第5章 フィールドスタディ(OBF):仮説とその検証結果④
5.4 環境コラム:環境勉強会の学び
持続可能な社会を実現するうえで環境という視点を取り入れることは必須であり、今後はその視点がより重要になっていくと考えられる。今年度のテーマが「『アフリカの真珠』ウガンダから考える、持続可能な社会のあり方~平和・人権・環境・開発~」であることからも、USPメンバーが環境という視点から持続可能な社会の在り方を考えられるように環境勉強会を開催した。今回の環境勉強会では特にゴミと野生動物に焦点を当て、それらの基礎知識を理解したうえでウガンダの実情を検討し、ウガンダの実例をもとにディスカッションを行った。
ゴミの問題としては、ゴミ山で生計を立てている人々の問題や世界の廃棄物量は全体的に増加傾向にあること、またプラスチックゴミについて着目した。国連環境計画(UNEP)の調査によれば各国の1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量は、日本は米国に次いで多い((出所)UNEP “SINGLE-USE PLASTICS, 2018, p. 4-5)。日本はプラスチック排出量を減らすために、2020年7月からプラスチック製買い物袋の有料化が開始したが、廃棄物の大幅な削減を達成するためには他にも様々な局面での具体的な対策が必要であると考えられる。
日本をはじめとした世界におけるプラスチックゴミ問題等のゴミに対する一般的な知識を基礎として、アフリカのゴミを検討することで、アフリカ特有のゴミ問題について理解した。深刻な問題としては、先進国で排出された廃棄物は越境し他国へ渡ることもあり、特にそのゴミは途上国へ送られ、途上国ではその廃棄物から発生する有害物質により苦しむ人がいるという事実である。ゴミは人間の活動によって排出されたものであるため、ゴミの問題は私たち人類共通の課題であるにもかかわらず、先進国は途上国にゴミの処理という責任を転化しているという問題については地球規模で早急な対応が必要であり、今後取り組むべき重要な課題として挙げられる。
地球環境の悪化と生物多様性の喪失は非常に密接な関係があり、これらは人類にも大きな悪影響を与える。「アフリカの真珠」と謳われるウガンダは生物の宝庫で世界最大の霊長類数、アフリカ最大の鳥類を有する国である。そのため、ウガンダ政府も国際機関と協力し保護区の拡大や保全活動に力を入れているが、人口増加に伴う農地の拡大や自然災害の発生などにより、生物多様性は回復に至っておらず、このことはウガンダのSDGsの目標15 Life on landの達成状況からわかる(The sutainable development Goals center for Africa,Africa SDG Index and Dashboards Report ,2020,p38)。
一方、野生動物と隣り合わせで生活することは動物から思いがけない影響を受ける可能性もある。一般的に、日常生活おいて野生動物との意図せぬ接触によって生じる悪影響は総じて「Human Wildlife Conflict」と言われ、大きく農作物と家畜への被害、ヒトの外傷、人獣共通感染症の3つに分類される。例えば、ウガンダではチンパンジーが2歳の男児を誘拐し、殺害したという衝撃的な事件も発生している。野生動物と共存していくことは簡単な道のりではなく、その共存策を考える必要性がある。そこで勉強会の最後に、ウガンダにおいて実際に起きた、動物保護とそれによって負の影響を被った部族に関して議論した。
具体的には、ウガンダ南部では野生のゴリラの保護する目的で国立公園が設立された。しかし、その森には「バトゥワ」と呼ばれる部族が野生動物と干渉せず平和に暮らしていたにもかかわらず、政府から強制的に住んでいた森からの立ち退きを命じられた。この事例に関して勉強会参加者で「政府とバトゥワの人たち双方の主張は何か」、また「現地民族と野生動物の共存を達成するために、どのような第三案を出せるか」について議論した。
まず政府の主張としては「エコツーリズムを進めていくうえで、住民を排除したほうがやりやすい」といった意見が出されたのに対し、バトゥワの人たちの主張として「これまでゴリラなどの野生動物と共存してきたのに、観光資源を増やすことで経済を豊かにしたいという政府からの一方的な主張に納得がいかない」「もし立ち退きをするにしても家や土地の保障や権利を受け取る必要がある」といった意見が出された。野生動物とバトゥワの人たちが共存していくための第3案では「密猟組織と政府が繋がっている可能性もあるため、政府をクリーンにする」「バトゥワの人たちに英語を学んでもらってツアーガイドやレンジャーとして働いてもらう」といった提案が出された一方、「人間のライフスタイルは刻々と変化していくものであるため、長い目で見ればこのような変化は目をつむる必要もあるのではないか」という意見が挙げられた。
環境勉強会を通じて、環境と人間の生活は切っても切り離せない関係であり、自然環境から木材や石油等の生態系サービスを得る一方で、人間はその利用を必要最低限にし、環境に配慮をした生活をしていくべきであると感じた。環境と人間が生きている社会や経済は対立する関係ではなく両立できる関係であり、そのバランスをうまく保ち、持続可能な社会を後世に伝えていく必要があると考えた。