コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:ARN」

要約

Agency for Reincorporation and Normalization(以下、ARN)は、コロンビア政府が元ゲリラ戦闘員や武装グループのメンバーの社会復帰を支援するため、2011年に設立された機関である。再統合プログラムでは、職業訓練や教育、医療支援などを提供し、元戦闘員が平和的に社会に参加できるよう支援している。ARNの使命は、再統合と再編入の政策を実施し、平和共存、法の遵守、和解を促進することである。

元戦闘員の社会復帰には、社会的偏見や差別、過去の紛争に由来する不信感が大きな障害となる。これを克服するための心理的・社会的支援が重要である。また、経済的自立を確保するためには、土地分配の不平等やインフラ不足が課題となり、特に農村部では生活基盤の確保が困難である。治安の不安定さや再武装のリスクも再統合を阻む要因とされる。

ARNはこれらの課題に対応するため、コミュニティ強化モデルや経済的支援プログラムを提供し、元戦闘員の社会的受け入れを進めている。また、差別解消のための地域住民との対話や教育を進めるほか、心理的支援や家族再統合プログラムを実施し、元戦闘員が社会で新たな生活を築けるよう包括的に支援を提供している。

1.機関の組織概要 

ARNは、コロンビア政府が元戦闘員や武装グループのメンバーに対して、社会復帰を支援するために2011年に設立した機関。再統合プログラムでは、職業訓練、教育、医療、社会保障などを提供し、元戦闘員の平和的な社会参加を促進している。

ARNの使命は、再統合と再編入の政策を設計・実施し、平和共存、法の遵守、和解、持続可能な発展を促進することである。

2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題

社会的再統合の課題

元戦闘員が社会に適応するには、社会的偏見や差別が大きな障壁となる。過去の紛争に起因する不信感が元戦闘員と地域住民の間にあり、特に新たに住む地域で困難を抱えることが多い。元戦闘員は過去に対する罪悪感やトラウマを抱えており、これを克服するための心理的・社会的支援が必要である。

経済的再統合の課題

元戦闘員の社会復帰には経済的自立が不可欠であり、土地分配の不平等やインフラ未整備が生活基盤の構築を妨げている。特に農村部では土地や住居の確保が困難で、麻薬栽培から合法的な生計手段への転換が求められる。

治安の維持と治安の課題

治安の安定は元戦闘員の再統合にとって重要であり、治安が不安定な地域では再統合が難航する。特に、再び武装勢力として活動を再開するリスクがあり、治安維持が再統合の鍵となる。

社会的偏見と差別の課題

元戦闘員に対する偏見や差別は、就業機会や社会復帰を妨げる大きな障壁であり、地域住民との信頼関係を築くためには教育や対話の場が必要である。

土地分配と農村開発の課題

土地分配の不平等と農村開発の遅れが元戦闘員の再統合を妨げている。土地や生活基盤へのアクセスが改善されることで、元戦闘員の再統合も進むとされている。

3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容

社会的再統合支援プログラム

ARNでは、元戦闘員の社会的な再統合に関する支援を行っており、その中心となるのが「コミュニティ強化モデル(Modelo de Fortalecimiento Comunitario)」である。このモデルは、元戦闘員と地域住民が共同で地域課題に取り組むことを通じて、相互理解と信頼を築くことを目的としている。具体的には、道路整備などが行われ、元戦闘員と地域住民が協力し、地域社会に貢献する活動が進められている。これらの取り組みを通じて、元戦闘員が社会的に受け入れられる土壌が醸成されることを目指している。

経済的再統合支援プログラム

元戦闘員の経済的自立を支援するため、ARNは集団生産に関するプロジェクトや個別の事業支援を実施している。特に農業分野では、元戦闘員に対して麻薬に替わる作物の栽培支援や農業技術の提供を行い、麻薬栽培から合法的な収入源への転換を目指している。さらに、製造業や手工芸など、他の産業分野での活動支援も行っており、元戦闘員の経済的自立を支援している。これらの活動では、元戦闘員が協力してビジネスを立ち上げることが奨励され、社会的なつながりの強化にも寄与するとされる。

差別解消と地域住民との対話プログラム

元戦闘員への差別をなくすため、ARNは地域住民との対話を進めるプログラムを実施している。このプログラムは、元戦闘員と地域住民が積極的に交流し、元戦闘員の過去を理解し受け入れる機会を提供するものである。このような対話を通じて、元戦闘員に対する偏見の撲滅と、平和的な共存に向けた取り組みが進められている。

心理的・社会的支援プログラムと家族再統合支援

元戦闘員が社会復帰を果たすためには、心理的なサポートも欠かせない。ARNは、元戦闘員に対して個別のカウンセリングを提供し、過去のトラウマを乗り越えられるよう支援している。さらに、元戦闘員の家族に対する支援も行われており、家族が再統合のプロセスに関わりやすくするためのプログラムが実施されている。特に、紛争の影響で家族が離れ離れになった場合には、家族の再統合を支援するプログラムが提供されており、こうした観点からも元戦闘員が社会復帰を果たすための支援が強化されている。

地域住民向け教育と差別解消活動

ARNは、元戦闘員に対する差別を撲滅させるため、地域住民に対して教育活動を行っている。これには、元戦闘員の子どもたちが学校で差別を受けないよう支援するための活動や、地域住民を対象に差別解消に関するワークショップが含まれている。地域住民が差別に対する適切な理解を得ることは、元戦闘員と地域住民が平和的に共存するための土台であり、元戦闘員がその地域で一市民として社会参画することにもつながっている。

4.参加者所感

「加害者であるその人も、誰かの加害による被害者である」という複雑な事実が、復讐の連鎖を生み出してきたこと。その中で、すべての立場の人々が共通して渇望したのが、ただ一つ「平和」であり、同時にそれを実現するためにはいかに多くの挑戦が伴うかを改めて実感した。

復讐の連鎖を解くことは容易ではないが、当事者も含めた対話、そして共通の目的を持ち共に行動することを通じて課題に真正面から取り組むARNの姿勢は、移行期正義の新たなモデルとなり得る可能性を感じさせた。

「知らない人を嫌うのはとても簡単なこと」

慎重で地道なプロセスを率いる彼らの言葉は心に重く響き、その意味の深さを考えずにはいられなかった。

引用文献

写真①