ルワンダ・スタディ・プログラム - 報告書「2.7.国連食糧農業機関(FAO)」

写真①
写真②

1.訪問先

FAO(Food and Agriculture Organization: 国際連合食糧農業機関)

2.該当テーマ

IT/経済・産業/農業

3.組織概要(事業目的、ゴール等)

〈FAOミッション〉

国連食糧農業機関(FAO)は、世界の農林水産業の発展と農村開発に取り組む国連の専門機関である。FAOは、196の加盟国(2つの準加盟国含む)およびEU(欧州連合)から成り、本部はイタリアのローマにある。

FAOの使命は、世界の人々の栄養と生活水準および農業生産性を向上し、農村に生活する人々の生活条件を改善して、世界経済成長へ寄与することである。

開発途上国を中心に貧困と飢餓に苦しむ人々の栄養状態と生活水準を改善することによって、すべての人が健康な生活を送ることを目指す。

(FAO駐日連絡事務所 HPより)

〈FAOルワンダ事務所のミッション〉

1963年よりルワンダでのFAOの活動が開始され、1985年にルワンダ事務所が設立される。主な活動内容は以下の5つ。

  1. Development projects
  2. Emergency and rehabilitation
  3. Policy development support
  4. Sustainable food and agriculture
  5. Country under closer observation 

特にルワンダでは以下の点をRegional Initiative(以下RIと記載)として掲げ活動を展開している。

  • RI1: Meeting the zero hunger challenge
  • RI2: Sustainable production intensification & commercialization and value chain development
  • RI3: Resilient Livelihoods in Africa

今回は農業分野のICT活用を検討しているプロジェクト(以下項目①)と女性の地位向上を目的として展開されているプロジェクト(以下項目②)を訪問した。

4.ブリーフィング、プロジェクト訪問において説明された内容・質疑応答の詳細

今回は二つのプロジェクトを訪問した。

① ICTを活用した農業効率化に向けたプロジェクト

<プロジェクト概要>

  • 目的:食糧安全保障、農業生産性向上、農村貧困削減
  • 地域:ルワンダ全土(開発拠点はキガリ)
  • PJ主体:FAO(パートナー:農業動物資源省(Ministry of Agriculture and Animal Resources (MINAGRI) ), 青年ICT省(Ministry of Youth and ICT (MYICT)))
  • 期間:2016年9月-2017年12月

 <プロジェクト詳細>

ICTを用いて、農業生産性並びに市場価値向上の促進を狙う。ルワンダ政府(Ministry of Agriculture and Animal Resources, Ministry of Youth and ICT)と足並みをそろえ、国家戦略の実現を狙い展開している。 現在展開、検討されている施策は以下の通り。

〈現在展開中の施策〉

・ホームページでの農作物生産方法掲載

ルワンダで栽培されている主作物の生産方法を掲載している。ITを使い慣れていない人でも使用できるよう画像を中心とした構成になっている。また、字が読めない国民に配慮し、テキストだけではなく動画を配信している。
よりきめ細やかな対応を行うため、チャット機能も導入されている。

〈これから展開予定の施策〉

・農業に関連したスマートフォンアプリケーションのローンチ その日の天候に応じ、行う必要のある作業を知らせるアプリケーションや、本日の市場動向(いくらで農作物が売買されるか)を知らせるアプリケーション等より機動的なアプリケーションのローンチ予定。アプリケーションの作成はKLabのエンジニアが手がける。具体的なアプリケーションの内容は以下の通り。

  • “Cure and Feed your livestock”: 家畜の給餌や病気にまつわるリアルタイムな情報を発信するアプリケーション
  • “e-Nutrifood”:栄養価の高い農作物を生産するための情報を配信するアプリケーション
  • “Weather and Crop calendar”: 気象情報を知らせるとともに行うべき農作業をアラートするアプリケーション
  • “AgriMarketplace”: 生産者、トレーダー、消費者をつなぎ取引向上を実現させるアプリケーション

上記アプリケーションのローンチはルワンダ以外ではセネガルでも予定されており、今後他の国での導入も検討されている。

またFAO Rwandaは今後ICTを活用し、天候状況に応じた農業用保険(天候デリバティブ保険:天候に恵まれず不作だった場合の損失を補償する保険制度)の展開等検討している。

② 地域女性の経済エンパワメントプロジェクト

 <プロジェクト概要>

  • 目的:食糧安全保障、農業生産性向上、女性のエンパワメント、農村貧困削減
  • 地域:Nyarurugu District(キガリから南へ車で2時間程度)
  • PJ主体:FAO、UN Women、IFAD(国際農業開発基金)、WFP
  • 期間:2012年10月-2017年10月

 <プロジェクト詳細>

FAO、IFAD、UN Woman、WFPが共同で行なっているプロジェクト。FAOの本プロジェクトの目的は以下の通り。

  • 目的1:地方での男女間格差を是正することで女性の社会的・経済的エンパワメントを図る
  • 目的2:地方の女性が現在よりも資源、資産、技術、サービスや経済的機会を持てるようにする
  • 目的3:社会的変化を生み出せる場を作り出す

具体的施策として「Farmer Field and Life School」を運営している。RSPでは今回このshoolを見学させてもらった。

〈Farmer Field and Life School〉

  • 訪問したのはNyaruguru DistrictのSchool。地域女性を集め開講している。男性の参加希望者がいた場合も原則受け付ける。
  • 効率的な農業方法を教えるだけでなく、衛生管理、家族計画等農業の生産性の間接的に寄与している事項についても教えている。
  • 実際に農作物を生産、市場へ卸すところまで行い、実践的な形式で教えている。なお市場向け農業だけでなく家庭菜園についての授業も行っている。
  • 教え方にも特徴があり、受講者自らが選ぶことを重視している。例えば、その地で古くから栽培されているトウモロコシの生産方法について、従来の農業方法と効率化された新しい農業方法をテストし、どちらの農業方法をえらぶかは受講者内で決定させている。
  • 受講者が少額ずつを拠出し農業機械等の購入にあてている。受講者が何らかの問題により経済的なダメージを受けた際もそのプールされたお金から援助金を出す保険としての側面も持っている。

Schoolへの参加は強制ではないため、立ち上げ当初は受講者集めに苦労するが、受講者の生活レベルが格段にあがるため、それを見た近隣住人が芋づる式に受講する良いサイクルが働いている。

Schoolは詰込み型ではなく実践的な形で運営されているため、受講者のモチベーションを上げることがカギであると伺った。

実際にこのSchoolでは掛け声や歌を積極的に取り入れ、受講者のモチベーション維持を図っていた。

③ その他

FAOの地方プロジェクトを訪問した際に訪問地の市長に話を伺う機会があった。その際政府による地方評価の仕組みが洗練されていたのでここに記す。

〈ルワンダにおける地方評価制度〉

定期的に政府は各地方の農業生産性を評価している。評価後各地方をランキング化。ランキングに応じて傾斜をつけ地方ごとの拠出金を分配している。(地方間にて競争が生まれる。)

評価は一律の評価基準を通して行われるのではなく、各地方の前年度に各地方が政府に約束した目標への達成度合いを評価する。なおその際激甚災害等やむを得ない事情のため農業生産性が落ちている場合はその点も考慮される。

前回ランキング最下位だった地方が次回は上位になる等、ランキングは流動的であり、特定の地方が有利である評価制度ではないことが伺える。

なお、各都市が政府(大統領)に約束する目標は、その目標が妥当なものなのか必ず第三者(オンブズマン)により検証される。

5.参加者所感

①のプロジェクトでは実際の開発中のアプリケーションの概要を画像イメージとともに説明してもらい、まるで日本のアプリケーションであってもおかしくないほど洗練された内容に驚いた。そのイメージを持った状態で地方に移動したので、その落差(電気が通っていない、スマホの普及が見受けられない等)にも驚くこととなり、ルワンダのICTにおける次の課題は全国民のICTリテラシーをどのように引き上げるかではないかと感じた。

②のプロジェクトの中でその土地の市長に会う機会があり、国家による地方評価へのそのきめ細やかさに感銘を受けた。国民がルワンダ政府(ポールカガメ政権)を支持する理由の一つは、この不正のない緻密な対応によるところも大きいのではと感じた。またプロジェクト自体では実際に参画している女性の方に集まっていただだが、皆いきいきとされていて、また実際にこのプログラムに参画されて生活の質が向上していると伺い、良い影響をもたらしていることが伺えた。

執筆者:藤居 由依