スリランカ・スタディ・プログラム - 報告書「第2部 第2章 第3節 第2項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発」

第2項 後発開発地域にも配慮した持続可能な経済開発

<問題意識および問題意識をめぐる議論>

GDPにおける格差が、首都圏と北部県で最大10倍も異なるという状況の中で、7%の経済成長の恩恵を享受できる人は一部に限られている。経済格差を縮めるために、国連や国際機関は、どのような取り組みを実際に行っていて、どのような成果・インパクトが出ているのだろうか。
産業別GDP比は、第1、2、3次産業順に1: 3: 6となっており、サービス業が経済の牽引役を担っている。一方で、就業人口比は3: 3: 4と農業人口が依然として高いため、農業における生産効率の向上が人々に与える影響は小さくないはずである。こうした条件下における農業のあり方とは。

<議論内容>

政府側・資金提供側の政策担当者になったつもりで、限りある予算を第1、2、3次産業+インフラのどこに主に投下するかについて、参加者が数チームに分かれて議論した。結果として、ほとんどのチームは、「格差をもっとも効果的に縮小できるため、インフラに注力するべきだ」という意見に至っていた。

一方で、インフラは大規模に資金を投下する必要があるため、限られた予算内では実現しづらいという指摘もあった。実際にどんな事業を行えば人々の収入は上がるのか、という具体的な提案こそが、人々の生活の質向上のためには重要だと考えられる。

<問題意識に対する仮説>

  • 農業技術支援をはじめとして、国連機関が行っている事業は、局所的で小さな経済効果しか生み出せておらず、国レベルで見たときに大きな効果を生んでいるとはいえないのではないか。
  • 各事業の効果を評価する方法は、国連機関内で確立していると考えられるが、具体的にはどのような評価を行っているのか。また、評価はその後の事業策定に反映できているのか。
  • 産業が発達しておらず、国際市場で競争力がある商材があまりないのではないか。国連機関はこの問題に対応できているのか。

<勉強会参加者 所感>

内戦後、経済成長率が7%程度で推移するスリランカは、産業が発展しているようにも見える。しかし、実際に調べてみると、茶や繊維は低い価格で買いたたかれており、産業としてはサービス業が牽引している状況であることがわかり意外であった。各産業を開発の枠組みから俯瞰して、農工業の高付加価値化や観光業の振興、インフラの整備など、持続的な経済発展のために各産業が果たせる役割を理解でき、有益であった。

写真①勉強会の様子