スリランカ・スタディ・プログラム - 報告書「第2部 第2章 第3節 第3項 教育という切り口から考えるスリランカ」

第3項 教育という切り口から考えるスリランカ

<問題意識および問題意識をめぐる議論>

国連ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals : MDGs)では初等教育の完全普及・識字率や就学率向上を施策としており、一定の成果が上がっている。スリランカでは、スリランカの識字率・就学率は90%以上、男女格差も比較的少なく(1)、一見大きな教育課題は少ない。しかし、GDPに占める政府の教育予算は約1.75%(2013年)と少なく(2)、またそれを補うかのごとく各国連機関・NPOがスリランカ国内で多種多様な教育事業を手がけていることが分かった。そこで、表面的なデータからは得られない潜在的な教育課題が存在しているのではないかと考えた。

<議論の内容>

上記の問題意識に基づき、平和と教育、就学前/初等教育、中高等教育/職業訓練の3つのテーマに分けて議論した。議論の結果、3つのテーマに共通する潜在的な教育課題とは、識字率や就学率などの表面的なデータに表れない「質の格差」ではないかと見立てた。教育における質の格差を是正すれば、包摂的かつ公平で持続可能な社会の実現に繋がるのではないか、との結論に達した。

写真①
写真②

<問題意識に対する仮説>

スリランカの教育に存在する「質の格差」を突き詰めて調査し、民族間格差と地域間格差が根本原因であるという仮説を立案した。

  1. 民族間格差…スリランカは多民族国家であり、民族によって使用言語が異なるため、民族間で受けられる教育に差が出ている。
  2. 地域間格差…紛争影響地方は都市部より学校や教師数など教育環境が整っていないため、受けられる教育に差がある。

<勉強会参加者 所感>

一見成功しているように見えるスリランカの教育だが、「質の格差」という課題が内在しているという仮説を立案した。勉強会後はスリランカ渡航中の事業視察や聞き取り調査を通じて、その仮説が合っているか否かを確認したい。

  1. UNICEF Statistics Sri Lanka, http://www.unicef.org/infobycountry/sri_lanka_statistics.html, accessed on 20 November 2015.
  2. Central Bank of Sri Lanka annual report 2014, http://www.cbsl.gov.lk/pics_n_docs/10_pub/_docs/efr/annual_report/AR2014/English/17_Appendix.pdf, accessed on 28 November 2015.