コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:JICA」

要約

JICA(国際協力機構)は、80カ国以上に拠点を持ち、「人間の安全保障と質の高い成長」をビジョンに掲げ、発展途上国の持続可能な開発と人間の安全保障を支援する日本の独立行政法人である。コロンビア事務所は1980年から活動を開始し、平和構築、社会開発、環境保全に取り組んでいる。コロンビアでは2016年に和平合意が結ばれ、長く続いた内戦は終結したものの、平和構築が依然として重要な課題である。国内避難民の問題や地雷の除去が未解決であり、また、地域間の経済格差是正や雇用創出、災害対策、衛生環境の改善も必要である。JICAは、日本からの技術や資金を支援に活用するだけでなく、これまで世界各地で培った経験とネットワークを活かし、これらの課題の解決に取り組んでいる。具体的には、調査や港湾開発の支援、有償・無償の資金援助を通じてハードインフラの整備を支援するとともに、地方自治体の能力向上、警察の信頼回復、コロンビアと世界の人的交流を通じて技術支援や人材育成にも貢献している。また、青年海外協力隊の派遣を通じて、各地のニーズを把握する活動も行われている。

1.機関の組織概要 

JICAのコロンビア事務所は、世界56カ国に展開している海外駐在員事務所の一つであり、1980 年の事務所設立以来、コロンビア国内の平和構築や社会開発、環境保全の支援を通じて、コロンビアの発展とコロンビア人の生活の質の改善に向けた取り組みを続けている。具体的には、 コロンビアのバランスのとれた持続可能な経済成長、環境問題と防災能力強化を主眼に据え、技術協力、人材育成、機材提供、開発調査、資金融資、国際的な組織との連携強化などを通じて、コロンビア国内の多様な社会課題の解決と災害や気候変動に対するレジリエンスの強化に貢献している。

2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題

(1) 平和構築にむけての課題

2006年に和平合意が結ばれたが、1960年代から続いた紛争による国内避難民の都市部への流入による環境問題の深刻化は今も残り続けている。2003年以降、JICAはこれらの問題の解決に向けた支援を強化しており、具体的には、国内避難民や弱者への支援、地方都市や農村の生活環境改善を通じ、人間の安全保障を強化している。

(2)   防災対策と社会インフラの強化

コロンビアでは自然災害への取組も急務となっている。地方自治体の行政能力向上や、防災対策、都市計画の推進に注力している。また、環境分野では、廃棄物処理の改善、生態系保全、地域教育の強化によって、森林などの環境の保全と持続可能な利用の強化を支援している。

(3)   持続的な経済発展と雇用創出

都市部と地域間の貧富の格差が大きいため、今後の同国の持続的な経済発展のためには地方の開発は大きな課題となっている。また、コロンビアは石油・石炭等の天然資源や農業に依存した経済構造であるため、今後産業の多様化や中小企業の振興による国際競争力強化が重要である。そのため、経済発展の分野では、中小規模産業促進プログラムや生産性向上のための技術支援を行い、持続可能な雇用創出を目指している。

3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容

JICAは、「人間の安全保障と質の高い成長」をビジョンに掲げ、以下のような活動を展開している。

(1) 平和構築

JICAはコロンビアにおいて対人地雷の除去支援、国内避難民や障碍者への支援、警察改革や平和教育の導入、など様々な取り組みを行っている。地雷除去活動では、日本がカンボジアで培った地雷除去技術をコロンビアの地雷除去チームに技術支援する活動が行われている。また、警察改革においては、ブラジルの知識を導入することで、警察と地域住民の信頼関係を構築し、警察組織が効果的に機能できる体制づくりを支援している。加えて、平和教育の導入においては、戦争の影響をかつて受けた沖縄の平和教育の取り組みを参考にしながら、コロンビアでの平和教育を進めている。このように、JICAが世界各地で培った経験とネットワークを活用しつつ、コロンビアにおける多様な支援を提供している。 

(2)経済活性化

地方経済成長にむけた活動では、農業・農村開発を通じた収入向上や、「一村一品」運動による地域特産品のマーケティング支援も行っている。地域住民が特産品の生産とマーケティングに取り組むことで、地方経済の活性化や住民の雇用創出にもつながっている。また、紛争の影響を受けた地域でカカオやコーヒーの栽培技術、データ管理や販売方法を指導することも行われている。この結果、対象地域では生産性と収益性の向上が実現されるなど成果が出ている。この他にも、有償資金協力、無償資金協力、ベネズエラ難民とコロンビア人との共存を目指した企業支援や調査などが行われている。

(3)インフラ支援

環境防災分野では、コロンビアの太平洋側の都市など貧しい地域の開発を特に積極的に支援している。具体例としては、パイロット港としてカルタヘナ、ブエナベンツーラを指定し、港湾開発計画が進められており、加えて、この地域における疫病対策も含めた持続可能なインフラ整備を支援している。

(4)  人的交流支援

日本での研修、専門家の紹介、様々なテーマの専門家を呼んで大学で講義などの交流事業、留学支援が行われている。日本とコロンビアの民間企業を結びつけることは、日本企業のビジネスチャンスを創出することにもつながる。また、海外青年協力隊の隊員を通じた支援では、現地のニーズを把握しながらの支援も行われている。

4.参加者所感

訪問した際に紹介された取り組みの中で、世界各地で活動するJICAならでは強みを活かした支援が特に印象的であった。具体的には、コロンビアと同様の課題を抱える国々(ブラジル・カンボジア)との技術協力や、平和教育の内容に沖縄の平和教育の取り組みが活用されており、日本や世界の取り組みがコロンビアの問題解決に有効な手立てとなっていることが印象に残った。また、日本で学んだコロンビア人が、帰国後に母国の課題解決に貢献する人材となった話を聞く中で、コロンビアと世界をつなげる取り組みの重要性を考える大きなきっかけとなった。

引用文献

写真①