コロンビア・スタディ・プログラム - 報告書「渡航中:先住民の方とのダイアログ」
要約
エウマラはエンベラ族をはじめとする様々な先住民が所属するグループであり、都市部で生活する先住民コミュニティの文化継承と権利保護を目的に活動している。これらの先住民は紛争により都市部への移住を強いられたことから、文化的ギャップや差別、アイデンティティの喪失という課題に直面している。エウマラはこうした先住民が都市部でも伝統文化を守り、次世代に継承するためのコミュニティ形成を行っている。エウマラでは伝統的な手工芸、料理、言語、舞踊などの文化的活動を通じて、都市生活の中で自らのルーツを再確認する機会を提供している。さらに、先住民文化の魅力を広めるため、一般市民に向けた活動も行い、都市部における文化の多様性と共生を促進している。最近では政府や社会との連携を強化しており、先住民の権利保護に向けた提言を行っている。特に都市部での差別や雇用問題、教育環境での格差是正に向けた取り組みを行っており、伝統工芸品の販売や、学校での差別をなくすための活動が進められている。エウマラは都市で暮らす先住民が抱える課題を解決するためだけでなく、社会全体に先住民文化の重要性を認識させ、全ての人が共生する社会を目指して貢献している。
1.お話を伺った先住民族グループ概要
今回のブリーフィングではエンベラ・エジャビダ族に属する先住民女性に話を伺った。エンベラ・エジャビダはコロンビア北部のアンティオキア県に拠点を置き、未開発の熱帯雨林地帯に居住している。以前まではジャングルでの農業や狩猟で生活をしていたが、紛争の激化により、1997年を境に1600人以上が国内避難民として都市部への移住を強いられた。話を伺った先住民女性の方はエウマラと呼ばれる先住民グループに属しており、コミュニティを繋げ、先住民としてのアイデンティティを守るための活動を続けている。特に伝統文化の継承やコミュニティの権利保護を目的とした活動を展開しており、先住民文化の存続を図る重要な役割を果たしている。
2.彼女らが取り組んでいるコロンビアの課題
国内避難民として生活する先住民の方々は都市部での生活において、様々な課題に直面している。避難民として都市に移り住む中で、生活様式や文化の違いに戸惑うことが多く、共生の難しさを感じる場面が多い。それは伝統儀式や慣習、自然との調和を重視する生活様式など、あらゆる文化的ギャップに起因する。また文化的な違いから差別の対象となることもあり、スラムでの生活を選択する先住民も存在する。スラムでは差別を受ける機会が少なく、居住地域において自然とのつながりを模索しながら、先住民としての文化を維持しようとする努力が見られる。他にも都市で育った若い世代の中には、先住民としての伝統知識を持たず、先祖代々受け継がれてきた文化が希薄化する懸念が持たれている。都市部の教育や社会環境では先住民のアイデンティティを尊重する機会が限られることが多く、若者が自身のルーツへの理解や誇りを持ちにくい状況が重要な課題となっている。
3.機関が取り組んでいるプロジェクトの内容
先住民女性グループ「エウマラ」の取り組み
(1)先住民コミュニティの形成
エウマラでは同じ先住民としての経験や課題を共有する場を提供し、メンバーが互いに支え合うネットワークを形成している。活動には伝統的な手工芸や料理、言語の学び直しといった文化的な活動が含まれ、都市部での生活の中でも自身のルーツを見つめ直す機会を提供している。当初は内戦や移住の影響で避難民の多くが女性だったことから、先住民女性によるコミュニティ形成が進められていた。しかし、世代が2代目、3代目へと繋がる現在では活動の輪が広がり、単なる女性の集まりから「先住民女性とその家族の集まり」として発展している。こうした進展を経て、エウマラは世代や性別を超えて伝統を守り、都市部での生活において先住民の文化的な価値を次世代に伝える重要な役割を担ってる。
(2)啓発活動
エウマラの一部のメンバーは過去に教育を受けた経験から政府機関との繋がりを持ち、関係者との会議に参加する中で先住民としての知識を共有し、先住民のコミュニティ形成の必要性を発信する活動を行っている。この活動には先住民の文化継承の重要性や、都市部での差別や雇用問題への対策を訴える活動が含まれる。
(3)教育と文化継承の推進
エウマラでは若い世代に対する伝統文化の教育にも力を入れている。特に伝統舞踊、言語、さらには自然とのつながりを重視した文化的価値観を子どもたちに教えることで、失われつつある文化の保存と次世代への継承を目指している。学校に通う先住民が多くない現状を踏まえ、エウマラのコミュニティは教育と文化継承の場として重要な役割を果たしている。現在、活動の対象は先住民コミュニティ内に留まらず、一般市民に対しても伝統文化の魅力や意義を伝える取り組みが進められている。こうした活動を通じて、エウマラは都市部でも先住民のアイデンティティを尊重し、文化の多様性を支える教育を実現している。
4.参加者所感
先住民にとって都市は「生き延びるための場所」である一方で、都市での生活が差別を助長し、アイデンティティを否定される場にもなっている現状は憂慮すべき問題として印象に残った。こうした状況を改善するためには、都市住民と先住民が対話を進め、互いに学び合う仕組みを模索する必要がある。先住民との共生を実現している他国の事例を引き合いに出しながら、義務教育において先住民の文化や言語への理解を深める場を設けるなど、特に若い世代に対して働きかけることが包括的な社会を形成するために必要だと感じた。今回の話から先住民女性の力強さを感じたと同時に子供たちに文化を伝え続けることの意義を再認識した。
