ミャンマー・スタディ・プログラム - 参加者紹介「第13回 池田裕美さん」
「日本人として世界で生きること」
MySP担当班:ロジ・会計班
「日本に生まれたというのはどういうことなんだろう」 と考え始めたのは小学校高学年の時でした。海外渡航はおろか、引越しの経験すらない自分は、外の世界を全く知らないのではないかとふと思ったのです。アフガニスタンで医療活動をする方のお話を、漫画で読んだこともきっかけでした。中学1年生のときに9.11のテロが起こり、反イスラム色を増すメディアの報道に、「でも、現地にも私たちのように普通に生活している人たちがいるはず。その人たちの日常が伝わってこない。」と感じ、それ以来「自分の目で、生活者の視点で現地を見てみたい。」という思いを抱くようになりました。 これが、海外への興味の始まりでした。
大学生になり、国際協力関係のシンポジウムや講演会に足しげく通う傍ら、「自分の今までの人生であまり出会うことのなかった人々に出会いたい。自分の目で世界の現状を見たい。」という思いが消えず、1年間大学を休学することを決意しました。休学中は、ネパールの保育園やオーストラリアの難民センターで業務補助のボランティアをしたり、パレスチナなど中東4か国を自転車で走ったり、コソボやセルビアで国内避難民についての調査活動を行ったりしました。
休学中に強く感じたことは、「日本のパスポートを持っていることの意味」でした。学生である自分は、アルバイトで賄えるくらいのお金で、こうして気軽に旅ができる。それに引き替え、家族を養いながら生活している私の友達は、簡単に日本へ渡ることができない。「日本へ遊びに来てね」という言葉を安易に発してしまうことの罪深さに気づき、とてもショックでした。”移動の自由”を自動的に享受している自分の立場を思い知りました。
帰国後、私はかねてから興味を抱いていた、日本へ庇護を求めてきた難民を支援するNGOで9ヵ月間インターンシップを行いました。難民の人の目から見る日本社会は、生きづらく、時にとても冷たいものでした。自分の周りだけを見て生きていては知りえなかった、可視化されていない自分の社会の一面を知ることができました。
その一方で、学生時代の海外渡航は、もう1つとても大事なことを教えてくれました。今まであまり好きだと思えなかった自分の国の良いところを、たくさん発見したのです。「日本のことが好き。」「日本に興味がある。」という人にも多く出会いました。同時に、日本人であるという自分のアイデンティティを強く認識するようになりました。
これらの体験によって、自分は世界の中で日本人として生きていくのだということを改めてかみしめるとともに、人の文化やアイデンティティを尊重するには、自分のことも大事にしないといけないのだと考えるようになりました。
現在私は、東南アジアとの文化交流事業を計画・実施する仕事をしています。対等な立場での人と人との交流に携わることができるのは幸せなことではありますが、社会人になってから見る世界と、学生の時に接してきた世界との間に、しばしばギャップを感じることもあります。MySPに参加しようと思ったのは、普段の仕事とは少し離れた視点から社会を見てみたいと思ったからです。より多様で、格差の大きい社会と向き合うにあたって、国連など様々な立場の方と対話の機会があることは、現地事情を理解する上でも、自分の問題意識をアウトプットする方法を考える上でも、有効であると考えました。これを機に、日本人としてどのように生き、どのような価値を社会に生み出していきたいのかについて、考えを深めたいと思っています。