USPブログ㉟ - オンラインブリーフィング開催報告⑧
みなさんこんにちは。USPでは、オンラインにてウガンダで活動されている機関や団体、専門家の方々からお話を伺うオンラインブリーフィングを、9月より実施しています。ラストの3月には、3回分のブリーフィング(うち1つは録画視聴)を行いました。
①Courie Mate(宅配サービス)創業者 伊藤淳 様
CourieMateはウガンダで宅配サービス(ラストマイルデリバリー)を行っている企業です。今回のオンラインブリーフィングでは、創業者である伊藤様より、創業に至るまでの過程やビジネスを展開していく上で心がけていること、軸となる考え方についてお話を伺いました。
外資系コンサル企業でキャリアをスタートさせて伊藤さんは、当時の企業のボランティアプログラムでケニアに渡航したことがきっかけで、アフリカでの起業を決意されました。時に裁判沙汰になったりトラック運転士から現地の情報を聞き出すなど、ハングリーで甘くない環境から、「世界のトレンドに乗っていきたい」という信念を曲げずに試行錯誤を重ねて創業に至ったというお話を聞いて、挑戦への覚悟やバイタリティを生かした活躍機会の創出にUSPメンバー一同大きな刺激を受けました。
またビジネスの展開について、教える-教えられるという関係ではなく、「対等な関係」であることを意識して活動しているという言葉が印象的でした。援助対象として現地の人々を見るのではなく、現地のニーズを徹底的に調べ、ウガンダの物流面において存在する様々な課題(住所がない、多様な支払いサービスがないなど)をうまく取り込んで、成長するビジネスに発展させていった過程は、これからの国際協力の在り方を考える上での重要な視点のように感じました。
★★参加者の声★★
受け身になるのではなく、まずはGIVEからはじめること。そして現地で出会う新たな発見に対して、すぐにカテゴライズすることなく、その手触り感、解像度の高さを大切にすること。この2つの考え方が印象に残りました。コロナウイルス感染拡大の影響で海外に出れない日が続区中で、こうした現場でのテクニックを聞けてとても有意義な時間になりました。
②京都大学アフリカ地域研究資料センター 特任研究員 川口 博子様
川口さんは、ウガンダ北部での内戦を経て帰還した元子ども兵と住民の間で伝統的な手法に基づいて行われた「賠償」や「死の清算」を専門に研究されている方です。2008年より当該地域の紛争後の平和についての研究を開始し、合計3年間の現地調査をご経験されています。今回のブリーフィングでは、平和構築に向けて必要な過程である恩赦・和解・処罰のプロセスとその過程で重要視される被害者・加害者の考え方について詳しくお話を伺いました。
ウガンダの紛争は首都カンパラを拠点とする南部政権(バンツー系民族)とナイル・スーダン系民族が中心の北部反政府軍の戦いであり、その根本の要因は欧米による植民地支配時代の民族分断統治にあります。戦いの中、地域住民への略奪や拉致が発生し、多くの人々が国内避難民となりました。その過程で、子供を誘拐し兵士として育成、洗脳し戦場で多くの殺人行為を行う事例が発生しました。お話を伺う中で、その子ども兵たちは果たして「加害者」だといえるのか、戦争責任はどこの誰にあるのか、判断するのがとても難しいという言葉が印象的で、聞いている我々も深く考えさせられました。
川口さんの現地調査によると、政府・現地NGO・伝統的民族組織など様々なアクターがそれぞれの正義に基づいて紛争経験と向き合い、一人一人の関係性の修復しながら、未来を模索してきたとのことです。元兵士の帰還後の現地コミュニティとの関係性構築やトラウマの克服は簡単なものではなく、恩赦や形式的処罰などの「グローバルな価値観での正義」だけで解決するのは難しいそうで、加害者・被害者両方の根本的な心のケアにおいては、伝統的手法に基づいた和解も一手法として尊重されているそうです。
★★参加者の声★★
これまで内戦や平和構築についても勉強会などで取り上げてきましたが、戦争がいかに終戦後も人々の生活や心に大きな影響を及ぼすのかをまじまじと感じるブリーフィングとなりました。その一方で、川口さんの見地での体験や研究の手法は聞いていてワクワクする内容も多く、フィールド調査の楽しさと意義の大きさを感じました。
③元World Bank シニアマネージャー Betty Bigombe様 (録画視聴)
お話を聞かせていただいたBettyさんは、南スーダン和平交渉時のウガンダ政府代表やウガンダ内戦時の北部軍(神の抵抗軍)との交渉における政府代表の立場を歴任したほか、ウガンダ政府に国会議員や大臣を務め、その後世界銀行にて紛争・暴力・脆弱性の分野のシニアマネージャーをご経験された方です。今回のセッションでは、現在の仕事、ウガンダの今と将来、女性としてどのようにチャレンジを乗り越えてきたかについてお話しをしてもらいました。
ここ数年メインで関わってきたお仕事は、国家間・政党間の衝突回避のための交渉や仕組みづくりを行うことだそうです。調停者のポジションとして南スーダンでは公正な選挙の実施、政府機能の移転に尽力しました。その際はウガンダ北部の紛争終結に関わったご経験から、「大事なのは人々に指示を出すのではなくその人たちの言い分を聞いて本質を理解することだ」という信念を常に持って活動をされていたようです。また、国内避難民のキャンプで見た内戦の実情から、「平和構築に関わることは、仕事というよりも使命に近い」という言葉があったのも印象的でした。
★★参加者の声★★
政府・国際機関レベルで職務経験を積まれた方から、ウガンダの選挙の話やこれからの国の将来についての意見が聞けたことはとても貴重な機会でした。経済や教育環境の発展については現政権を評価しつつも、ガバナンスの面(汚職の心配)や保健医療の分野で改善の余地がある点などは、勉強会やブリーフィングで立てた仮説と近いものがあり、研究の成果も感じられるセッションとなりました。