第5章 フィールドスタディ(OBF):仮説とその検証結果①
5.1 オンラインブリーフィング(OBF)
5.1.1 オンラインブリーフィング(OBF)の目的
オンラインブリーフィング(OBF)の目的 USPでは、COVID-19の影響で、現地訪問が難しくなったことを踏まえ、以下を目的としてオンラインブリーフィングを実施した。 オンラインブリーフィングとは、Zoomによって、オンラインで現地機関の職員と繋ぎ、説明を受けるだけでなく、双方向的な質疑応答や議論を行う会のことを指しており、目的は以下の通りである。
(1)SDGsの各分野の機関を網羅的にオンライン訪問することで、第4章で記載した勉強会等を通して各テーマについて参加者各々が立ててきた仮説を検証すること。
(2)現地機関の職員の方々からお話しを伺うことによって、各機関のプロジェクトや現地の人々、実際の問題等、現場に携わる人にしかわからないこと、机上の学びでは得られない学びを得ること。
5.1.2 オンラインブリーフィング(OBF)の概要
5.1.2.1 OBF機関一覧
オンラインブリーフィングにて訪問した機関は以下の表の通りである。USPはSDGsがキーワードになっていることから、テーマを難民、教育/人権、住/環境、医療/保健、経済開発、ビジネスの6つのカテゴリーに分類、さらに国際機関だけでなく、NGOや民間あるいは大学教授といった幅広い領域の方から話を伺うべく機関の選定を行った。機関選定に当たっては、幅広い視点を提供するとの観点から参加者に対する希望機関のアンケートを基にして、テーマに偏りがない様に最終的に機関を決定した。なお、アポイントメントをとったものの、返答がない機関もあったため、多少のばらつきが生じている。
大使館
- 在ウガンダ日本国大使館:ウガンダ大使館への表敬訪問
- 在日本ウガンダ大使館:ウガンダと日本の二国間関係
難民
- AAR:ユンベ県における南スーダン難民の緊急人道支援、地雷不発弾被害者の自立支援
- UNHCR:モヨ県・オボンギ県における南スーダン難民の保護活動
- ピースウィンズジャパン:コンゴ民主共和国(DRC)難民支援として実施している給水衛生事業(給水施設建設、トイレ建設、衛生普及活動等)
教育/人権
- テラ・ルネッサンス:ウガンダ北部地域における子ども兵の社会復帰支援
- Save the Children:子どもの保護および生計向上プロジェクトといった事業内容
- あしながウガンダ:実施する支援内容及び実際に支援を受けた方のライフストーリー
医療/保健
- PLAS:ウガンダにおけるエイズ孤児支援プログラム及び総合的支援(生計向上、ライフプランニング)プログラム
経済/開発
- UNDP:事業内容、とくに若者の起業支援
- 世界銀行:ウガンダ地方財政プロジェクト、ガバナンス支援
- JICA:支援内容、COVID19が支援に与える影響
ビジネス
- Saraya:事業内容およびCOVID-19への対応
- Ricci everyday:事業内容(アフリカンプリントの製品開発)
- Senga Sourcing:ウガンダにおけるスタートアップ事業
- Courie Mate:ラストマイルデリバリーの立ち上げ経緯とスタートアップの難しさ
研究者等
- 神戸大学/梅屋潔氏:変貌するアフリカとその関係性、現地との関わり方・距離感
- JICA企画調査員/小向絵里氏:アチョリ地域、西ナイル地域におけるJICAによる平和構築支援
- ABEイニシアチブ生3名 Rachel Kibirigi氏、Barigye Doreen氏、Okiria Emmanuel Ariko氏:ジェンダーと持続可能エネルギー、雇用と職業訓練、農業と気候
- Mwesigwa Geoffrey Philip氏:ウガンダとSDGs、ウガンダのビジネスポテンシャル
- 慶応義塾大学/杉木明子氏 :ウガンダにおける難民政策
- 東京外国語大学/村橋勲氏:ウガンダの難民-セトルメントにおける難民受け入れの現状-
- 元Saraya East Africa/森本真輔氏:ウガンダにおける医療衛生ビジネス-サラヤの事例から-
5.1.2.2 OBF全体を通した考察
オンラインブリーフィングはCOVID-19の影響で現地への訪問が難しい状況となったことを受けて実施された新たな取り組みであり、ブリーフィングの位置づけや目的、実施数、アポの打診方法等新たに検討すべきことも多く、SPとして新しい挑戦の連続であった。 実施に当たっては、上記の通り非常に苦労したことも多かったが、結果的に20以上のテーマで話を聞くことができたことは成功だったと言える。
一方、渡航が出来なかったことで、参加者は学業、仕事と並行してブリーフィングを受けることになってしまい、時間や日程によっては参加出来ない人が出てしまったこと、参加者の負担が大きくなってしまったことは事実である。さらに実際に対面で参加者同士で会う機会が少なかったことから、オンラインで振返り会は開催していたものの、参加者同士で仮説や感じたことについてざっくばらんに話す機会が限られてしまい、聞いた内容を消化しきれない状態になってしまったケースもあったのではないかと考えられる。また、オンラインで実施するため実際に現場を目で見ることは出来ず、あくまでも職員の人々から聞いた話だけになってしまい、現場感、臨場感を感じることが難しかったという点はオンラインブリーフィングの難しさとして挙げられる。
今後のSPにてオンラインブリーフィングが実施されることがある場合には、いかにして臨場感のあるブリーフィングを実現させるのか、いかにして参加者がブリーフィングで聞いた内容を咀嚼し、納得感のあるものとするのかという点についてより深く検討することが望ましい。