な農業を行うために、現在は従来の農法の代わりに有機農法の導入を指導している。また、若者の育成においては、具体的には「子どもの森」計画として、PNGの子どもに対しての環境教育を行う。現在だけではなく将来にわたって環境を守っていくためには、人々が長期的な視点を持って保全活動を行っていく必要がある。そのためこの「子どもの森」計画では、子どものうちから環境についての学びの場を設けたり、植林をするなどの体験の機会を提供している。

また、地域の人々に対してPNGの環境を長期的に維持する呼びかけも行っている。例えば、成長に30年~40年かかるが非常に硬く大きな木である「チーク(teak)」という木を植える活動をしている。これは、現地ではユーカリの木などのように、数年、長くても十年ほどで成長する木の植樹が選択されがちだが、より長い目で見た時にPNGの環境の維持に効果的なチークの植樹を広める意図がある。このように、オイスカは子どもたちに対して、また現地の人々に対して農業や環境保全の知識を広めること、そして長期的な視点を持って考える機会を提供している。

<質疑応答>

1)PNGは非常に大きな島国であるが、環境破壊により生じる問題にはどのようなものがあるか。

――大きな島国だからこそ、それらは大きな問題。例えば、高地で生活する人々と海の近くで生活する人々は、遠いようでいて密接に関連した環境のもとに生活している。森林を乱伐すれば、海の環境も変化してしまう。それに対して私たちはできるだけ負荷を小さくする方法を選んでいる。私たちは団結し、環境を保全しなければならない。

2)有機農法の浸透において大切なことは何だと考えるか。

――オイスカでは研修センターで有機農法を人々に教えている。まず、教育に関しては情報を与えることが必要であり、そして専門家からの説明が必要となる。なぜ有機農法が必要で、PNGの農業において重要なのかを説明する。理解してもらうまで根気よく説明をし続ける。そして勉強してもらう。なぜ必要なのかを住民自身が理解することが非常に重要。そしてそれには日本からの専門家だけでなくオイスカの職員、大学と団結して人々に教育するということが求められる。

3)どのようにしてオイスカの事業を宣伝・推進しているのか。

――この研修センターで学んだ学生が、地元に帰るなどPNGの各地へ移動し、彼らのコミュニティだけでなくその付近でも事業を広めることができる。また、「子どもの森」計画のように、子どもや学生が積極的にやってくる仕組みを作っている。

4)PNGは大きな国であり、だからこそ土壌をはじめとする環境が全く異なる。そのため、一つの農法を教えるということは不十分ではないか。

――気候・土壌が異なるため、例えば高地地方と海の近くの地域では育つものも全く異なる。高地地方ではそこに適した作物を育てる方法を教える必要がある。ただし、国が大きく多様な人、多様な気候が存在するためひとつの農法だけを教えるということは難しい。やはりその土地に合った農法を考え、教えていくことが求められる。

5)人口増加が起こっていて、これからも続くだろうと予測されている中、食糧生産量の不足あるいは食糧生産量増加に伴う環境破壊についてどう考えるか。

――人口増加は確実に起きているが、食糧には困らない国なのでモチベーションがあまりない。PNGは森林・海の資源・人・農業など様々な面で非常に豊かな資源を持っている国である。しかしそれらが有効に使われていない、つまり未開発ということが大きな問題である。その原因は、人々の関心の薄さ、政府による強力なリーダーシップの不足が考えられる。

3.参加者所感

有機農法の導入を指導しているとのことだったが、「現在のままの農法では環境等の問題により長期的な目で見ると損を被る。より長い期間で考えた時、環境に配慮した力強い農業である有機農法は積極的に取り入れていくべき」という考えを住民に浸透させることの難しさを述べられていた。これは「今」や「十数年後」の近い未来は暮らしが成り立つため、「数十年後」に環境破壊が進んで生活が成り立たない環境を想像できないということが挙げられる。ここに、人々が開発にあたって長期的な視点を持つことの難しさを感じ、現地の人々が数十年後の未来の環境においても持続可能性に配慮した開発を行えるようにするにはどうすれば良いのか、深く考えさせられた。