コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:Rappi」
要約
Rappiは2015年にコロンビアで創業したスタートアップ企業で、フードデリバリーを中心に食料品、衣料品、医薬品、旅行代理店、金融サービスなど多岐にわたる事業を展開している。中南米9か国で活動し、コロンビアでは60以上の都市と町で事業を行い、70,000人以上の配達員が登録され雇用創出にも貢献している。Rappiはコロンビアの課題解決に取り組み、ベネズエラ避難民の雇用支援や地方部の金融サービス不足への対応を行っている。避難民には合法活動のための書類手続き支援を提供し、地方自治体と連携して身分証明を持たない人々の支援も行っている。また、配達員の権利保護のために女性配達員向けの健康情報提供や奨学金支援、休憩スペースの設置、バイク購入支援、損害保険の提供などを実施している。
さらに「Rappi Pay」によるデジタルバンクサービスを通じて地方部の金融サービスへのアクセスを可能にしている。
1.機関の組織概要
Rappiは2015年にコロンビアで創業したスタートアップで、2018年に時価総額が10億ドルを超え、2019年にSoftBank Innovation Fundから10憶ドルの投資を受けるなど、急激な成長を遂げている企業である。Rappiは一般的なフードデリバリーをはじめ食料品や衣料品、医薬品などの生活用品の配達、さらには旅行代理店、金融サービスなど多岐にわたるサービスを展開している。中南米9か国、コロンビアでは60以上の都市と72の町で事業を展開している。コロンビアでは70000人以上の配達人が登録され雇用創出にも貢献している。
2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題
(1)ベネズエラ避難民の流入
ベネズエラの経済社会情勢の影響を受け、2023年7月時点で、730万人以上のベネズエラ人が避難民として周辺国に流出しており(1)、コロンビアには280万人のベネズエラ避難民が流入している。ベネズエラ避難民対策はコロンビア政府にとっても最優先課題の1つとなっている。政府は2021年、同国に住む180万人以上のベネズエラ避難民と、その後2年間に公式チェックポイントを通じて入国する人々を対象に、10年間の一時保護ステータス(TPS)を発表し、難民・移民等に対する医療・教育アクセスの改善、労働市場参入等の促進をしており(2)、地域社会への統合を目指している。しかし、ベネズエラ避難民の中には自分の身分を証明できず、仕事を得ることが難しい人も存在する。
(2)地方部の金融サービスの不足
コロンビアには銀行のオフィスを持たない多くの都市や小さな町が存在しており、金融サービスを十分に利用できていなかった。
3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容
一般的なフードデリバリーをはじめ食料品や衣料品、医薬品などの生活用品の配達を行っている。専用の商品集積倉庫が存在しており、注文が入ると待機している配達員に商品が渡され配達される仕組みになっている。Rappi Turboという10分以内に配達する即時宅配サービスを展開しており、食料品や日用品、レストランのメニューなどが対象となっている。ほかにもRappiは金融サービスも展開しており、2018年にRappi Payが誕生した。デジタルバンクであるため、銀行のない多くの都市や小さな町でも、すべてデジタルで手続きを行うことができるようになった。
Rappiでは配達員の権利保護として以下のことが行われている。
(1)ジェンダーの支援
女性配達員に配慮した休憩所でのスペース作り、性と生殖にかかわる健康情報の提供が行われている。また、ICT省、MindHubとパートナーシップを結んでおり、500件以上の奨学金を女性配達員とその家族に与えている。
(2)ベネズエラ難民の支援
ベネズエラ難民を配達員として雇用しており、合法で安全に活動を行うための書類上の手続きを支援している。コロンビア内でも60都市でRappiが事業展開しているため、地方自治体と協力しベネズエラ移民が書類を持っていない場合のサポートや地方自治体のオリエンテーションの手伝いを行っている。ベネズエラ難民は乗り物も持っていないが、最初は歩いて配達を始めることができる。
(3)well beingとsafety
配達員のリスクを探し、配達員の職業的・個人的なニーズに取り組んでいる。well beingに関しては、経済的支援として一台目のバイクの購入支援やメンテナンスのディスカウントがある。そのほかにもボゴタには配達員専用の休憩スペースが用意されており、そこでは配達に必要なスマホを充電したり、食事をとって休息を取ることができる。
配達員の安全に関する取り組みとして、配達員の配達中の損害保険もカバーしており、配達の注文を受けた時から、配達後30分までが保険の適用対象となる。このような配達員への取り組みは配達員や配達員組合、ワークショップ、ダイアログ、調査等をもとに行われている。
(4)アプリでの支援
Rappiのアプリから借金や所得などの問題のサポートを行っている。
4.参加者所感
コロンビアで2015年に始まった企業が、わずか10年たらずで急成長していることに驚いた。配達員としてベネズエラ難民を雇用し、ベネズエラ難民の方の経済的自立支援や配達員の権利保護など社会的課題に取り組んでおり先進的な印象を受けた。Rappiの会社がある地域は非常に整備されており、建物は東京の都市部にも似たような雰囲気を感じた。一方、今回訪問したほかの地域では水道が通っていない地域も存在しており、振り返って見るとコロンビアの格差の大きさを垣間見た経験でもあった。
引用文献
- (1)外務省.(2022).コロンビア共和国に対するベネズエラ避難民登録システム関連機材供与(無償資金協力「経済社会開発計画」)に関する書簡の署名・交換.外務省. https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press7_000094.html.最終閲覧日:2025年1月5日
- (2)UNHCR.(2021).Temporary Protection Status in Colombia.UNHCR.https://data.unhcr.org/en/documents/download/89943
