ミャンマー・スタディ・プログラム - 振り返りエッセイ「No.7 川橋天地」

途上国のビジネスを支える基盤づくりで夢を広げる!!

所属:早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科

No.7 川橋天地

「途上国開発の最前線の現場に行ける!!」これがMySPに参加することを私が決意した理由でした。

それから約半年が過ぎたいま。MySPに携わってきた時間は非常に濃密なものだったと実感しています。毎週のように行っていたオンライン・ミーティング、現地国際機関やNGOの担当者の方々との慣れない交渉メール、先輩たちからの暖かいご指導とお叱り、そしてヤンゴンとカチンで過ごした一週間、どれもこれも忘れがたい経験でした。この約半年間を事前準備、現地渡航、今後の目標の三つに分けて振り返っていきたいと思います。

1.事前準備

事前調整の段階で主に私が取り組んだのは、国際連合世界食糧計画(WFP)と二つのNGOの担当者の方とのメール交渉での企画調整、現地学生とのヤンゴンでのディスカッション企画の準備でした。実は、私の担当していた事前準備は、本当に失敗続きで自分の不甲斐なさに何度も自分自身に嫌気が差していました。メールのマナーや英語の基本文法、なにひとつ取っても最初は足を引っ張ることだらけで、現地学生との交流会は本当に学生が集まるのかどうかが危うい。プロジェクトの概要が決まっても、渡航するまで不安でいっぱいでした。

でも、そんな自分が、失敗を繰り返しつつも一歩ずつプログラム作成に携われたのは、経験豊富な参加者の方々がサポートしてくれたおかげでした。最初はなかなか相談しにくかった些細な悩みも親身になって相談に乗ってくださり、過ちがあれば適切なアドバイスをくれる方々。たとえどんなに経験が浅い人(まさに自分!!)でも、社会人や先輩が親身になって相談に乗ってくださり、プログラム作成に携わることができる。これこそがこのスタディ・プログラムの特徴であり、強みではないかと思います。

2.現地渡航

現地渡航で一番印象に残っているのは、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)が支援するカチン州の国内避難民(IDP)キャンプを訪問したことです。国内なのに難民??と最初は僕も思っていましたが、カチン州では少数民族のカチン族の人々が二年前に発生した独立紛争の影響で故郷を追われ、同じミャンマー国内に滞在していても避難民としてキャンプ生活をおくっているのです。

IDPキャンプに行く直前の打ち合わせでは、UNHCRスタッフの方からキャンプでの注意事項を厳重に言われていたので緊張していたのですが、キャンプ内ではIDPの方々が私達のことを暖かく迎えてくださりました。笑顔で挨拶を返してくれる子供達や、自分が作ったアクセサリーを嬉しそうに見せてくれるおばさんたち、コミュニティのことを熱心に私達に説明してくださるキャンプのリーダー。IDPキャンプで出会った方々が日本から来た私達に興味を持ってくださり、日々の生活の様子や日本のことなどをたくさん話しこむことができました。

キャンプ内では、国際機関やNGOからの支援をもとに、アクセサリーや洋服作りなどの産業、井戸やトイレなどの水回り、小学校や幼稚園などの教育機関、リーダーや食料配給担当などのキャンプ内運営組織が整えられていて、想像していたよりも充実した環境が整っていました。なかでも教育機関がしっかりとしていて、外部の学校に行くこともあるが、高等教育への進学支援も進んでいるなど、将来のコミュニティの担い手がキャンプ内で育ちつつある様子に希望を持ちました。

しかし、いまだにコミュニティ全体が故郷に戻れるような状況ではなく、紛争はなかなか終わる気配がありません。もし援助が続かなければ彼らの生活が困窮してしまうかもしれませんが、一方で援助によって援助依存体制という問題が出てきたり、キャンプ周辺の地域経済と根付くことで、もとの故郷に戻れなくなってしまったりするかもしれません。そんなジレンマと葛藤しながら日々、IDPの方々のために奔走していらっしゃるUNHCRスタッフの方々の姿が印象的でした。

3.今後について

今回のスタディ・プログラムを通じ、IDPキャンプや各国際機関、NGOを巡って感じたことがあります。それは、どこも共通して資金不足という課題に直面していることです。IDPの方々へ食料や支援物資を配給する際も職業訓練校でミャンマーの障害を抱えた人々の自立支援を促していく際も全て資金難という問題に直面し、事業がスムーズに進まないという課題があります(もちろんそれだけではないですが)。

限られた資金を効率的に配分するために、苦渋の決断で支援を打ち切る決断をすることがあるとおっしゃっていたWFP職員の方のお話も忘れられません。素晴らしい人材開発やインフラ整備、食糧支援などの計画やビジネスがあっても、それらが物資や人材、そしてなにより資金不足から進まないジレンマをいかに解決していくかということに対して、将来お役に立てないかという意識が芽生え始めました。

そこで私は将来、金融やビジネス面で経験を積み、ファンドマネージメントや事業投資の方向から途上国の発展の基盤づくりに貢献できないかと考えています。国際機関やNGOだけでなくビジネスの立場からも、現地の人々が自立して新規事業を始めていくときに、うまく資金調達で手助けできれば、その可能性や夢を広げることができると思っています。 現在、就職活動真っ最中で、すぐさま自分の目標に直結するような仕事を始められるかどうかはわかりません。しかし、将来の目標につながるような後悔のない選択ができるように、これからのキャリアを突き進んで行きたいと思います。