国連でインターン Q&A
1.なぜ国連機関でインターン? 〜その魅力とは〜
まずは、何よりも外側からは分からない国連の“現場”を自ら体験できることです。実際の仕事内容に加えて、職員として求められる“資質”、身に付けるべき“コンピテンシー(能力)”、国連でいう“プロフェッショナリズム”とはどのようなことを意味するのか、国連の内部に足を踏み入れることで学ぶことができるというのは大きな魅力です。
皆さんは、国連機関でのインターンに何を期待していますか。「国連でインターン」では2005年の第1回から現在の50回まで国連機関でインターンを経験した方々の声を集めてきました。なぜインターン先を国連機関に選び、どのような過程を経てインターンの機会を得たのか。大学院での専攻や興味に合っているからという理由や、大学院卒業後の就職活動前に国連の勤務環境や組織文化が自分に合うかを確かめたい(参考:第35回仲上睦美さん)。また国際機関で活躍する日本人の姿をドキュメンタリー番組で見たことがきっかけ(参考:第42回向川原充さん)、NGOでの勤務経験から国際的なドナー機関でインターンをしてみたかった(参考:第13回佐々木佑さん)など、インターン経験者の動機や目的は様々です。
インターンシップの重要な役割は「国連でのキャリアの機会を広げる」ことです。ネットワークを広げ、次のチャンスを作るきっかけになります。また、あまり知られていない内部募集やポストの紹介や提供など、外からは見えないキャリアのアプローチ方法も見えきます。実際にインターンをして、一度チャンスを与えられたら自分次第で大きな可能性が見えてくると実感した方(参考:第31回近藤篤史さん)、インターン中に行われた国際会議での出会いがきっかけで、大学院の研究員となってインターン先機関の行う調査研究に参加する機会を得た方(参考:第47回上野明菜さん)、また現場の最前線で働くジャーナリストに直接技術指導やキャリアのアドバイスを受け、学問とインターン経験の相乗効果を実感した方(参考:第39回岡崎詩織さん)など、様々な機会や出会いから今後のキャリアの可能性を広げた方が多くいます。
インターン経験者が感じた外部から見た国連と内部からみた国連のギャップは人それぞれではありますが、その後の人生の選択において大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。国連機関だけでなく、民間組織やそのほかの分野でキャリアを積んでいく上でも、国連でのインターンは有意義なキャリアステップになると思います。
2.インターン資格と実施機関
国連機関のインターン資格は概ね学部生にもありますが、インターンを行った大半の人は、大学院在学中または大学院卒業直後の人が多いです。特に海外の事務所でのインターンは、大学院在学中の学生が対象となる場合が多く見受けられます。大学院での専攻分野や自身の専門分野と関連した国連機関でのインターンの募集要項を確認して見ましょう。
実施期間は、3〜6ヶ月間が基本的な実施期間として定められています。また、応募にあたっては要件のみならず、国連職員に求められる資質と能力についても意識してみましょう。一例ではありますが、Respect for Diversity(多様性の尊重)、Teamwork(協調性、同僚に学ぶ意欲、チーム全体を考慮しての行動、責任の共有)、Creativity(職務・サービスの改善に対する積極的追求新たなアイデアの提供)(訳:外務省国際機関人事センターより)など、インターンをする際にそれぞれがどういう業務を指すのか考えてみるといいと思います。
参考:インターン実施状況 (「国連でインターン」の記事参照)
機関名 | 実施国・都市 |
UNICEF |
NY本部、インド(デリー)、ウガンダ、カンボジア、タジキスタン、バングラディシュ、東ティモール |
UNDP |
NY本部、ジャカルタ、ウガンダ、ウクライナ、ガーナ、コソボ、サモア、東京、東ティモール |
UNESCO |
パリ本部、カンボジア、サンティアゴ、バンコク |
UN(国際連合) |
NY本部 |
UNFPA(国連人口基金) |
バンコク、東京 |
UNHCR |
イエメン |
UNWOMEN(国連ウィメン) |
NY本部、カンボジア、ジャマイカ、東京、バンコク |
WHO(世界保健機関) |
ジュネーブ |
ILO(国際労働機関) |
ジュネーブ、東京、フィンランド |
インターンを応募するときに、その国連機関の本部、地域事務所、各国のカントリーオフィスの3つの選択肢があります。それぞれの場所によって仕事の様子は大きく異なります。例えば、本部での仕事は開発の世界で先進国の役割を学ぶ貴重な機会であったという方(参考:第8回菅野文美さん)、数々の地方出張で国内避難民キャンプを訪れ、劣悪な住環境や人々の力強さを実際に見て、首都にいるだけではわからなかった格差や問題に気づいたという方(参考:第4回中村秀規さん)の記事を参考にしてみてください。
3.インターンの仕事内容
国連機関では、インターンであってもチームに貢献できる即戦力を求められます。仕事の種類は、会議の資料準備、議事録作成、報告書執筆等の事務作業から、フィールドでの聞き取り調査、ワークショップ実施、調査団の受け入れアレンジなど実務型の仕事まで、その機関やその部署によって異なります。あらかじめ募集要項をしっかり読むことに加え、その機関や関連部署のウェブサイトを参考にして仕事内容をイメージすることが重要です。その中で自分自身がどう貢献できるのか、何がやりたいことをあらかじめ考え、インターンを始める際に示して上司や同僚に伝えていくことがポイントです。
インターンは職員の一員と認識されていると感じた人は多く、インターン中にある国で起きた事件に国連がどう介入していくかという重要案件に対して意見を求められ、目の前で動く展開に臨場感を味わった方(参考:第38回入江晴之さん)や、3週間もの間被災地に滞在してリサーチを行った方(参考:第41回津田美樹さん)、明確な任務を与えられ様々な場面で意見を求められるのは国際機関のインターンの特徴でしょう。
4.インターンへの応募、また赴任前に準備しておくといいこと−CV (Curriculum Vitae)、TOR (Terms of Reference)、DOA (Description of Assignment)、関連機関の資料の熟読など
国連機関でインターンをするには、大きく分けて3つのパターンがあります。@国連機関や事務所のウェブサイトの公募、A大学・大学院や駐日事務所(UNICEFなど)が行う海外インターン派遣プログラムの利用、Bネットワークを通じた紹介です。応募をする際には、英語での履歴書(CV)、カバーレター、国連機関から指定された書類(P11又はPHPと呼ばれます)などの提出が必要になります。インターンに応募をする前から準備をしておきましょう。特に、英語でのCVは複数の人に見てもらい、改善していくといいと思います。また、インターン経験者を探し、事前に話を聞いてみたり、電話面接に備えて、自身がどのように貢献できるか、何を取り組みたいのかなど面接対策もしておきましょう。
赴任が決まれば、治安、住居の選定、通勤手段、生活費など任地での生活ついての情報収集を始めます。国連インターンは無給です。現状を把握し誰に協力を依頼できそうか考えておくこと、安全性を確保しながらコストを削減する方法について調べておくことは必要です。また事前に赴任先機関や部署がどのような活動をしているのか、ウェブサイトや出版物を熟読し基本的な知識を得ておくと、電話面接や赴任後の仕事の打ち合わせで役に立ちます。
5.インターンの感想とその後
インターン経験者が共通して言及しているのは、インターン中の仕事も大事ですが、上司や同僚、カウンターパートや生活で関わる全ての人との交流を忘れてはいけないということです。インターン中は国際的な環境であり、豊富な経験を持つ職員や援助を受ける側に立つ方など、普段は聞く事ができない話を聞く貴重な機会です。同僚と業務時間外の時間を一緒に過ごしたり、スポーツをすることで信頼関係を築き、ネットワーキングにつなげていくことも大切です(参考:第50回鶴岡英幸さん)。
インターン後は、JPOとして国連機関へ職員としてキャリアを積まれている方、大使館、JICA、NGO、民間企業で開発分野に携わっている方が多くいます。
6.最後に「国連でインターン班」より
今後も「国連でインターン」では、インターンを経験された方の体験記を紹介し、インターンを希望する方への情報発信を続けていきます。内部からみた国連機関はどういう印象だったのか、国連機関の仕事、開発という仕事について考える参考資料として、一歩踏み出すきっかけになればと願っています。
編集:国連でインターン班:井上、上野、奥田、久保山
2014年9月28日掲載 ▲