ルワンダ・スタディ・プログラム - 報告書「2.5.国際連合児童基金(UNICEF)」

写真①
写真②

1.訪問先

UNICEF Rwanda Office

2.該当テーマ

UNICEF Rwanda事務所の事業内容

3.組織概要(事業目的、ゴール等)

1946年に、第二次世界大戦で被災した子どもたちに対し、緊急支援を行なうために設立された国際機関。
すべての子どもたちの権利が守られる世界を実現するために、世界190以上の国と地域で、保健、栄養、水・衛生、教育、HIV/エイズ、保護、緊急支援、アドボカシー(政策提言)などの活動を実施。子どもの生存のための基礎的な社会サービスの支援に加え、UNICEFは常に子どもの権利の擁護者、代弁者として、子どもたちをめぐる現状を分析・モニタリングし、具体的な政策提言を各国の指導者や国際社会に対して行っている。

4.ブリーフィング、プロジェクト訪問において説明された内容・質疑応答の詳細

ジェノサイド後、ルワンダは大統領の強いリーダーシップの下、目覚しい発展を遂げている。第二次世界大戦後の日本に似ている。

  • 1994年のジェノサイドから24年。ジェノサイドで親がおらず孤児院に預けれらた子、親戚に預けられた子など、親や親戚に読み聞かせをしてもらった経験がない世代が親になりつつある。自身が昔話を聞いたり童謡を歌ってもらった経験がない親たちは子供に昔話や童謡を聞かせることができない。
  • 5才以下の子供たちの家庭で3冊以上絵本を持っている家庭が1%以下
  • 直近3日間に親に遊んでもらった子供は、訪問した家庭の半数しかいない
    (統計の出典は2014-15 Rwanda Demographic Health Survey)
  • 今もルワンダは最貧国の一つなので、幼稚園の数が少ない。3-6才の子供たちで、幼稚園や保育園など集団生活ができているのは13%しかおらず、残りの子供たちはいきなり小学校から進学する。そのため、鉛筆が持てない、丸が書けないなどの問題に直面し、その後の教育過程で落第しやすくなる。また、子供は生まれて最初の3年間で、一生に関わる脳の発達がある。その間に知育教育がないと、脳の発達が遅れる。

UNICEFルワンダは、ラジオ局とタイアップして、ラジオで子供たちの脳に働きかけようという試みを行なっている。(NHKでいう「お母さんと一緒」的なもの。)子供たちにとって優しい言葉や歌などで脳に働きかける。
また、ルワンダの昔話からキャラクターを採用(ライオンがリーダー、うさぎはずる賢い、牛は平和を愛する、やぎはおっちょこちょいなど…)し、歌を歌ったりしながら子供たちに親しみやすい番組を作っている。

Social Skill(例:友達と仲良くできるか、友達と順番に遊べるか), Emotional Skill(例:友達と喧嘩した時に、殴ったりせず、言葉で自分の気持ちを説明し、自分の感情を制御できるか), Ready for School(例:ABCや10までの数字、動物の名前が言えるか), Healthy Habits(食事の前の手洗いや、好き嫌いなく食事ができるか)というように教育目標を定めている。

従来、ルワンダには幼児向けの番組がなかった。これが初めての幼児番組。

ルワンダでは、子供は小さな未熟な人として捉えられていたため、幼い頃に話しかけても理解できないだろうと思われていた。そのため、幼い頃から知育を行うことの重要性を大人たちに認識してもらうことから初めていった。

幼い頃に知育する重要性を親に説明し、理解してもらい、放送協会や政府と提携し、専門家も交えて20~30人によるプロジェクトメンバーを結成。
そこでワークショップを行いコンテンツを決定、正しい知識をいかに子供に分かりやすく伝えるかを以下のサイクルで検討。

Assessment - Selection of topics & storytelling - Quality assurance by experts - scrypt writing - Production with children - Broadcast(ルワンダ放送局が週に二回放送)

◆ニーズアセスメントはどのように行う?どのように必要性をアピールしたか?

従来、ルワンダの子供たちには慢性栄養不良というのが大きな問題としてあった。子供の栄養不足、食事回数の不足、手洗いなどの病気の予防ができていない、妊娠中の母体の栄養不足、などといったものが背景としてあった。その中で、子供ができること、大人ができることを明確にするために、ラジオを作成し、子供達向けのプログラムとそれに付随する大人向けのプログラムを作った。また、子供達の反応をモニタリングしながら作成した。

◆親に番組をしっかり浸透させるような工夫は?

ラジオを持っているのは子供ではなく大人。いかに親の気を引くかが重要であった。そのため、大人に番組を楽しんでもらう、大人もためになるコンテンツを重視した。そこで、幼児向けである一方で、大人向けの家族ドラマやクイズ(回答すれば抽選で景品プレゼント、当選者の発表は翌週の番組)を提供する工夫を行なっている。基本的にはソーシャルマーケティングの手法で浸透させていく。また、番組の地方巡業などを行なっている。

◆ルワンダ政府の反応はどうでしたか?予算承認のハードルなど。

ルワンダ放送局は公共放送のため、子どもたちのためになるエンターテインメントというこのプロジェクトと相性が良かった。また、当時、アフリカ大陸でいち早くデジタル放送に切り替えたルワンダ放送局は新しいコンテンツを求めていたので、かなりうまくタイアップできた。

予算的には初めにIKEA財団から協賛をいただいた。2016年にNHKの「日本賞」教育コンテンツ国際コンクールにてファイナリストに選ばれたことから、この「イテテロ」プロジェクトはオランダ政府からも協賛をいただき、ラジオ番組からテレビを含むマルチメディアプロジェクトに成長している。イテテロは現地語で「育みの場」という意味。

5.参加者所感

  • ジェノサイドの後のルワンダの発展の一方で、幼児向け知育の重要性についてはまだまだ理解が十分ではない。
  • 未来を担う子供たちへの教育の質の向上に向けて、親も巻き込んだ取り組みが非常に重要である。幼い子供にとって親は絶対であり、親の理解が不足すると、世代を超えた負の連鎖は断ち切れないと感じた。
  • さらに現在の子供たちへの平和教育やメンタルケアについて、UNICEFの取り組みを知りたいと思う。