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国連とビジネス・トップ
企画の目的と内容

概論(説明と目次)
1.さまざまな切り口
      (田瀬和夫)
2.環境セクターの一考察
      (宇野智之)

3.パートナーシップ
      (井上良子)

4. ICTと開発 (今泉沙織)
5. BOPビジネス(武藤康平)
 BOPについての議論
6. CSRとCSV (前川昭平)
7. 赤道原則:持続可能な金融に向けた取り組み
      (柴土真季)

8. マーケティング: その進化が投げかける可能性
      (豊島美弥子)

シリーズ
国連グローバル・コンパクト
プロローグ
1. グローバル・コンパクト・セッション(野村彰男さん)
2. 橋田さんインタビュー「グローバル・コンパクト 本部とローカル・ネットワークの連携」(橋田由夏子さん)

3. グローバル・コンパクト・セッション(野村彰男さん、甲賀聖士さん)
4. 基調講演「ビジネスと人権に関する国際的な動向―国連指導原則を中心に―」(山田美和さん)  


シリーズ
『国連とビジネス』の具体的事例
ユニセフイノベーションチーム、Terra Weikelさんインタビュー

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フォーラムトップ > 国連とビジネス > シリーズ「国連グローバル・コンパクト」グローバル・コンパクト・セッション


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「グローバル・コンパクト・セッション」
スピーカー:

野村 彰男さん
(グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク 理事)

甲賀 聖士さん
(昭和女子大学現代ビジネス研究所)


2015年8月9日





【はじめに:前川昭平(国連と班ビジネス幹事)】

1.国連グローバルコンパクトとは
  10原則の紹介

人権

原則1: 人権擁護の支持と尊重
原則2: 人権侵害への非加担

労働

原則3: 組合結成と団体交渉権の実効化
原則4: 強制労働の排除
原則5: 児童労働の実効的な排除
原則6: 雇用と職業の差別撤廃

環境

原則7: 環境問題の予防的アプローチ
原則8: 環境に対する責任のイニシアティブ
原則9: 環境にやさしい技術の開発と普及

腐敗防止

原則10: 強要・賄賂等の腐敗防止の取組み

(参考:国連グローバル・コンパクトとは http://ungcjn.org/gc/index.html )

会場の国連GC認知度は8割ほどであった。

2.本日の登壇者紹介

  グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事長 野村 彰男氏  
  昭和女子大学現代ビジネス研究所 甲賀 聖士氏

 

【講演@:野村 彰男氏】

1.自己紹介

2.GCNJのあゆみ

3.GCNJの活動内容について

4.GCNJの意義について

5.今後の課題について

 

【講演A:甲賀 聖士氏】

0.はじめに

1.10原則、GCの特徴           

2.国連・企業のパートナーシップの背景

3.GCの力学

4.見落としがちな点

●グローバリゼーションによる相互作用について
 先進国からの資本移動と、その帰結としての労働者の先進国への移動という相互作用があるが、自国から外へ出る流れが特に注目されている。この流れをアウトバウンドグローバリゼーションと呼ぶとすれば、これとは逆に自国へ向かう流れであるインバウンドグローバリゼーションに対する関心は低い。伝統的コミュニティが崩壊し、大都市や先進国に人口が流れていく先進国に移動していく事でインフォーマルコミュニティが出来上がる事や、このコミュニティの人達に対する権利がどこまで確保されているのかというような問題がインバウンドグローバリゼーションのテーマであり、ここに企業が必ずしも対応できていないのではないか。
 一方で現在、企業から見れば、グローバリゼーションについて違った見方が出来る。例えば本社(先進国A)が発展途上国Cの工場とつながっており、発展途上国Cは別の発展途上国Dから原料調達を行っているといった各企業活動のネットワークである。
 先進国と発展途上国の境界は曖昧になって来ており、自らの流通網拠点間の連絡や物流を効率よく行う方法を考えるのが企業としてのグローバリゼーション。企業の社会貢献活動はクモの巣のような線の動線上や拠点にあり、そこから外れることはない。その外にあるところには意識が行かないと考えられる。

●中小企業の加盟について
 本来グローバルコンパクトに積極的に加盟すべき中小企業の加盟が進まない。アウトバウンドグローバリゼーションでは中小企業の海外進出が、人権侵害や環境破壊に繋がる可能性を持つ。インバウンドな観点からも、インフォーマルコミュニティに対する人権侵害や不当労働に対して取り組めていない。この背景には人財不足があり、例えばグローバルコンパクトのCOP作成についても中小企業で対応することは困難である。海外子会社を保有する企業の割合を見ても、中小企業が海外に拠点を持つことは多く、この点はよく考えていく必要がある。

●グローバルコンパクトの位置づけについて
 社会的価値とは、平和、開発、人権(国連がこれまでフォーカスしてきた領域)であるが、グローバルコンパクトが現在主にフォーカスしているのは、開発・人権である。ここに平和価値の境界、国家の境界、市民社会の境界の3つがあると考えられる。
 平和価値の境界から見えるのは、何故平和価値にグローバルコンパクトは言及していないのかという事である。兵器ビジネス、資源ビジネス(紛争当事者の資金源)は貧困・抑圧構造の固定化を生み得るものである。対象とすべきイシューとしては、条約といった法的規範が対象。企業による過去の権利侵害に対する償い等。利潤追求から社会的価値の追求に移る際にネガティブな問題を起こす可能性があるのが、この領域である。また、例えば復興開発が紛争当事者の資金源となり、紛争構造を固定化している事実もある。
 国家の境界、市民社会の境界においては、国家の境界面は国家と企業の関係で、国家と企業の歴史的な主導権のせめぎ合い、法令による国家の企業に対する統制、企業による国家の利用がテーマとなる。また企業と市民との距離の遠さが問題となるケースもある。
 企業目線からの心理的境界もある。利益と平和的価値が結びつかない事は多くある。ソーシャルビジネスは利益が無いと成立しない。またBOPビジネスさえやれば、何をやってもいいのかという課題もある。

5.GCNJ分科会の今後の課題

@市民・公官庁と隔絶している。

A大多数はCSR部門からメンバーが構成されておりCSR部門同士の情報交換/意見交換の場となっている。事業部門と意識の差があるのではないか。

B事業の実践での利潤>社会的価値といった優先順位になっている。

C経営層の社会的価値追求の優先順位が不透明になっている。

D業績評価と経営方針の連動がきちっとなされていないのではないか。情報交換だけでなく問題を本当に考えていく場になっていくべきではないか。

6.終わりに

グローバルコンパクトは着実に広がっており、いろんな関係機関を巻き込んで行く必要があるといえる。企業が目的価値の追究を図ることは、国家が国家の安全保障に取り組むのに対し、企業が人間の安全保障の行為主体としての役割を果たすことになると思う。その手掛かりとなる試みが、グローバルコンパクトではないか。

 

【質疑応答(会場質問に対し、野村氏・甲賀氏による回答)】

@効果測定をやっているのか。

野村氏:必ずしも数値化されていないが、マッキンゼーなどの企業調査ではグローバルコンパクト参加企業の方が業績・企業イメージは高くなるという結果が出ている。CSRがコンプライアンスと法令遵守であるという考え方は既に古く、事業の中で取り込まれなければならにという方向に考え方に変わっている。それが企業自体がサステイナブルになるために必要なことなのだ、という認識の高まりが少なくとも先進企業の間では広まりつつある。ジェンダーはまだまだ社会的課題だが、日本企業の意識の変化は見える。例えばAKKはCEOが推薦した執行役員クラスの勉強会だが、昨年から今年にかけての7期生は15人中7人、今年から来年にかけての8期生も24人中7人が女性だ。それまで毎年1人か2人だったのからは大きな変化と言える。

Aグローバルコンパクトのプロジェクトに参加した事があるが、会社内ではあまり評価されなかった。またグローバルコンパクトに署名した企業に対する社会からの評価も明確でないように思われる。これについてどう思うか。

野村氏:どういうプロジェクトに参加してのことか分からないが、参加者の意識が変わったというところにも価値をみるべきではないか。一方、企業内で評価されないのは残念な点かもしれないが、私はそれも次第に変わらざるを得ないと思っている。東日本の被災地で企業が緊急事態時の場所を提供したことなどから、3・11は日本企業の防災減災意識や社会で果たせる役割についての認識を変えたと言われる。すくなくともGCが目指す方向は間違っていないと思う。

甲賀氏:CSRの視点から見ると、植林等はどの様な意味があるのかというのは、企業は社会に対して何かしている会社と何もしていない会社で売上が変化するといったような、ソーシャルマーケティングの考え方から意味があるといえる。

B今後CSR・GCに日本企業はどのようにとりくんでいくのか。

東京大学 佐藤先生:糸口がないのが現状ではないか。ヨーロッパの企業の価値観を日系企業に落とし込むのは難しい部分もある。一方で、グローバルコンパクトに参加することが、企業(特に中小企業)にとって取引時のインセンティブになるようにするのは良いことと考えられる。例えば日弁連は人権DDにおいてCSR条項を作り、企業が事業評価にあたって人権の観点を盛り込むようにしている。そこでグローバルコンパクトに加盟して居るかどうかを一つの基準として活用することができるのではないか。

野村氏:理事会や経営執行委員会でも一番関心あるのが人権DDと日本版スチュワードシップコードで、投資する側の意識が変わっていくこと。これからツールとして意識して取り組んでいかなければならないものだと思っている。投資側の意識の変化は企業を変えずにはおかない。グローバルコンパクトは発展途上の活動でありCSRの意味も大きく変化してきている。企業に利潤を忘れろと言っても無理で、本当にサステイナブルな企業になるためにはCSRとかESGを意識した経営を進めなければならない。本業とは全く別にCSRを捉える、ということは少なくなりつつある。

以上

 

 

 

 

2016年1月23日掲載
ウェブ掲載:佐藤曉浩