USPブログ⑧ - ウガンダ・スタディ・プログラム 第三回勉強会レポート

「No one will be left behindの実現 ー北部地域コミュニティの視点から、ウガンダで暮らす全ての人を包摂していくためにー」

突然ですが、あなたはウガンダの人々、と言ったときにどんな人を想像しますか?
実際に行ったこともないと、日本からでは少し想像がつきにくい、ウガンダという国。
しかし、そこに住む人々に思いを巡らせた時、その国のことを少し身近に感じた、という経験はあなたにもあるのではないでしょうか。

ウガンダ・スタディ・プログラム(USP)では、8/23(日)に第三回勉強会を開催しました。今回のテーマは、ズバリ、ウガンダの「人々」。
特に、USPメンバーの多くが関心を持っている「難民」も多く、様々な課題が重なる「北部地域」に焦点を当て、「No one will be left behindの実現ー北部地域コミュニティの視点から、ウガンダで暮らす全ての人を包摂していくためにー」というテーマを設定しました。
今年度のスタディ・プログラムの焦点でもある、持続可能な開発目標(SDGs)のキーワードである5つのP(Peace, People, Planet, Prosperity, Partnership)の中でも、「People」の視点からウガンダを見ることで、いかに、SDGsが掲げる「No one will be left behind(誰一人取り残さない)」の状況を作っていくことができるのかを考えていきました。

1.第一部(調査報告):難民だけじゃない?!北部地域で脆弱性を抱える多様な人々

第一部では、北部地域の概要を踏まえた上で、そこに住む「脆弱な立場に置かれた人々」とはどのような人々なのか、USPメンバーによる調査結果の発表がありました。

そこで見えて来たことは、北部地域は広くそれぞれの地域に、内戦を契機として発生した国内避難民(IDP)、隣国南スーダンの情勢悪化から流入した難民、難民を受け入れるホストコミュニティ、遊牧民やその他地域住民などの様々なコミュニティがあり、それぞれが異なる要因によって、脆弱性を抱えているということです。

今回の勉強会では、特に①IDP、②難民、③ホストコミュニティが「脆弱な立場」に置かれやすく、女性や子どもなど特定の属性によって脆弱性が高まるのではないかと想定し、それぞれが抱える問題を深掘りしていきました。

2.第一部(議論):人々の視点に立って考える〜「取り残されていない」を実感するために

調査結果を受けて、①IDP、②難民、③ホストコミュニティ、という3つのチームに分かれ、それぞれのコミュニティの人々にとっての①課題は何か、②No one will be left behindが実現された状態とはどのようなものか、③ウガンダ政府と国際社会がどうその状態を作るべきか、についてディスカッションを行いました。

結果として、それぞれのコミュニティの抱える課題は異なるものの、共通して取り上げられていたのは、まずは人々が「取り残されていない」ことを実感するための、精神的な支援と機会提供が必要であるということ。そのためには政府がニーズ把握をする必要があり、政府と人々が双方向のコミュニケーションを行う必要があること。さらに、政府だけでなく、NGOなど支援機関の連携を進め、効果的に支援する必要があること。また、人々が自立するためには、教育・職業支援が求められている、ということでした。

3.第二部(調査報告):本当の自立とは?ウガンダ政府主導の支援とその課題

それぞれのコミュニティの視点に立って考えを深めたところで、実際に現状でどのような支援が行われているのか、何が必要なのか、第二部では、ウガンダ政府や国際機関の支援内容について、USPメンバーによる調査結果の発表がありました。

ウガンダ政府は「北部ウガンダ平和復興開発計画」(PRDP)、また「難民とホスト住民のエンパワーメント」(ReHoPE)を打ち出し、国際社会の協力の下、脆弱な立場に置かれる人々を減らし、特に難民の国家への包摂を重視して支援を行っていることが見えて来ました。

一方で、ウガンダ政府、国際機関それぞれが支援内容に課題を抱えていることも分かりました。ウガンダ政府の課題としては、政策の住民への認知度の低さや資金不足が挙げられます。また国際機関の支援の一例として、UNDPでは難民と受け入れ地域の住民を巻き込んだ公共事業の立案・実施プロジェクトが紹介されましたが、実際には、このような自立支援を促すプログラムに自発的に参加する人々は限られており、自立を促すために配給した金銭や物資が、参加者を募る呼び水と捉えられてしまっている状況もあるようです。

4.第二部(議論):全ての人々の声を拾うため、期待されるセクター間連携

これまでの内容を踏まえ、ウガンダ政府のすべき事に焦点をあて、「ウガンダ政府が北部地域の課題を解決するために優先事項としてやるべきこと(レバレッジポイント)は何か?」「ウガンダ政府が2030年に目指すべきNo one will be left behindの開発・支援はどんなものか?」についてディスカッションを行いました。

結果として、優先的に解決すべきは、医療、食料などのベーシックニーズであり、その上で、教育や職業支援といったキャパシティデベロップメントをしていく必要があること。その前提として、女性や子ども、障がい者、民族の差など多様な属性の人々がいることを認識した上でのニーズ把握と、それぞれを統合した社会を目指す必要があること。そのためには、政府がリードし、政府・地方行政・支援機関など様々なセクターが連携し情報を共有し合う事が必要になる、といった仮説が見えてきました。

ディスカッションの最後には、仮説を踏まえた上で、皆で実際にウガンダ現地ではどんな事を確認したいか、について意見を出し合いました。
住民目線で深く考える時間を持った事で、より具体的に現地で調査・確認したい事項が出て来たのではないでしょうか。

5.今回得た学び:多様な人々の存在に気がつくことがSDGs達成への第一歩!

今回の勉強会の大きな収穫は、参加したUSPメンバーの皆さんが、多様な人々の存在に気がつくことができたことではないでしょうか。
実際、勉強会前後で「最も脆弱な人たちは誰だと思うか」という点についてアンケートをとり、比較したところ、勉強会前では「難民」と「子ども」という意見が多数を占めていた事に対し、勉強会後には、「国内避難民」や「ホストコミュニティ」の人々、さらに「女性」も脆弱性を抱えているという事への気付きを得た人は多かったようです。

運営側としても、北部地域の難民に焦点をあてて勉強会の企画を始めたものの、改めて、多様性に焦点をあてて考えていく重要性に気がつく結果となりました。

今回、日本からアクセスできる資料の限界により触れられなかった様々な層の人々にも思いを巡らせる必要があります。今回取り上げたのはウガンダ全土のうち北部地域のみであり、他の地域でも、様々な課題があることが想定されますし、さらに、バッタや干ばつ、コロナなど近年の様々な影響下で、新たに脆弱な立場に置かれる人が出て来ていることも想定されます。

今回フォーカスできなかった地域や人々についても、調査を重ね、実際に現地に行く際にはその現状を見ることができればと考えています。

6.所感:精神的対立の緩和こそが、脆弱な立場の人を減らし得るのではないか

フィードバックの中で最も印象的だったのが、今回のテーマとなった「脆弱な立場に置かれた人々」は、その人たちそのものが属性によって弱い、のではなく、強者によって作られた「環境」の影響を受けやすく、何かあった時に一番弱い立場にある人々であるということです。
以下は個人的な意見となりますが、このような「環境」を作り出した人々を考えるにあたり、ウガンダ南北の民族対立の歴史を忘れてはなりません。南北の民族対立には植民地時代からの根深い歴史があり、南部出身の政府主導で北部のIDPの移住政策も行って来ました。北部地域の人々が脆弱な立場に置かれている大きな要因は、南部民族が政権を握っていること、とも言えるでしょう。

現状、北部地域では表面的な和解が成立し、政府も北部地域への支援を行っており、今回ディスカッションの中でも、理想的な支援の形として政府と地方と人々の連携が期待されました。

しかしながら、長年の歴史の中で積み重なってきた精神的対立はそう簡単に取り払えるものではありません。その上、難民という新たなコミュニティも増加の一途を辿っており、北部内で難民とホストコミュニティの関係性が新たな火種となる可能性も抱えています。

こうした中、数字として目に見える支援だけではなく、精神的な軋轢をなくすための支援こそが最も求められているのではないでしょうか。

調査の中では、難民居住地内での難民とホストコミュニティの交流を図るプログラム等も実施されているとの事でした。このようなコミュニティ間の関係性構築についても着目しつつ、学びを深められればと思います。

加えて、個人的には、今回初めてUSPの勉強会運営に参加させていただきましたが、他業種や様々なバックグラウンドの人々と議論を重ねる中で、新たな気づきがあっただけでなく、社会人キャリアを積んでからでは改めて学びづらい、資料作成やファシリテーションなどについても新たな方法を実践的に学ぶことができ、非常に勉強になりました。

ウガンダ、そしてUSPメンバーの皆さんから学べることはまだまだ沢山ありそうです!今後の活動も楽しみです!(久富)