コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:UNHCR」

要約

国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)は、難民・避難民の保護・支援を任務とする国連機関であり、コロンビアでは、主に、①国内紛争に伴う国内避難民、②ベネズエラ危機に端を発する難民・移民という2つの課題に取り組んでいる。①国内避難民への支援は、政府のサポートを中心としつつ、他国連機関とともに「協力枠組み」を結び活動している。また、コロンビアでは、アフロコロンビア人や先住民族の居住区で、武装勢力が自由な移動を妨げる閉じ込め(confinement)状況が生じており、そこでは基礎的ニーズの充足が課題である。②ベネズエラ危機に端を発する難民・移民について、UNHCRは法的保護のための文書化(documentation)が主な活動であり、法的制約を取り除き、保健や教育アクセスを保障しようとしている。また、ラテンアメリカ全体としてのベネズエラ移民・難民対応活動をリードしている。同危機に関連して、コロンビア・パナマ国境のダリアン(Darien)地域を通過する危険な移動が拡大しており、これについても他国連機関と協力しながら、人身売買や劣悪な健康状況への対処、親と離れ離れになった子ども(unaccompanied children)の保護などを行っている。

1.機関の組織概要 

UNHCRは、難民保護を目的として1951年に設立された国連総会の補助機関であり、難民条約・議定書の履行を任務とする。設立後、内戦の増加など国際情勢の変化に伴って、その保護・支援の範囲は拡大し、政治的迫害から国境を越えた難民だけではなく、国内外の紛争に伴って居住地を離れた避難民も対象としている。例えば、避難民支援では、法的保護やキャンプ運営、避難所運営などを担当し、他国際機関やNGOなどと協力しながら、国連全体として支援を行っている。

2.機関が取り組んでいるコロンビアの課題

UNHCRは、コロンビアにおいて主に、①国内紛争に伴う国内避難民、②ベネズエラ経済危機に端を発する難民・移民という2つの課題に取り組んでいる。2024年末時点でコロンビアには国内避難民が約700万人、ベネズエラからの移民・難民が約300万人存在している(1)。コロンビアは、その難民・避難民の数からラテンアメリカ諸国の中でもUNHCRの存在が高い国であり、国内にある17の事務所を拠点としつつ(図1)、現地および国際NGOとパートナーを組みながら、①保護(protection)、②支援(assistance)、③コミュニティのエンパワーメント(community empowerment)、④持続的な解決策(durable solutions)という4つの分野に対して優先的に取り組んでいる(2)。

図:コロンビアにおけるUNHCR事務所の所在地 (2)

3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容

(1)国内避難民に対する支援

UNHCRは主に国境を越えた難民保護を担当する国連機関であるが、コロンビア政府と国内避難民支援に関する覚書を結び、その活動を行ってきた。この活動については、他国連機関とともに「協力枠組み(cooperation framework)」を結んで国連全体として活動をしている。ただし、国内避難民は基本的に政府が保護や支援の責任を負うため、UNHCRが直接にニーズ等を聞き取るのではなく、政府のデータに依拠している部分も多い。

国内避難民の一種として、閉じ込め(confinement)状況もコロンビアでは生じている。アフロコロンビア人(Afro-Colombian)や先住民族の居住区では、武装勢力がその移動を妨げることで、基礎的なニーズ充足に問題を抱えており(3)、UNHCRはこの課題にも取り組んでいる。

(2)ベネズエラ危機に対する支援

コロンビアではカルタヘナ宣言(4)に基づき、ベネズエラで生じた人権侵害や公共秩序の混乱によって避難した人々を「難民」であると認識している。UNHCRは国連総会から難民保護の委任を受けた国連機関である。UNHCRの強みは法的保護にあるが、その手段として法的権利をまとめた文書化(documentation)を行い、それに基づいて人々が生活するうえでの法的制約を取り除き、保健や教育アクセスを保障しようとしている。また、ニーズを把握するために、難民に対して直接インタビューを行っている。加えて、ベネズエラ危機に対しては、コロンビアだけではなくラテンアメリカ諸国全体を対象として、他国連機関と協力しながら対応が行われており(5)、例えば、ベネズエラの子どもたちの保護については、UNHCRと国連児童基金(以下、UNICEF)がともに政府と協力して活動を行っている。

ダリエン危機

ベネズエラ危機に付随して、コロンビアとパナマの国境地帯であるダリエン(Darien)地域では、ベネズエラなどから北米に向かう人々の移動が急増している。ダリエン地域はそもそも陸路や海路ともに、移動自体に危険性が生じる地域であるとともに、人身売買や劣悪な健康状況、親と離れ離れになった子ども(unaccompanied children)の保護など複合的な課題が山積しており、UNHCRは、政府や市民社会、UNICEFなどの他国連機関とともに支援活動をしている。

4.参加者所感

コロンビアの複雑な強制移動状況が分かりやすい説明だった。とくに、武装勢力による人々の移動制限を表す「閉じ込め(confinement)」は、他国のUNHCRの活動ではほとんど耳にしないものであり、依然として続くコロンビア内戦の複雑さを感じた。他方、印象として感じたのは、自らの任務に対する忠実さであった。文書化(documentation)の強調、政府との協力、他国連機関との役割分担などが説明されたが、想定が難しい危機に対してどう柔軟に対処したのかなど、もう少し突っ込んで質問したい部分もあった。

引用文献

写真:UNHCRボゴタ事務所での集合写真