USPブログ⑩ - ウガンダ・スタディ・プログラム  第四回勉強会レポート

「In larger freedomの実現ー教育・医療分野を中心としてウガンダの未来を担う世代の自由・可能性を広げる開発を考えるー」

9月27日(日)に第4回勉強会を行いました。テーマは、「In larger freedomの実現ー教育・医療分野を中心としてウガンダの未来を担う世代の自由・可能性を広げる開発を考えるー」。

今回は本勉強会とは別に、事前にプレ勉強会、事後に振り返り勉強会も実施し、豪華3本立ての会を通して、広く深く学びあいました。

勉強会の様子

◼️プレ勉強会

SDGsのキーワードとなる”In larger freedom”について、開発の文脈で展開されてきた「自由」の思想を理解し、目指すべき「自由」とは何かについて議論しました。

機会や権利が与えられたとしても、それを行使できる能力がないと自由は実現されない。

レクチャーパートでは、人間が実現可能な生き方の幅(選択肢)の最大化を目指す考え方である、経済学者アマルティア・センの潜在能力(ケイパビリティ)アプローチについて学びました。

議論パートでは、「自由=選択肢が増えることによって人は本当により幸福になるのか?」「良い伝統を捨てる自由、悪い伝統を継続する自由に対して国際社会はどう向き合うべきか?」など、「自由」について議論を行いました。

「自由と「幸せ」は別の概念として考えた方が良いのではないか?」「当事者の意思なので、伝統が失われるとしても仕方ないのではないか。介入しようとするのは外部者のエゴではないか?」などの意見がありました。

プレ勉強会で、望ましい「自由」について、批判的な視点を含めて議論を行い、本勉強会では、センの言う「自由」が望ましい前提で議論を進めていきました。

◼️本勉強会

本勉強会では、実際のウガンダ人の人生のストーリーに沿って、将来の自由・可能性を制約する要因を考える中で、現地の人々がどんな人生を送るかを想像し、その人たちの視点に立って考えました。

ウガンダでは19歳以下人口の比率が非常に高いです。一方で子どもの将来の「自由」を制約する要因は、様々あります。子どもの将来の「自由」を制約する要因として、特に「健康・水/衛生・栄養」「教育」について議論を行いました。

「自由」を制約する要因①健康・水/衛生・栄養

「健康が保障されていなければ、子どもたちの将来は拓けないのではないか」という仮説のもと、ウガンダでの問題点とその原因について確認し、「生きられる自由」と「健康でいられる自由」がどのように奪われ、将来の様々な選択肢が制限されているか学びました。

最終的には、今を生きるための緊急的な支援と将来への投資となるプライマリ・ヘルスケアへのアプローチが必要であることが分かりました。

「自由」を制約する要因②教育

ここでは、「教育」とはそもそも何かという概念を踏まえつつ具体的なウガンダの学校教育の実態を深掘りしていきました。ウガンダでは初等教育に入学はできますが、中退も多く、約半分しか卒業できておらず、卒業しても学力は十分に身についていない現状があります。その背景には、教育のハード面(教育施設や教材・教具などの物的側面)・ソフト面(親の経済力・理解/教師の質)での課題があることを学びました。それにより、実生活では収入や政治参加、福祉サービスを利用する能力等に制限が起きている現状が分かりました。

特に自由が制限されている人々

特に自由が制限されている人々として女性・LGBT・障がい者・もと子ども兵士の実態についても学びました。今回の勉強会では、自由を制限されている対象として特に子どもに焦点を当てましたが、そこにさらにジェンダーや障がいの有無など他の要素がかけ合わさると、さらに重い障壁が生まれます。二重・三重の危険性が生まれている実態の中で、「自由」を考える上で、特に「自由」が制約されるグループを作らないように考慮する重要性を学びました。

ディスカッション

本勉強会の最後は、あるウガンダ人の事例をもとに、彼ら彼女らの自由を制約する要因は何か?その要因の因果関係はどうなっているのか?どこに突破口(レバレッジポイント)があるのか?という観点で議論しました。

議論後は、「様々な要因がループとなり負のサイクルを作っている」「同じ事例を扱っていても考え方によりループが違ってくる」など多くの発見がありました。

◼️振り返り勉強会

本勉強会を終えて出てきた疑問には、教育・医療に関してはこれまでの多くの支援が行われてきたにもかかわらず、なぜ未だに大きな問題となっているのか?」「課題ばかりが指摘されたが、優れている点は何があるのか?」などがありました。

本勉強会で最後に行ったディスカッションを再度行いつつ、ウガンダへの開発支援の歴史やウガンダ政府が行なってきた政策について学びました。医療面では、実はエイズ対策の成功国として有名であったり、教育面では、「質の改善が必要」と長年言われているが、最近だとむしろ後退していることが分かりました。

改めて本勉強会を振り返り、ウガンダの実態をクリティカルに見ていく中で、明らかになった部分が多くある一方で、自由の制約の要因やそれに対する支援のあり方について、参加者間でさらに疑問が生まれていました。今後のオンラインブリーフィングに備え、新たに出てきた疑問を整理し、仮説を立てるディスカッションを行いました。

◼️所感

「自由とは何か?」という問いを様々な視点で考えていく中で、「国際協力」や「アフリカ」に対して自分はどのように関わっていくべきか、改めて考える機会となりました。自由や幸福、国際協力のあり方に対して深く学び、自分なりの意見を持つことが重要だと感じました。
3本立ての勉強会を行なってもモヤモヤはまだまだ出てくるので、引き続き内容の濃い勉強会をたくさん行っていきます!(安藤)