ミャンマー・スタディ・プログラム - 振り返りエッセイ「No.9 小島直毅」
「所与と(思考と)行動の一貫性を図る場として」
所属:北海道大学法学部一年
ぼんやりながらもあらゆる分野に対してイメージ程度であればつかむことができる社会。そんな一側面を持つ情報化社会に際し、今まででは見えなかったものが見えてきたり、分からなかったことが分かり始めたりすることで、意識を形式上世界規模に広げることは非常に容易になりました。しかし、我々の目にするものの多くはフィルター越しの与えられた世界であることが多く、いざ日本の外へ思考を巡らせれば、たちまち曖昧極まりない議論や結果を生み出すということは特筆して学生間において少なくありません。私にとっての途上国支援や国連といった分野も、そのような抽象イメージの中の一つにありました。
実感の湧きにくい分野の話は、就職活動など将来を考える上でいち早く切り捨てられてしまう傾向が強い印象を持ちます。業務が多様性に富み、またその内容を知る機会の少ないように思われる国連は、学生の初期の進路希望に際しては多く見受けられるにも関わらず、最終的に志望する人々は何か具体的な実体験や強い意志力を持つ人々が多く、対して特に情報の少ない地方地域においては少数しか見られないように思われます。
こうした将来につながる意思や考えを、経験を通じ具体化できる場こそ、本スタディプログラムであると私は考えます。ただ現場を見て何かを感じ取ることは、インターネットを通じてもある程度代替可能であるようにも思えます。しかし、全国から多様な背景を持つ人々が集まり約半年をかけたディスカッションや勉強会を通じ、ただ見に行くのではなく、具体的な問題意識を持ち、考えるために、また現地で何かを試行するために途上国支援の現場に訪問できる体験は、全国を探してもここでしか見つからないとさえ思えます。
私は渡航には参加できませんでしたが、勉強会や報告会などのイベントにホームメンバーとして参加してきました。また、より地域や国に限定されない、一般的な考え方について学ぶように意識してきました。従って、以上に述べてきたような抽象的イメージが完全に解消されたとは言えません。しかし、渡航できなかったからこそ、渡航した人々の変化というものが鮮明に見出されてきます。皆熱意を帯びていて議論も極めて具体的、目的意識を持って取り組んだ先に、自らの課題や目標を見出していたようでした。
感覚的に何をしたい、何に興味がある、どのような人になりたいという思いは、多くの場合、実現への一途においても道中長らく抽象的で、また頻繁に方向性が変わるのが当然です。私がMySPに申し込んだきっかけは、ただのちょっとした興味でした。何に関してもやってみなければわからないと思ってからです。そうした多方向への興味探求を模索している段階において、ホームメンバーという制度は自分の方向性を充実して迷うことのできる環境として有意義であったと確信します。多様なMySP参加者との交流から自らのキャリア選択を明確化したり、プログラムの全容も把握できることから、国連関係に進もうと決意を固め次年度のプログラムを最大限に活かすことにも、また他の全く異なる方向性を志向するにも、流動的に動くことができたりすることがホームメンバーの大きな魅力だと思います。