カンボジア・スタディ・プログラム - 第2章第4節:第4回勉強会
テーマ:「MDG、UNDAFとカンボジアの開発状況、FAOの役割」
実施状況
第4回事前勉強会は、11月10日(土)14時~17時の日程で21名の参加者が、①MDGs(ミレニアム開発目標)について、②カンボジアの開発状況について、③カンボジアにおけるFAOの活動、その果たす役割を勉強しました。本勉強会では、参加者3名がプレゼンテーションを発表し、講師に大阪大学環境イノベーションセンターにて勤務、主にサステイナビリティ学・環境経済学を専門とされている上須道徳さんをお招きしました。
勉強会議事録
ミレニアム開発目標は、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、1つの共通の枠組みとしてまとめたものである。人間の基本的なニーズを満たし、その能力を開発することを目指した8つの目標を2015年までに達成しようと国際連合や各国政府、NGOなど様々なセクターが取り組んでいる。カンボジアでは政府が主体となって信用のできるデータ作りを基礎に経済成長(GDP底上げ)による貧困削減を目指すアプローチを取る。
カンボジアは数値で見ると着実にGDP成長率を上げているが、近隣諸国と比較するとその発展率は他国より劣っている。また、農業が主流なカンボジアの特に農村地域では変化しやすい天候、インフラの未整備、農村地域の技術導入の遅れ、及び農業投入財へのアクセス制限が経済成長の妨げとなっている。これらに対応するためには国際社会、政府や地方での政府・機関、現地の人々、それぞれのアクターの連携が重要とされている。
カンボジア発展における国連の参入に関して、「各国家の開発上の優先課題に国連システムとしてどのように協働しつつ対応してゆくかについて述べた戦略的プログラム枠組み(UN Development Assistance Framework:UNDAF)」というものがある。これは国連システム全体がその国の政府支援のために何をするのかを書いたものである。本フレームワークにおいては資金を投入してインフラ整備に徹するよりも主に政策的な助言や技術的なサポートの役割を担っている。
Q1:カンボジアでインフラの整備が進まない要因は、お金なのか技術なのかもしくは計画に問題があるのか?具体的にはどういう風な障害があるのか?(大阪会場参加者:清さん)
A:カンボジアは日本のような地方税の概念がなく国内の財源、税制が未整備である。そのため国家が集めて州や郡やコミューンに再分配をしているものの地域に回すお金がないという現状もある。そのため、国際機関やNGOに依存する、またコミューンが何か行う際には公共事業負担金を直接住民から回収しているという状況もあった。(元地方公務員:坂本さん)
質疑応答一部抜粋(Q: Question, A: Answer)
Q2:日本のカンボジアに対する支援は150億円との事であったが、借款と無償はどのくらいの割合なのか?(ハングアウト参加者:田瀬さん)
A:無償支援は約30億円である。だいたいの内訳としては人間開発が3億円、洪水対策が15億円、医療約4億円、ノンプロジェクトが6億円となっている。また、2012年3月の洪水の際には70億円の支援もしている。(発表者:中原さん)
Q3:GDPが農村の実態を反映しているとは限らない事は多々あると思うが、その点について伺いたい。(ハングアウト参加者:坂本さん)
A:データの裏側を考える上で大切なのはそのデータの計算方法や定義である。GDPでは市場に回らないと入らないため、環境に悪影響を与える労働が入って家庭内労働は入らないという現実もある。また、農村では自家消費は入らないため農村がきちんと発展していればそんなに貧しい印象もないのではないだろうか。(講師:上須さん)
Q4:カンボジアFAOが実施するMALIS projectでは栄養面の改善とあるが、具体的な取り組みなのか?(大阪会場参加者:岡見さん)
A:FAOの農業支援では農作物の多様化を行っている。この支援では農民の口にするものが増え栄養摂取がより行える様になる、リスク分散(お米がだめなら収入がゼロという可能性がなくなる)、収入の増加といったようなメリットがある。さらに家畜を飼えば良い結果が得られる。MALIS projectに関しては資料に包括的な食事とあるように、お米だけではなくもっと食のバラエティを増やすことを目指している。子供や乳幼児のいる母親に教育するなど家庭内での栄養改善に努めている。(発表者:藤田さん)
参加いただいた講師の上須 道徳さんから
まず、作物を作るにしても協力して行うが、共同体としての在り方に注目するとまた違う事が見えてくるのではないだろうか。また、本当の生活をしている人々にデータはどのように影響しているのか考えて欲しい。水へのアクセスが困難と言うと、飲み水がないという表面的な情報だけではなく、その背景には女性が遠い所まで水を汲みに行く、衛生状態悪いなど背景まであるかもしれない。アイヌ語には「やいこしらむすえ」という言葉があり、「自分自身に対して心を揺さぶるという事で考える」という意味である。知識を詰め込むことは簡単であるが、心を揺さぶるほど考えることは少ない。勉強会等で得た知識を実際に現地で見て、ぜひ自分の心を揺さぶってみてほしいと思います。
参加者の声:中原 隆伸さん
第4回勉強会でプレゼンを担当しました。南スーダン在住のためハングアウトでの参加だったのですが、別のハングアウトに参加した際ネット環境の悪さからか全くつながらず、当日ちゃんと参加できるか不安でした。万一の時は録画済みのリハーサルを流してもらう手筈を整え勉強会本番に臨んだところ、場所を変えた事もあり上手くつながり、海外からでも勉強会に参加出来ることを実証出来たのではと思います。学生の皆さんが凄くしっかりした内容のプレゼンを準備していたので、「社会人のメンツにかけて頑張らないと」と思い準備しましたが、大学院等の講義で習って以降余り復習の機会が無かった開発分野の基礎知識を再確認でき、大変有意義でした。