USPブログ⑰ - オンラインブリーフィング開催報告④
USPでは、ウガンダで活動されている機関や団体、専門家の方々からお話を伺うオンラインブリーフィングを、9月より実施しています。11月後半は人権・教育、保健分野の専門家の方からのブリーフィングをレポートします!
11/22(日) テラ・ルネッサンス ウガンダ駐在代表 小川真吾さん
「ウガンダ北部地域における元子ども兵の社会復帰支援」
テラ・ルネッサンスは2001年からカンボジアの地雷対策から活動拡大し、主に紛争地域で子ども兵・女性の開発・人道支援を実施しています。※詳しくは公式サイトより
ウガンダでは38000人以上とも言われる子ども兵の問題があります。元子ども兵は自らの家族を殺害するよう命令されたり、女性の子ども兵においてはレイプ被害を受けたりして、そのような暴力の加害者にも被害者にもさせられてしまいます。そのような環境から辛うじて抜け出しても、彼らを待っているのは、コミュニティからの偏見です。
テラ・ルネッサンスでは、社会復帰の指標:①社会復帰後の収入額(3000円)/月②地域住民との関係性(差別/偏見の有無、相互扶助の有無)を定めております。仕事の能力や、自己形成につながる教育の大切さを小川さんには語っていただきました。
特徴的な支援の一つとして、彼らに現地の伝統的な儀礼を体験してもらう心理社会支援があります。これは、時に一部の支援においては現地の伝統儀礼を「古い」「悪習」等と決めつけ、否定する場合もあり、それでは結局、彼らがコミュニティに回帰していく際に、コミュニティの民族習慣に馴染めなかったり、疎外される原因になったりしてしまうからです。土着の信仰や民族意識の視点を大切にしている点に感銘を受けました。
小川さんは、「(貧困層や難民の方々が)ウイルスに殺される前に、失業に殺される」という言葉で、COVID-19の影響で貧困層、難民等の脆弱性が増していると仰っていました。原因としては、ロックダウンにより失業が増えている事や、物価の高騰、また交通機関が止まることにより、病院へのアクセスが途絶え、妊産婦への治療が困難になったり、マラリアのリスクが高まっている事を挙げられます。
上記のように、ウイルスに対する対策の中で不平等性が現れており、「何のリスクか(経済が滞るなどといった具体的な事象)」より、「誰のリスクか」を考える事が重要なポイントだと語っていた小川さんの、熱い想いを感じる事ができたブリーフィングとなりました。
11/26(木) エイズ孤児支援NGO PLAS海外事業マネージャー:三関理沙さん
「ウガンダでのPLASの活動、コロナの影響について」
PLASはアフリカのケニア共和国・ウガンダ共和国で活動を展開する、エイズ孤児やHIV/エイズに影響を受ける人を支援するNGOです。※詳しくは公式サイトより
PLASでは、HIV陽性者や、エイズ孤児のために、①収入だけではなく、支出とのバランスを考えた「生計向上支援」、②ライフプランニングやキャリアスキルの形成等(ex.学校に行ったことのない親が、子どもに学校に行かせることができるように)を支援する「ライフプランニング支援」の2つの事業を活動の柱とし、それらを組み合わせ、郡・県レベルで地域特性に応じたプロジェクトを実行しています。
例えば、「カフェ事業」では、現地パートナーと、シングルマザーの生計向上を応援しており、受益者の選定から、開業の機材研修や技能研修、仮説店舗での開業、店舗への移行・開業、モニタリング支援までを行っているそうです。
他にもHIV陽性者のアドヒアランス(治療や服薬に対して患者が積極的に関わり、その決定に沿った治療を受けること) の向上を支援しており、三関さんは、周囲の偏見をなくす広報よりも、HIV陽性者自身の中にあるスティグマ(人に言えない、恥ずべき事といった偏見) に向き合うこと、つまり 「自分とどう向き合うか。」が重要と語っておられました。
現地のNGOと関係性を一つずつ築き上げてきたことで、コロナ禍であっても現地のNGOが活動を続けることができているそうです。ウガンダ人による自律的な発展を促すNGOならではの理想の支援の形だと感じました。また、ウガンダには今回のコロナ禍も含め自然災害等、社会に変化に対抗するレジリエンスがなく、特に、女性、HIV、難民や僻地の住民は、情報や知識の差により大きな格差につながる可能性があります。現地の女性も「貯蓄もなく、日雇いの仕事で食べるものもなくなる。ひもじい思いをするのは私達。」と語っていたそうです。
上記の課題に加え、ロックダウンによるDVなど、当事者以外からは見えない問題に対しての支援は、更に困難なことだと考えさせられる時間でした。
11月後半のハイライト感想
今回は人権・教育、保健分野のNGOの方々からのお話しを聞くことで、より支援の最前線における具体的な活動の内容や、課題を垣間見る事ができました。特にお二人の言葉から、いかに現地の人々や被支援者に寄り添った支援をされているか、いかにCOVID-19は、更なる不平等や格差、見えづらい課題を生み出しているかを感じる事ができました。USPメンバーにとっては学びが深まったとともに、疑問やモヤモヤが増し、更に現場に行きたい気持ちが募った時間になったと思います。
12月以降は環境、経済開発、ビジネスの分野のブリーフィングが続きます。今後も、乞うご期待ください。(松本)