ヨルダン・スタディ・プログラム - 「6.渡航後のJSPの活動について」

6.1 概要

JSPは1年間のプログラム活動として、渡航前、渡航中、渡航後がある。参加者は渡航前(前期)と渡航後(後期)でそれぞれ1〜2つの班に分かれて所属し、活動を行なった。渡航後は前期の勉強会や現地渡航を通じて学んだこと、体感したことを振り返り吟味し、個々人が持っている問題意識の仮説検証を行なった。渡航前、渡航中にインプットしたものを渡航後に報告会の実施、報告書の作成などを行い、他の人々にも分かち合い、アウトプットすることでより一層学びを深めた。渡航後の班体制は以下の通りである。

・報告会班
・報告書班
・新規事業班
・会計班(前期から継続)

上記のチーム別活動内容の詳細はリンクより確認のこと。
その他の活動として、JSP参加者の交流を更に深めるためにオンライン/オフライン交流会の実施。更にJSP参加者一人一人の多様な専門や背景、キャリアをプレゼンテーションにて発表するおしゃべり会の実施。そして、アプリSlackを通じて互いにお薦めの書籍、動画、映画を紹介し合うチャンネル作成など、参加者同士が主体的に研鑽し合う場が設けられ、充実した後期活動となった。

6.2 報告会班

6.2.1. 役割

報告会班の主な役割は、ヨルダンへの現地渡航を含む JSPの1年間の学びや活動のまとめとして「渡航後報告会」を企画・実施することである。

現地渡航前の活動では、ヨルダン渡航中の自分たちの学びが最大限深まるように、各班とメンバーそれぞれが準備してきた。その現地渡航を経てうまれた学びや経験を、JSPで1年間考えてきた「持続可能な社会や新しい難民政策のあり方」への仮説や意見に関して、自分たちなりの成果物として、渡航後報告会を通じて発表・発信していくことが目標である。

6.2.2. 活動

報告会班では、JSPの対外的なまとめの機会でもある「渡航後報告会」を企画・実施するにあたり、以下の3つの目的を意識して活動を行った。

  1. 日本において広く難民問題・ヨルダン・国際協力への関心を喚起すること
  2. 日本のステークホルダーへの報告・提案
  3. 来年度以降のSPへの参加者募集

報告会の実施を通じて、より多くの人にJSPで学んだことや伝えたいことが届くように、またスタディ・プログラムの活動に関心をもってもらい、国際平和や持続的な社会にむけて自分たちができることを考えて行動してもらうことに繋がるきっかけを1つでも生み出すことができればと考え活動してきた。

そしてそれらを達成することができるように東京、大阪、北海道、福岡での報告会を企画し、会場ごとに特色あるテーマとプログラムを設計したり、後期の活動全般の情報発信や広報を行ったりと、メンバーの得意なことを活かし合いながら準備を進めてきた。

また、報告会内容の充実に努めると共に、JSP参加者の多様さにも焦点をあてた情報発信と広報活動にも注力した。日本、ドイツ、コロンビア、エチオピア、香港、イギリスといった世界各地から、学生や社会人そして現役国連職員をはじめ約60名の参加者が一緒に学んできた雰囲気や参加意義などをSNSを介して発信することで、スタディ・プログラム自体の魅力についてもリアルな声を届けられるよう取り組んできた。

そうした多種多様なJSP参加者が集い、学びあってきた1年間のプロセスとそのまとめである「渡航後報告会」という時間が、難民支援や国際協力はもちろん、持続的な社会や国際平和への関わり方・貢献のあり方を模索される方にとっての、次の1歩に繋がる起点となればと願っている。

6.3 報告書班

6.3.1. 役割

報告書班は、現地渡航での学びをさらに深め、それらの学びを報告書にまとめ広く周知することを役割としている。渡航前の研究班の活動を引き継いでいる

6.3.2. 活動

具体的に行う活動は、下記の2つである

6.3.2.1. 渡航後勉強会の実施

渡航後勉強会は、前節の報告会と並んで、JSPの学びを外部に発信するための最終成果物である報告書を充実させる過程として位置づけ、全2回実施した。特に、報告書のハイライトとなる第4章(ヨルダンが抱える課題とその取り組み)について、経済や保健、教育、ジェンダーといった各テーマを深堀し、質の高い報告書となることを意識した。

渡航後約1カ月後に実施した第1回渡航後勉強会では、「テーマごとに渡航期間中に経験したことを振り返り、参加者間で共有するとともに、意見交換を行なう」という全体テーマのもと、メンバー同士でディスカッションを実施した。「ヨルダンの持続的な経済発展について」「ヨルダンにおける難民との共存について」「ヨルダンの人道・開発の現場における援助のあり方について」「ヨルダンの女性のエンパワーメントについて」という4つをディスカッションテーマとし、グループに分かれテーマごとに渡航中の経験や感じたことを共有したのち、テーマごとに用意された質問に対する答えを議論した。渡航から1カ月が過ぎていた中での議論ではあったが、渡航中に十分に議論することのできなかった論点について各々の意見を交換することができた時間であった。また、渡航前にもっていた仮説を改めて確認することもできたことからも、現地渡航の学びをさらに深めるきっかけとなった。

この勉強会での議論を踏まえて、参加者それぞれが最も深めたいと考えたテーマごとに、後述する報告書のうち、第4章を執筆する6つのチーム(難民キャンプにおける支援、経済・雇用、環境、保健、教育、ジェンダー、難民とホストコミュニティの共存)に分かれて準備を進めた。約一か月後に実施した第2回勉強会では、報告書の内容をブラッシュアップすることを目的に、各チームが執筆した内容について発表し、プログラム全体からのフィードバックを実施した。また、この勉強会がJSPメンバーが集まる最後の機会であったため、勉強会後半では、各自が1年間JSPで学んだことやこれからの抱負などの共有も行った。

6.3.2.2. 報告書の作成

報告書では、JSPでの1年間の学びをまとめる。作成した報告書は広く周知するとともに、訪問機関の方をはじめ、これまでにお世話になった方に送付をすることで、私たちの学びを共有するものである。

「みんなでつくる」というコンセプトのもと、報告書作成はその方向性を決めるところから始まった。メンバーにアンケートを実施し、その結果をもとに報告書の目的やターゲット読者、成果物のイメージなどを固めた。また、過去のスタディ・プログラムで作成した報告書のレビューおよび分析も実施し、JSPの報告書の構成の検討に活用した

報告書の執筆は、報告書班メンバーが取りまとめつつも、JSPメンバー全員で行った。先述のアンケートや過去の報告書レビューをもとに決定した構成のもと、章ごとに執筆メンバーを分担した。執筆に際しては、執筆の方向性について各章でミーティングを重ねる中で決めていった。各章の方向性や内容は、先述の勉強会にて共有をし、全体からもらったフィードバックをもとにブラッシュアップを行った。各章執筆が完了した後も、全員がフィードバックを行うとともに、執筆担当者とは別のメンバーが責任をもって編集を行うことで、より精度の高い報告書の完成を目指した。

6.4 新規事業班

6.4.1. 役割

新規事業班は、前期の資金調達班の活動を引き継ぎ「ヨルダンの現状、難民の課題について関心のない層にも課題を自分ごと化してもらう機会を提供すること」を主題として発足した。

上記の主題を実現するための目標として「2020年3月の時点で”やってよかった”とメンバー全員が思える事業を立ち上げる」「社会へのインパクトも提供する、特に日本の生活から一般的には遠く感じられるヨルダンでの難民を巡る諸課題を日本の様々なステークホルダーが自分ごと化できる機会を提供する」こととし、VR(Virtual Reality)画像の活用およびメディア媒体への渉外活動を行いつつ、新たな企画を検討し、試行錯誤しながら取り組んでいる。

6.4.2.活動

掲げた目標を念頭におき、具体的に行う活動は、下記の3つである。いずれもスタディ・プログラム史上初の試みである。

6.4.2.1.現地で撮影したVR画像を活用した企画及び広報

現地で撮影したVR画像を活用した企画及び広報現地で撮影したVR画像を活用した企画および広報については、まず現地で撮影したVR画像がどのようなことに使えるのかを技術面、内容面から検討した。その上で、現地の様子をより伝えられるよう報告会班と連携し、報告会開始前のアイスブレイク時の活用やYouTube チャンネル、SNSを通した広報材料として活用することとした。加えてホームページへの掲載も予定している。

スタディ・プログラムでVRを使用した初の試みとして、上記の通り出来ることを模索しながら取り組んでいるが、現地渡航していない人でも臨場感を味わうことができ、JSPメンバーが体感してきた現場の諸課題を自分ごと化してもらうためにも有効な広報手段となっている。

6.4.2.2. 訪問した国際機関、メディア媒体、NGOに向けた広報・渉外活動

訪問した国際機関、メディア媒体、NGOに向けた広報・渉外活動については、元々国際協力に関心のある方、又興味のない方も含め多くの方にヨルダンの現状や難民の課題に関心を持ってもらえるよう、お世話になった訪問機関の方やマスメディア、既に難民の課題に取り組んでいるNGOや団体にJSPの取り組みや渡航後報告会の活動を取り上げてもらえるよう交渉している。

6.4.2.3. 出張授業の実施

スタディ・プログラムにおいて初の試みとして、出張授業を実施した。JSPのメンバーが渡航前、現地渡航を通じて培った学びを、例年のスタディ・プログラムで実施する全国数カ所での報告会における情報発信から更に対象を広げて、全国の学校や自治体、団体に赴き授業の形で提供する試みである。授業の目的は、難民問題や国際協力にかかる関心や理解を深めること、異文化に対する理解を深め多文化共生の素地を作ること、異なる暮らしを知ることで自らの生活を見つめ直すこと、将来やキャリアを考える機会とすることである。

JSPでは関西学院大学、および桐蔭学園中学校にて出張授業を実施した。1月26日(日)に行われた関西学院大学での出張授業では、東ティモールへのフィールド調査を控えた学生を中心に、JSPの現地渡航の経験を生かし、渡航までのプロセスでの学びや、より充実したフィールドワークにする上で大事なことについて3人のメンバーが登壇して発表しました。参加者からは、「実践的な話、経験に基づいた話を聞くことができて参考になった」、「これからフィールドワークを行う上で必要な情報が得られた」との声をいただいた。2月8日(土)に行われた桐蔭学園中学校での出張授業では、杉原千畝氏について学んだ中学2年生85名に、「難民」を身近に感じてもらうことを目的として、ヨルダンで見聞きしたことを軸に、ヨルダンについてや難民について3人のメンバーが発表した。生徒からは、「世界にはこんなに難民の人がいることに驚いた」「難民が一般の人と同じように生活している人だと知り、難民のイメージが変わった」との声をいただいた。

新規事業班は文字通り、新たな事業を立ち上げ活動するため上記の役割を達成すべく試行錯誤しながら取り組んでいる。迷いやスムーズに進められないもどかしさもあるが試行錯誤すること自体に価値があり、多くの学びを得る機会となっている。

新規事業班の役割である「ヨルダンの現状、難民の課題について関心のない層にも課題を自分ごと化してもらう機会を提供すること」を果たせるよう、メンバーと協力し受け取り手の方に関心をもってもらえるよう活動していく。