コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:UNVM」

要約

国連コロンビア検証ミッション(以下、UNVM)は、2016年に締結された左翼ゲリラ組織のコロンビア革命軍(以下、FARC)とコロンビア政府との和平合意に基づき設立された機関である。このミッションの目的は、和平合意の履行を検証し、持続可能な平和構築を支援することである。UNVMのさまざまな取り組みのうち今回のブリーフィングで伺えた主なものは包括的農地改革、元戦闘員の再統合、和平プロセスの拡大の3点だ。

包括的農地改革では、土地所有の不平等を解消するため、政府が土地を買い上げて農民や国内避難民に分配し、衛星を活用した管理も行っているという。また、農村開発に投資し、人々が定住できる環境を整えることで生産性向上を目指している。

元戦闘員の再統合では、教育やヘルスケアへのアクセスを検証し、2026年まで議会に10議席を確保するなど政治的統合を進めている。一方、元戦闘員の安全は依然として不安定であり、個別・集団レベルでセキュリティ対策を強化している。

和平プロセスの拡大では、FARCとの和平合意を基礎に、ELNや他の武装勢力との停戦合意を目指して交渉を行っている。

以上のようなこれまでの和平合意プロセスは成功例と評価されており、今後は「戦争がない状態」にとどまらない、民主主義や多様性を重視した積極的平和を目指している。

1.機関の組織概要 

国連コロンビア検証ミッション(UNVM)は、2016年に締結されたFARCとコロンビア政府の和平合意に基づき設立された機関である。このミッションの目的は、和平合意の履行を検証し、持続可能な平和構築を支援することである。主な業務として、元戦闘員の社会復帰支援、武装解除後の再統合プロセスの監視、被害者の権利回復、地域社会の安定化を推進している。ボゴタに本部を置き、11の地方事務所を運営している。紛争の影響を最も受けた地域や、元戦闘員の再統合地域を含む、国内300以上の自治体をカバーしている(1)。(257字)

2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題

コロンビアは半世紀以上続いた内戦の影響から、多くの課題を抱えている。その中で、UNVMが特に注力しているとみられる課題は以下の3点である(1)。

  • 都市と農村の格差
    • 都市部では経済やインフラが発展している一方で、農村部は依然として貧困や基盤整備の不足に苦しんでいる。農村地域では土地所有の不平等が顕著であり、農民や女性が十分な土地アクセスを得られていないことが、社会的な不満と紛争の温床となっている。包括的農村改革が進むことで、農村の貧困削減と農民の生活向上が期待される
  • FARCの元戦闘員の再統合
    • FARCの元戦闘員を経済的、社会的、政治的に統合することは、和平プロセスの重要な柱である。彼らが社会から排除されることなく職業訓練や雇用機会を得ることで、再び武装勢力に戻るリスクを低減する必要がある。政治参加の保証も、元戦闘員が社会の一部として受け入れられる鍵となる
  • FARC以外の反政府組織やゲリラとの和平合意
    • ELN(国民解放軍)や他の武装勢力との停戦合意や和平交渉が進行中であるが、これらのプロセスは困難を伴う。特に、一部の武装勢力は麻薬取引などの犯罪活動に関与しており、和平交渉を妨げる要因となっている。これらの組織を和平プロセスに取り込み、暴力を減少させることが求められている

3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容

ブリーフィングで伺ったUNVMの取り組みは主に以下の3点である。

  • 包括的郊外のリフォーム
    • 土地アクセスの提供
      • これまで国土の12%しか土地が登録されておらず、大地主が非合法的な方法で管理していた。土地の不平等が対立の火種となったと言える。
      • 現在は、政府が土地を買い上げて土地を持たない農民や国内避難民に分配したり、以前より非公式に土地を所有してきた市民に所有権を与える公式化を行っている
      • 衛星等を使用した土地の管理も行っている
    • 郊外の開発
      • 郊外に設備や金銭を投資することで生産性向上を行い、人々が移民せずに定住できることを目指している。現在は国内紛争の影響やコカ栽培との関連が強い約60の地域で行っているが、今後スケールしていく予定。アマゾンの保全や先住民族の文脈にも配慮しながら取り組んでいる。
  • 元戦闘員の再統合の検証
    • 社会的統合
      • 教育やヘルスケア等へのアクセスを検証している。現在は、政府主体でバーチャルや対面で高校までの教育を終えられるように進められている。
    • 政治的統合
      • 和平合意の通り2026年までFARCが議会に10議席持つことを検証している。元戦闘員に議席を与え、発言の場を確保することで政治的統合を図っているが、議会以外でも自由に政治的発言できる状態が理想。和平合意以降、両者は良好な関係でパートナーとしてプロセスを進行している。
    • 元戦闘員の安全
      • 元戦闘員のセキュリティは依然として不安定であり、400人以上が暗殺されている。対策として、個人レベルでは、FARCの元リーダーのための車両を用意し移動の安全を確保、集団レベルでは、FARCのキャンプであるTATRのセキュリティを確保している。
  • 和平プロセスの拡大
    • 政府は完全な平和を目指していて、ELNや他のグループとも停戦や和平合意を結べるように努力している。現在、和平対話パネルをELNと行っている。FARCとの和平合意の達成は政府の自信になり、他組織とのプロセスに役立てられている。

また質疑応答セッションでは、UNVMによるこれまでの和平合意プロセスの評価と、今後の目指す姿について伺うことができた。

  • これまでの評価
    • 世界の多くの和平合意が5年も持たない中、包括的な取り組みと市民の強い思いに支えられたコロンビアの和平プロセスは現在8年目であり成功例と言える。
  • 今後の目指す姿
    • 今後は、戦争がない状態だけのネガティブな平和にとどまらず、民主主義、多様性、ウェルビーイングを含むポジティブな平和を目指していきたい。

4.参加者所感

和平合意はサインをして終わりではなく、長期的かつ包括的に実行への取り組みが続けられていることを学んだ。特に「包括的郊外のリフォーム」では、FARCが武器を取った主要なきっかけである土地の不平等の解消を、アマゾンの保全や先住民の権利保護と両立させながら進めている点に感銘を受けた。現在は、FARCとの和平合意の実行と同時にその他残存勢力との和平合意実現に向けた取り組みも行われている。過去の和平合意を土台として更なる和平合意を目指し、コロンビアで民主的で多様な積極的平和が達成されることを期待したい。(248字)

引用文献

写真①