コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:WFP」

要約

WFPは緊急時の命を救う食料支援を中心に、紛争や自然災害、気候変動の影響を受けた地域で平和、安定、繁栄への道筋を支援する世界最大の人道支援機関である。コロンビアでは約1,300万人が食糧不安に直面しており、ベネズエラからの移民増加がリソース不足をさらに深刻化させている。また武装集団による食料へのアクセス制限や、近年の洪水や干ばつなどにより広範な食糧不安が引き起こされている。WFPはこれらの課題に対して、IK(物資支援)やCBT(現金支援)を通じて支援を行っている。特に移動する移民に対しては調理済み食料キットを提供し、学校給食プログラムを通じて移民家庭の子どもたちに栄養価の高い食事を提供している。また紛争や気候変動に関連する緊急事態に対して、コミュニティ評価に基づいて支援を提供し、IKやCBTを用いて3〜6ヶ月間の支援を行っている。これらの取り組みは人道支援と長期的な開発支援の両面で実施されており、政府や他の国際機関と協力しながら進められている。

1.機関の組織概要 

WFPは緊急時に命を救い、食料支援を通して、紛争や災害、気候変動の影響から立ち直りつつある人びとのために平和、安定、繁栄への道筋を構築している世界最大の人道支援機関である。(1)主な活動として緊急食糧支援、学校給食プログラム、移民の社会経済的統合、災害対応などが挙げられる。コロンビアでは食糧不安に対処するための政策の策定、小規模農家に向けたトレーニング、気候変動への適応など幅広い活動を展開している。(2)

2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題

コロンビアでは国内避難民やベネズエラ移民の食料安全保障、武装グループの活動、気象現象の影響がWFPの主要な課題となっている。コロンビアでは約1,300万人が食糧不安に直面し、ベネズエラからの移民増加がリソース不足を深刻化させている。特に移動中の移民(Pendulum migrants)は深刻な食糧不安に陥り、社会的保護や統合の欠如が生活水準向上を妨げている。さらに、内戦や紛争の影響で避難民が増加し、武装集団が農村地域の食料安全保障を脅かしている。また自然資源争いや洪水、干ばつなどの気象災害も食糧生産に深刻な影響を与えており、特にラ・モハナ地域では洪水被害が顕著である。武装集団の拘束と気候変動の影響が重なる地域ではさらなる支援が必要とされている。

3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容

移民・避難民の人道的危機に対する取り組み

(1)人道支援

  • 定住する移民に対する支援
    • IK(In-Kind Assistance) および CBT(Cash Based Transfers)による6か月間の支援を行っている。
    • IK(In-Kind Assistance):食料、水、衣類、衛生用品などを物理的に提供する支援形態であり、特に市場へのアクセスが難しい地域や紛争被害地域に向けた支援が行われている。物資を直接配布することで、迅速かつ効果的な支援が可能となる。
    • CBT(Cash Based Transfers):現金または現金相当の支援を受益者に提供する形態であり、受益者が食料だけでなく、医療やその他の生活必需品にもアクセスできるようにする柔軟性を提供している。特に市場が機能している地域における支援が多く、選択肢を増やすことで生活の質の向上が図られている。
  • 複数の地域を行き来する移民に対する支援
    • 移動中の移民に対する支援として、調理済みの食料キットを提供している。各キットには5日分の食料が含まれており、3つの配布地点を通じて15日間分の支援が行われている。
  • 学校給食プログラム
    • 移民の子どもたちが学校で栄養価の高い給食を受けられるよう支援している。これにより栄養不足の解消だけでなく、教育への定着を促進し、移民家庭の子どもたちの将来に貢献している。

(2)社会経済的統合

  • 雇用支援
    • 民間部門と連携し、移民に仕事の機会を提供している。スキルアッププログラムやトレーニングを通じて、新しい環境での安定した収入源の確保を支援している。
  • 起業支援
    • 移民が独自のビジネスを立ち上げ、持続可能な経済活動を行うための支援を行っている。起業支援にはビジネス計画の作成支援、起業に必要な資金の提供、運営ノウハウの伝授などが含まれる。
  • 社会保障制度への統合
    • 移民がコロンビアの社会保障制度であるSISBENに登録できるよう支援している。移民が教育や医療などの社会サービスを利用することでより安定した生活基盤を築くことが可能となる。

紛争や気候関連の緊急事態に対する取り組み

WFPでは紛争や気候関連の緊急事態に対応するためにコミュニティ評価を実施し、CBTおよびIKを通じた支援を3〜6か月間提供している。特に紛争ではUARIV、気候関連ではUNGRDなどの政府機関と連携し、ニーズに基づいた支援を行っている。今後の課題としては武力紛争の激化による沿岸地域での支援ニーズの増加や武装グループによる住民拘束の長期化が挙げられる。また受益者へのアクセスの確保における安全面も重要な課題となっており、リスクとコストを考慮した支援のアプローチが必要となっている。

4.参加者所感

機関への訪問を通じて、現地の状況がいかに複雑であるか、また国際協力の難しさを痛感した。中立性や独立性を維持する難しさに加え、資金削減や政府の紛争・自然災害被害者への優先支援が、移民支援の縮小を招く現状は、支援がすべての人々に行き届かない現実を浮き彫りにしている。それでも、限られた資源を効果的に活用し、多くの人々を巻き込む仕組みを構築する必要がある。また、緊急支援による命の保護に加え、持続可能な支援を通じた社会統合が社会の安定に不可欠であると再認識した。支援の理想と現実の乖離を埋める方法を考え、行動に移すことが今後の重要な課題であると感じた。

引用文献

写真①